恋する乙女
※恋仲
「あら?」
犲本拠地、食堂。
いつものように昼食が乗っかったおぼんを手にし、桜子の前に座る妃子はおにぎりを頬張る友人を目にし首を傾げる。「どうしたの?」と見上げてくる友人はいつもどおり可愛いのだが……。
「あなた、綺麗になった?」
「え、そうかな。」
「そうよ。どこが、とかじゃないんだけど……雰囲気かしら。」
席に着き、うどんをすすりながら妃子は桜子を凝視する。雰囲気……というのか、女としての艶が出てきた気がする。
照れるなぁ、と笑う桜子はご馳走さまでした、と手を合わせた。
「ね、誰かと付き合ってたりする?」
「……え」
「ほら、恋をしたり誰かと付き合ったりすると女は綺麗になるものだから。」
妃子の言葉に驚いたのは桜子だけではない。例のごとく女同士の会話に耳を立てていた男たちも様々な行動で驚いてみせた。
ある者は茶を口から吹き出し。ある者は椅子から転げ落ち。またある者は尋常じゃなく泣いた。しかしまあよくあることなので当の二人は気にも留めない。
「ねえ、誰?私の知ってる人?」
「ちょっ、まだ付き合ってるとも言ってないよ。」
「あなたの反応見てたら分かるわよ。でも賭けとか好きな男には気をつけなさいね。ろくなことにならないから。」
「ご、ご忠告痛み入ります。」
過去の男のことでも思い出したのか、妃子はぎりぃっと湯呑みを握りしめる。
妃子を宥めながら、桜子は悩んだ。親友にくらい誰と付き合っているか話してもいいかと思うが、相手は忍。曇神社の忍になったとはいえ、元々は風魔の忍である。批判されるの目に見えていて、好きな人のことを批判されるのは悲しいことなのだ。
「……ごめんね。誰かは言えない。」
「私にも?」
「うん、ごめん。でも、優しい人だよ。妃子が心配するような悪い人じゃない。」
「……そう。桜子が言い切るなら問題なさそうね。」
あまり聞かないでほしいところは干渉してこない。あっさりした性格は桜子が妃子を好きな理由の一つでもある。
「あーあ、やっと桜子と色恋の話が出来ると思ったのに、残念。」
「ごめんね。でも、私まだ付き合うって何をするのか分からないから……色々、教えてもらえると嬉しい、です。」
「っ、勿論よ!」
恥ずかしげに俯く桜子に対し、妃子は口元を押さえて机に突っ伏した。恋をする乙女は美しく可愛いものなのである。
周りの男たちは胸を押さえてうずくまる。
軍に咲き誇る二輪の花。
今日も今日とてその輝きは健在である。
(どこの誰だか知らないけど、この子を泣かせたら承知しないんだから。)
「あら?」
犲本拠地、食堂。
いつものように昼食が乗っかったおぼんを手にし、桜子の前に座る妃子はおにぎりを頬張る友人を目にし首を傾げる。「どうしたの?」と見上げてくる友人はいつもどおり可愛いのだが……。
「あなた、綺麗になった?」
「え、そうかな。」
「そうよ。どこが、とかじゃないんだけど……雰囲気かしら。」
席に着き、うどんをすすりながら妃子は桜子を凝視する。雰囲気……というのか、女としての艶が出てきた気がする。
照れるなぁ、と笑う桜子はご馳走さまでした、と手を合わせた。
「ね、誰かと付き合ってたりする?」
「……え」
「ほら、恋をしたり誰かと付き合ったりすると女は綺麗になるものだから。」
妃子の言葉に驚いたのは桜子だけではない。例のごとく女同士の会話に耳を立てていた男たちも様々な行動で驚いてみせた。
ある者は茶を口から吹き出し。ある者は椅子から転げ落ち。またある者は尋常じゃなく泣いた。しかしまあよくあることなので当の二人は気にも留めない。
「ねえ、誰?私の知ってる人?」
「ちょっ、まだ付き合ってるとも言ってないよ。」
「あなたの反応見てたら分かるわよ。でも賭けとか好きな男には気をつけなさいね。ろくなことにならないから。」
「ご、ご忠告痛み入ります。」
過去の男のことでも思い出したのか、妃子はぎりぃっと湯呑みを握りしめる。
妃子を宥めながら、桜子は悩んだ。親友にくらい誰と付き合っているか話してもいいかと思うが、相手は忍。曇神社の忍になったとはいえ、元々は風魔の忍である。批判されるの目に見えていて、好きな人のことを批判されるのは悲しいことなのだ。
「……ごめんね。誰かは言えない。」
「私にも?」
「うん、ごめん。でも、優しい人だよ。妃子が心配するような悪い人じゃない。」
「……そう。桜子が言い切るなら問題なさそうね。」
あまり聞かないでほしいところは干渉してこない。あっさりした性格は桜子が妃子を好きな理由の一つでもある。
「あーあ、やっと桜子と色恋の話が出来ると思ったのに、残念。」
「ごめんね。でも、私まだ付き合うって何をするのか分からないから……色々、教えてもらえると嬉しい、です。」
「っ、勿論よ!」
恥ずかしげに俯く桜子に対し、妃子は口元を押さえて机に突っ伏した。恋をする乙女は美しく可愛いものなのである。
周りの男たちは胸を押さえてうずくまる。
軍に咲き誇る二輪の花。
今日も今日とてその輝きは健在である。
(どこの誰だか知らないけど、この子を泣かせたら承知しないんだから。)