裏返し?これがストレートの愛情表現です(幸村)


裏返し?いえ、これがストレートの愛情表現です


バカだ、バカだと思ってたけど、俺もここまでバカだと思わなかったよ。

でもそこがかわいいんだよね、赤也は。

「で幸村部長!!真田副部長のプレゼントは何にします?!」

あぁ、頼むからそんな純粋な目で俺を見るなよ。

髪をワシャワシャしたくなるだろうが、お隣にいた黒のトイプードルを思い出したじゃないか。

「やっぱり、真田副部長の性格から普段使える物ならもらってくれそうな気がするンスよ。」

「赤也もちゃんと考えているのだな。」

て頭を撫でる柳がドッグリーダーに見えてきた。

「ですが、いきなり父の日と言われても真田君の方が戸惑うと思うのですが…。」

言ってる柳生が戸惑ってる、俺も戸惑いまくり。

紅白コンビは爆笑してるし、ジャッカルも引いてる、もちろん赤也の発想にだ。

何がどうして赤也には一個上、俺達には同い年の仲間に父の日のプレゼントを贈るっていうのさ?

「俺、マジ真田副部長尊敬してンスよ!!ウチの父ちゃんは出張魔であんまり父親って実感ないンスけど、真田副部長に初めて怒られた時、これが父親か!!って感動したッス!!」

「…俺は赤也の発想を尊敬するよ。」

俺の父親は週一の割合で土下座してるから、結婚して子供が生まれたら、男は女に逆らったら生きていけないものなのかと思ってたくらいだからね。

「俺なんか初めて真田に殴られた時、昭和の頑固オヤジがいるーって笑ってまた殴られたくらいだぜぃ。」

笑いながらガムを口に放りこんだ丸井の隣で仁王も頷いてるし。

普通、そう思うよ。

それか、柳が殴られた時はメデューサの呪い殺さんばかりの目で真田を睨んでたから。

柳生も意地になって全教科真田より点数取ってたからね、自分が悪いって分かってるから余計に腹が立つだよね。

俺もさ?真田に殴られて──

「プレゼントでも父の日言われたら、さすがの真田もへこむじゃろ?」

「だったら、おそろいとかよくね?」

「…それだと真田も受け取ってくれそうだしな。」

「…お前ら、良い度胸だね、と言う。ちょうど良いタイミングで、補助費にも若干の余裕があるしな。」

いやいやいや…、柳さん?

俺の台詞は盗らないでよ、部長の台詞はさ?

「てか、柳?補助費って何?」

会計は柳に任せっきりで俺は書類に判子ついて出すだけだから、今初めてそんな単語聞いたんだけど?

「不本意ですが、我々の隠し撮り風の写真とか私物などをファンを自称する皆さんに廉価でお譲りしてるのです。」

申し訳なさそうに下を向いた柳生が眼鏡を押さえていた。

廉価って…、廉価じゃないんだろ、柳?

「精市の小テストは良い値段で買い取っていただいたぞ。」

「……、ま、いいけどね。」

小テストなんて戻ってきても使わないし、追試もないからすぐに捨てるから。

あー…、こういうのリサイクル?リユース?とか言うんだっけ?

「で!!で!!おそろいの何にするッスか?!」

キラキラと目を輝かせた赤也の食いつきが尋常じゃない、この半分を勉強に回せよ?頼むから。

「黒帽子とか?」

「ありえねぇーっ!!」

「無難にタオルとか良いのでは?」

爆笑する3Bコンビを横目に柳生が言えば、

「弦一郎らしく手拭いはどうだ?立海の校章を染めて貰って。」

「手拭いか…、和柄の手拭いに校章?」

柳の案に飛び付きたかったけど、ジャッカルの言う通り立海の校章をつけたらバランスが悪い。

「俺あれがいいッス!!あの夏に着るヤツ!!じ、じ…?」

「甚平か?」

「それッス!!」

言葉が出ない赤也に変わって柳が答えると赤也は餌を貰った犬みたいにぴょんぴょん飛び跳ねた。

「それ着て夏祭り行くとか?」

お揃いの甚平、しかも校章入りってどんな集団だよ?なんか地元の怖いオニイサンに睨まれるよ。

あ、その為の真田か?

「さすが幸村部長ッス!!それ着て、花火大会にも行きましょうね!!」

「…行けたらね。」

今年は全国大会と重なってる気がするなぁ?

「つか、それ着て真田んちでバーベキューしようぜぃ!!」

「BBQではブンちゃんがお肉を提供してくれるナリ。」

「死ね、チョロ毛。」

笑えないコントをしている3Bはほっといて、みんなで夏祭りに行きたいよな。

このメンバーでいられるのも後少しだし、テニス以外の思い出も欲しいから。

「我々はともかく真田君の採寸はどうしましょうか?」

「次回ユニフォームを注文する時の為にと言いくるめておこう。」

抜かりないねぇ、この二人がいれば細かい事は安心だ。

「じゃ、色はなんにするッスか?」

「それは決めてるんだ。」

俺の手を掴んでブンブン振り回す赤也は本当に手間の掛かる息子みたいだね。

「勝色だよ。」

何人かポカンとしているけど、柳辺りは分かったみたいだね。

「あるかどうか分からないが、出来るだけ近い色を探してみよう。」

携帯を取り出しながら笑っている。

「かちいろって、どんな色ッスか?」

「立海の色だよ。」

「げっ?!ユニフォームの色ッスか?あたっ?!」

引きつる赤也にでこぴんをかました仁王に、

「そりゃ芥子色ナリ。」

「ユニフォームの色でも微妙だけどな…。」

苦笑いするジャッカルも分かってないな。

常勝無敗を掲げる王者だから纏える色もあるんだよ。

「できあがり楽しみッスね!!真田副部長喜んでくれるッスかね?!」

「そりゃ出来の悪い可愛い息子からだもの嬉しいさ。」

「なンスかそれー?!」

と言う事が三日前にあって、さすがに三日じゃ出来上がらないから、後日みんなでお揃いの甚平を着て夏祭りに行く計画を立てた。

でも当日赤也以外の後輩達からタオルや和菓子なんかと一緒に「お父さん、いつも叱ってくれてありがとう」なんてメッセージカードを貰って、複雑だけどまんざらでまない真田はもうテニス部のお父さんでいいと思う。


※うりんさまに捧げます

勝色(かちいろ)・#383b45

彩色図鑑より
http://11cs.2.tool.ms

(20110619)

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