真田弦一郎のスイーツ(笑)論


真田弦一郎のスイーツ(笑)論

りさ様に捧ぐ

部室に入ると何やら人だかりが出来ていた。

「なんだろうね?」

共に来た幸村は好奇心旺盛に輪の中央に向かう、それに自然と割れる人垣に改めて幸村の、部員達が抱く存在感と尊敬の念の強さを思い知る。

「あ、幸村くん!!」

輪の中心にいた丸井が幸村の姿を認める。

「見てみろよぃ?かえるのたまご。」

と何処から拝借して来てのか、大振りの笊の中身を見せて来た。そこには半透明の粒が大量に入っていた。

「……。」

「……。」

一瞬俺と幸村は言葉を失うが、直ぐに微笑を浮かべた幸村は一粒摘まみ上げると、

「あはは、かえるのたまごとか言うから、真面目に信じちゃったじゃん。ね、真田?」

「ん?俺は別に…、」

周囲がタピオカだと忍び笑いを漏らしているが、タピオカは蛙の卵では無いのか?

お祖父さんも兄さんもアジアの絶品スイーツであるタピオカは日本には生息していない蛙の卵だと言っていたが?

(…また騙されたのだろうか?)

「信じたよね?」

「う…うむ、」

清々しい笑顔の幸村に逆らえる者はいまい。

「あはは、だよね〜?でもさぁ、この時期にかえるのたまごとか、有り得ないし。」

「………」

有り得ないのか?現代の保存技術を持ってすれば可能では無いのか?

(この色艶と言い、丸みと大きさと言い、どう見てもタピオカは蛙の卵だろう?)

「あ、でも、コンビニで売ってるミルクティーにタピオカが入ったヤツ、美味しいよね〜。」

「…そう なのか?」

紅茶に蛙の卵だとっ?!

いや、本来はココナッツミルクを掛けて食する物だ。

あの舌に残る感じが何とも言えないが、ココナッツミルクの濃厚な風味がタピオカの滑らかな食感に相まって中々美味だ。

「え、何?真田飲んだことないの?……じゃぁ、今から真田の為にコンビニ行こう!!」

「………」

何故、目の前でタピオカのココナッツミルク掛けが振る舞われているのに、態々コンビニに行かなくてはならぬのだ。

「あ、勿論、真田の奢りね。」

(やはり目的はソレか。)

既にマフラーを巻いてラケットバッグを担いだ幸村の決意を思い止まらせる事は太陽を西から昇らせるより容易では無い。

後日タピオカとはキャッサバから採れるデン粉で、蛙の卵だと教えられた物は茹でた物だと蓮二より教えられた。

やはり今回も家族に騙されていたようだった。

それを幸村に言ったら涙が出る程笑い転げられたのも言うまでも無い。


※幸村と真田の会話をりさ様が考えて下さいました。

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