3000打柳祭りおまけ
俺は俺の為に飾り付けられた折り紙のリングを外しながら精市に問うてみる。
「何故、彼の柳蓮司が俺だと思ったのだ?」
「んー?入学してからしばらく『司』の方だったのもあるし…。」
「言ってくれるな…。」
それは公式の黒歴史と言っても良いだろう。
初版を持っている方はある意味レアだ。
「読んでみて、蓮二かなって思ったんだ。」
くす玉を取り外した精市は、
「ま、違ったんだけど。」
と舌を出して笑った。
嫌味の無いの表情にこちらも釣られて笑顔になる。
「どう言った処が俺達の様だと?」
一つ一つ飾りを外され、何時もの顔に戻る部室。
「容姿も名前も性格とかも違うんだけど、…読んでたら、俺達みたいだなって。」
ふと穏やかな視線が宙に俺達を見る。
「誰かがこう言ったら、こいつがこう言うだろうなって。おかしいくらいに展開が読めちゃって。…だけど、あの時見たいに描いてた未来と違って…。」
伏せ目がちな精市の瞳は夜の帳に似ていた。
その言葉の意味する処を知らない訳で無い、それを乗り越えて今の俺達がいる。
ただ、結果を思い出に出来ずに、取り戻せない過去に足掻いているだけかもしれない。
「それで話は終わるんだけどね…。続きが気になって…、」
前髪を振り払った精市は、
「蓮二なら知ってるかなって、俺達の行く先を。」
縋る目で言われても、参謀如きが神の子には勝るまい。
ならば、皇帝の名を持つ弦一郎ならば先を見られるのか?
いや、あいつは前を見ても、先は読まない。
それは悪魔をも欺く仁王でも駄目だ、心根の優しい柳生は端から裏を知っていても知らない振りを通す。
その場任せで乗り切る丸井に、フォローするジャッカル、赤也はどちらかと言えば弦一郎に近いな。
「ふっ…。」
「え、…なに?」
笑みが漏れた、敏感に反応した精市が俺を見詰める。
そうか、一人では駄目なのか。
俺達の未来は、俺達が揃わなくては見られないのだ。
「続きは俺達で作ればいい。それだけだ。」
「…そうだな。」
俺の言葉に精市は笑みを浮かべて宴の後始末を再開する。
名残惜しいが手の中の飾りをゴミ箱に還した。
続きがどうなるか、明日がどうなるかなんて、分からないから人生は楽しいものだと思う。
end
20100930〜1010青春攻略部部誌に連載+α
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