3000打勝手に柳祭り〜3


3000打勝手に柳祭り 3/5


仁王の白石ムービーを小春君に送った後、授業中に四天宝寺勢からのメールが絶えなかった。

小春君としかアドレス交換をしていなかった筈だが、何故彼の良人である一氏君から姦通罪起訴状が届くのか、財前君に「そっちの白石部長もサクッっと逝っといて下さい。」と言われても、俺は自分の手を汚すつもりはないので柳生に頼もう。

昼休憩には四天宝寺関連のアドレスは正規に交換した小春君以外は受信拒否にして、最近のお気に入りである犬飼君と昼食を摂る事にした。

犬飼君は同じクラスのテニス部で、男にしては小柄で純粋で従順なので暇潰しには最適な人材だ。

嘗ての貞治を連想させる食センスも面白い、今日の弁当は天麩羅のサンドイッチだ、同じ揚げ物ならもう一息行ってカツかコロッケにすれば良い物をよりによって竹輪の天麩羅とは。

それは山葵醤油マヨネーズで食す辺りが何とも貞治を思い出す。

「いたたた〜?!何するんですか、柳君?!」

「不快だった物で無意識に。」

犬飼君の低い鼻を摘まんでいた。

彼がサンドイッチを置いて何か抗議をしようとした時、

「やっなぎ〜?コレちょっと味見してくれよぃ?」

と何時もよりも甘ったる香りを纏った丸井が俺の机の上に三種類のスポンジケーキをおいた。

スポンジケーキに味見が必要なのか?

公式で薄味が好みだと言っているが、敢えて抽象的にする事による差し入れの牽制だ。

一年の時差し入れのクッキーを食べた精市が暫く雪隠責めにあった。

送り主を突き止めれば、先輩の彼女で俺達がレギュラーになった事にレギュラー落ちした先輩の為にしこたま下剤を仕込んだそうだ。

それ以来俺達は差し入れを受け取らない、目の前の丸井は別な様だが。

話は反れたが、あまり甘いが好きでは無い俺としてはクリームの土台になるスポンジに興味は無い。

しかし味見をしないとこのスポンジを作る為にバターや砂糖をふんだんに使った香りを纏う丸井が帰ってくれないので、ここは犬飼君にお願いしよう。

「この中で一番俺の口に合いそうなのは何れだ?」

と尋ねれば、犬飼君は三つのスポンジケーキに鼻を近付けて、

「これです!」

左端を指差した。

「ふむ。では、」

普段にやり取りに引きつっている丸井を無視して、犬飼君が選んだスポンジケーキを口に含めば、成程甘くない。

「よくやったな。褒美に生徒会の手伝いをさせてやろう。」

「本当ですか?!わぁい!嬉しいな!」

副会長に懸想している犬飼君は両手を上げて喜んでいる。

何時見ても飽きない観察対象だ。

「で、丸井?」

用が済んだのにまだF組に居座る丸井に問い掛ければ、漸く目覚めたかの様な反応を示して、

「おっ、おう!分かったぜぃ!天才的な味を食わせてやったから、放課後期待しろよな?」

と片目を瞑れば女子が奇声を発する、俺には通じないが。

「ホラ、残りも食えぃ。」

丸井は犬飼君の口にスポンジケーキを押し込み、皿を空にしてF組から出て行った。

はて?

全身胃袋の食欲魔人から馳走になる様な事をした覚えは無いが、やはり今朝の一斉送信と関係あるのだろう。


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