3000打勝手に柳祭り 2/5
二時間目の休憩の折り、何やら視線を感じる。
相手に気付かれぬ様にそっとそちらを見遣れば、ドアに張り付いた仁王が俺の方を見ていた。
それに女子が落ち着き無く俺と仁王を交互に見るのがそろそろ鬱陶しくなった頃、柳生がやってきて仁王の脳天に手刀を落として何やら言い聞かせていた。
ついでに不燃ごみ置き場へ持って行ってありがたい、がその目論見は外れ肩を落とした仁王が俺の席の前までやってきた。
今朝の弦一郎と言い、こいつは何を企んでいるのだ。
何時もの如く覇気が無い上に、何処か挙動不審な仁王は、
「さ、さんぼー?…俺のイリュージョンの中で、誰が…いっとう好いとうよ?」
と言った瞬間教室にいた女子達が奇声を発した。
何やら都合の良い様に良からぬ想像をしたな、お前の事を聞かれたらその様に答えておくので覚悟しておけ。
目の前で上目使いで体を捩る仁王には、そうだな。あれで行くか。
「やはり白石だな。少ない情報で彼処まで完璧にイリュージョン出来る仁王の才能は本当に凄いな。ふむ、そうしたらどうしても仁王の白石を見たくなってしまった。済まないが見せてくれないか、今此処で。」
「ぷ、ぷりぃ…?!」
仁王は決勝の切り札としての白石を最後まで躊躇っていた、何故ならばあの決め台詞を恥ずかしがって。
普段からプリピヨ等と電波信号を発信している奴が何を言うかと思うが、白石だけは最後まで抵抗した。
思えば手塚は無口なので技に徹しやすかったと言えば一理ある。
「ほら、どうした、仁王?俺の為に見せてくれないのか?」
「ぴ、よぉ…?」
完全に目が泳いでいる。
そこまで白石は嫌か。
ならば、何が何でも白石をイリュージョンさせてみたくなるな。
「仁王。白石に成りきる奴は掃いて捨てる程いるが、彼の聖書テニスを完璧にイリュージョン出来る奴は仁王しかいない。つまり、仁王は四天宝寺の白石以上の実力があると俺は信じている。」
「そっ、そうナリかっ?!」
ふっ、単純な奴め、簡単に乗せられたな。
「じゃ、行くぜよ?」
一瞬金色の瞳孔に強い光が宿る。
目を伏せ、それを開いた瞬間、奴は白石になる。
『んんーっ!絶頂ーぃ?柳クン、お久しゅう、元気しとったん?』
目の前には白石、無駄を嫌う癖に無駄なオーラ全開な所まで本人だ。
「あぁ、変わり無い。そうだ、小春君は元気か?」
『小春?相変わらず男のケツばっか追っ掛けよって、ほんま堪忍やな。』
然程困ってもいない無駄を通り越して憎たらしい程爽やかな部分も忠実に再現した。
流石王者立海のイリュージョニスト・仁王雅治と言うべきか。
「と言うムービーを小春君に送ったので、仁王。後は頼んだ。」
「なんじゃそりゃ?!」
詐欺師が今更俺の手元に気付いたのか、机の下の携帯を取り上げ様とするがムービー自体は送信済み、既に仕事の早い小春君からの返信が来ている。
それを仁王の前で開いてみせれば、仁王は周囲の目を気にせず泣きながら3Fの教室を飛び出す。
「おっ、俺は嫌じゃ〜っ?!」
それに女子が過剰反応して超音波を発する。
だが、珍しく俺も仁王と同意見だ。
この手元に残された「私をた・べ・てvV」の小春君のビキニ写メはどうしろと言うのだ?
後で弦一郎にでも贈っておくか?
[←企画部屋へ戻る]
[←mainに戻る]