バターケーキとおもちゃのお菓子屋さん


バターケーキとおもちゃのお菓子屋さん


朝から女子がえらい騒ぎじゃ…、なんぞイベントがあるんかと思ったら、テニス部のお誕生日デーじゃ、あ、日とデー重なっとる?

二個前のブンちゃんの席は、おまん、アイドルかってくらいに女子がプレゼント持って囲んどる。

後ろの席の奴は早々に消えた。

その後ろの俺は頬杖をつきながらぼへぇ〜っとしとったら、女子が「ニオ君おはよー。」とか言うから、幸村からテニス部のイメージ保護をキツク言われとるから一応おはようさんと返しとく、早よ散れ、貧乳ども。

そう思う俺の気も知らんと貧乳バニーちゃんたちが「ニオ君はブンにあげたの?」じゃって、「俺は月末で金がないき、放課後テニス部一同っつーことで。」て言うたら、「そうなんだぁ〜?」って意味分からん、なんじゃ、「そうなんだぁ〜?」って?

年に一度のお誕生日ハーレムでウハウハしとる丸井を横目に俺はふわふわおにゃこの香りに耐えられなくなったこともあって教室を抜け出した。

SHRはいいとして授業には出んと部停食らうから、一時間目始まるまで生徒会室にいるかのう?

鍵は柳からコピらせてもらったから、部活に支障が出ない限り会議をやってなかったら使ってもいいって、俺に恩売ってなに考えてんだが、ほんに恐ろしい男じゃ。

誰も居ん生徒会室の革張りのソファーに寝転がった時、ふと思い出した。

「お前の髪の色カッコいいじゃん。」

テニス部の仮入部のときに真っ先に声掛けてきたのが丸井じゃった。

白髪みたいな色と目付きの悪さに先輩すら話掛けなかったのに、真っ赤な髪した丸井は裏のない笑顔でそう言ってきた。

「俺もさぁ、地毛なんだけど誰も信じないんだよぃ?あっちの老け顔にけしからんとか言われるし、事情を知らない奴は気楽だな。」

てガムを投げて寄越してたのがきっかけじゃったっけなぁ、そっから、ちょろちょろと俺の回りにいるようになって。

留学生のジャッカルが珍しくて、あいつにも声掛けて、なんとなく文字通りの異色同士で固まるようになった。

赤也が入学して一緒にバカやって、柳生とダブルス組んで、そん時言われた。

「正反対だからこそ気が合うのかも知れませんね。」

訳知りの俺の顔で言われてものう、柳生?

自由気ままで、底抜けに明るくて、何やっても笑って許される愛嬌のある丸井と俺とは見た目の派手さを抜かせば、中身はこれでもかって正反対じゃし。

逆に見た目が正反対の柳生は、なんぞ自分を偽ってるって最も似てほしくないとこが似てるから、妙な親近感があるんじゃけど。

よう、まぁ、ダブルスもやったし、おんなじクラスでも飽きずにつるんでるよな?

十年後もまだバカやってのかな?っつ寝返りを打ったときポケットの辺りがゴリゴリなった。

なんじゃろうってポケットに手を突っ込んだら、前集めてた食玩のお菓子屋さんが出てきた。

「……。」

ちょっと手のひらのおもちゃを見つめて、立ち上がる。

生徒会様特権の備え付けの冷蔵庫を開けると、柳が探し回って見つけたバターケーキが入っとる。

ブンちゃんは甘味に関して特殊な味覚しとるから、ケーキはバターケーキがいいんじゃと。

なっかなかなかよ?

バターケーキが好きなのって真田のじいさんくらいじゃし。

そのブンちゃんおたおめケーキを取り出して、上二段を外してあいつの夢が叶うようにお菓子屋さんセットを埋め込んだ。

サプライズが仕込んでるとバレんように少し掘り返したバターケーキを証拠隠滅に食うたら、なんつか、まったり甘い。

こんな甘いのが好きじゃなんて、本当に丸井は変な奴じゃ。

その変な甘党とまた今年も全国目指すかと思うたら、人の縁なんてもんも分かりゃしないのう?

それじゃ、部活後のブンちゃんの喜んだ顔からのびっくり顔を楽しみにしてるぜよ。

バターケーキを蓋する前に仕込みを写メって主役以外の全員に送っておいた。

ま、そんなカンジにおめっとうさん、丸井。

(20110420)
[←戻る]




- ナノ -