当たり引きました


当たり引きました


何故あそこでグーをだしてしまったのか後悔だけが残る。レギュラー分のアイス買い出しじゃんけんなんて誰が決めたんだ。ああ、俺か。
結果、炎天下の中俺と仁王と赤也が買い出しに出されたわけだが、目の前で元気にスキップしている赤也とは対照的に、ゆっくり歩く俺と仁王。若いなぁ赤也。一年の差ってすごい。可愛いなぁ赤也ちくしょう。
「あああ暑い」
「…」
「暑い!」
「…」
「暑いなぁ仁王!」
「…」
隣で目の据わってしまっている仁王は最早意識があるのかわからない。いや、あるだろうがまるでゾンビのようだ。これだからもやしっ子はいけない、元気に外で遊ぶべきだと思う。太陽の日をガンガンあびて鬼ごっこが青春を謳歌すべだ。鬼ごっこが青春に関係するのか知らないがな。俺はかくれんぼ派だ。
「ちょっと、生きてる?」
「…死んだばっちゃが見える」
「ああもう駄目だこれ」
まだお前のばっちゃは生きてるだろうに、この前そのばっちゃが送ってきてくれたスイカうまかった言ってただろう。ああスイカか、いいなぁスイカ。昔はよく真田に種跳ばして遊んだものだ。あ、目の前に真田のおじいさんが見えるこんにちは。
「にお先輩!ゆき部長!大丈夫っすか!?」
「はっ!」
「…ピヨ」
「あわわっ。目が二人とも死んでたっすよ!」
何てことだ。危うく熱中症で真田のおじいさんの道連れじゃないか。あれ?真田のおじいさん生きてるか。
いや、今はそんなことよりも目の前の赤也があやあわしていて可愛い。ぎゅむっと抱きつくと暑いからイヤイヤされた。なんだこれ悲しい。でも抱きつく。
コンビニまではもう少し。クーラーボックスは赤也に持たせてしまっているので俺らは手ぶら。なのに何故俺らがばてているのか。ダメな先輩でごめんね。
「暑いっすよぉ」
「愛のせいかな」
「…母性愛じゃの」
「ぼせいあい?」
「赤也が可愛いってことだよ」
「??俺はかっこいいっす」
「あ、コンビニ見えた」
やっと目的地が見えたファミマ。学校から近いと言うのにものすごく長く感じた道のり、もう永遠にたどり着けないのではないかと思ったそるは反対側の歩道にデンとまちかまえていた。
「ほら、行きましょ?はい、手引いてあげてますか。ね?」
「…よくできた息子に俺は鼻血しかでない」
「普通涙じゃろ変態」
「うるさいよもやし」
「女顔」
「白髪」
「アホ」
「バカ」
「ボケ」
「ナス」
赤也に手を引かれながらペチャクチャ言い合いをする俺らはさながら小学生のようだな、とあとになって思う。なんだこれ恥ずかしい。低レベルにも程がある。仁王も何バカなことを言っているんだ。元はいえばお前が変態だとか言うのがいけない。俺は赤也溺愛なんだよバカヤロウ。
「着いたっすよー」
そう言った赤也の言葉の後に涼しい風が俺達を包んだ。
「ああああ…生きる。俺はずっとここにいる」
「もう俺ここに住むナリ」
「2人とももうテニス出来ないんすか?バイバイ?」
「そんなわけないだろ赤也!だからそんな顔しないでおくれ!可愛いなもう!」
「冗談の通じ坊じゃ。つか幸村も離れんしゃい」
「んにゅ。じゃあみんなでアイス食べるっす!」
「そうだね赤也。赤也の言うとおりだ。じゃあアイス買おう」
「わーい!」
たたたーとアイスコーナーに向かった赤也の後ろについていく。
まだまだ小さい赤也だけど。きっと俺達を超えるすごい子になるはず。
「ね、仁王」
「…脳内の考えを言わずして同意を求められてもわかりません」
「わかれよ」
「プピーナ。赤也はこれから幸村とはまた違う大きな存在になるたちゅーことなら同意しちゃる」
「…わかってんじゃん」
猫背の背中を叩けば、暴力反対ーと言われた。
「にお先輩、ゆき部長、頼まれてた皆のアイス買いましたよ?早く帰って皆にあげましょ!」
「そうだね」
「…誰じゃハーゲン●ッツ頼んだの」
「えーと…やぎゅ先輩」
「やだあのボンボン。ガリガリ君頼んだの真田の身にもなってみろよ」
「赤也、俺がハーゲン●ッツ買ってあげるからね。何味がいい?言ってごらん」
「ぴゃあ」
「ほれ、そろそろ帰るぜよ」
「ケチ」
「親バカ」
「あわわ!ケンカはメッ!」
「「ハーイ」」
あれ?もしかして俺らより赤也の方がしっかりしてる?
まぁそんなこと深く考えずに、再び炎天下の道を歩く。
今度もまた俺らはゆっくりと、赤也の行き先を見守りながら後ろを歩く。
さあ、早く帰ってテニスをしようか。たり引きました

(む?)
(どうしたの真田)
(当たりましたか?)
(はずれだろぃ?)
(いや、あたり、でもはずれでない)
(ふしぎげんしょうっすか?)
(なんだなんだ?)
(どれ見せてみろ?)
(なんて書いてあるんじゃ?)
(ふむ、)

「祝!一周年おめでとうございます!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
妄想依存型症候群の桃姫八雲さまから青春攻略本一周年のお祝いにいただきました。
可愛い赤也を目一杯可愛がる幸村と仁王、暑さの為かブレーキ壊れ気味な幸村と幸村には意外と冷静な仁王が最高です!!

(20110810)

[←戻る]


- ナノ -