三強会談


三強会談



赤也達だけそんな楽しい事して、俺がしないなんておかしいでしょ?

だから、部活後に二人に集まって貰った訳だけど…。

ナニこれ?

真田、風紀委員会の活動予定作成中。

柳、準レギュラーの補強メニューと生徒会報告書修正中。

俺、ホワイトボードの前で待機中。

「て!!違うっ!!」

余りの放置加減にキレてしまった。

そしたら、目の前に個装パックのクッキーを出されて、

「後五分で終わらせる。それまで待っていてくれ、精市。」

と言う気配りの達人の柳に対して無反応の真田の足を蹴っておいた。

「…幸村。」

真田は一瞬顔をしかめただけでまた書類に向き直った。

なんかムカつく、真田の癖に。

「弦一郎、精市の相手をしてやれ。」

空気を読んだ柳がそう言ってくれれば、真田は嫌そうに短い溜め息をついて、

「話くらいは聞いてやる。」

もうその上から目線が腹立つんですけど?

俺はたださ?

部活終わって、この三人と久しぶりにまったり話ができたらいいなって思って、部長命令までして残って貰ったのに。

部活が終われば終わったらで、それぞれの委員会の仕事があったりして、やっぱりそんなそれもうまくいなかなくって、ちょっと寂しかったり…。

「赤也から聞いたんだけど、もしこの中で自分が女だったら誰と付き合う?」

「生まれてこの方、女になりたいと思った事等無い。」

「俺もだな。」

何この三人しかいないのに、この二人のクラッシャー振り。

「五秒以内に答えないと──」

「弦一郎。」

「幸村。」

「…柳?」

鼻にピーナッツ詰めてシャンソン歌ってもらいと言う前に答えたけど、話を振った俺がびっくりるするくらい分かれた。

これが妹が言う──

「三強三つ巴と精市は考えるが、妹さんに影響されているので無く俺達三人の性格を考えれば自然とそうなるだろう。」

しっかり俺の思考を読んだ柳はそう言ったが、俺との予想と違ったから納得いかない、特に真田。

「っ?!ゆっ、ひむりゃっ?!」

「ムカつく、なんかムカつく。」

真田の頬を力の限り摘まんでやる。

「精市、あまりいじめてやるな。」

と柳は言うけれど、俺は真田に指名された事が気に入らない。

「お前、まだ俺の事女だって信じて、嫁にしたいとか思ってんのか?」

「ひょなわけ、なかろ…。」

お前がそんなたどたどしい口調になったって、可愛くないんだよ。

お前の存在が俺のトラウマだ。

「いひゃいぞ。」

「大方、初対面から暫くの間精市を女子と勘違いした弦一郎は幼心に大見得切って嫁にするとでも周囲に宣言をして精市に恥をかかせたのだろう。」

「……当たり。」

何、柳って千里眼もマスターしてんの?思い出したらまたムカついてきたし。

「ゆっ、ゆひむりゃ…。」

涙目になっても真田なんか可愛くないから。

「因みに相手が女だったら付き合いたいのは精市だな。」

ころんと机に転がる飴と柳の言葉に俺は手を離した。

「マジで?どんな処があの柳が付き合いたいと思っちゃうの?」

テニス優先の部活ばっかの俺達は彼女もいないし、当然アレ。

部活前後や休憩とか、大会合宿の移動で話題になる女子の名前だけ惚れちゃったりなんて純情なのか浮気性なのか、とにかく恋愛に興味あるけどそっちまで手が回らないから想像だけでご満悦が多い中、柳は名前を上げて好ましいなんて言う事はないから、本当になんで俺なんかなのか気になっちゃう。

「一番の理由は精市は見ていて飽きない。」

なんか失礼な事言われた気になるのは、相手がデータマンだから?

「…気が休まらないの間違いでは無いのか。」

「真田?」

頬を千切った仕返しか、物凄く腹が立つ解釈をしやがった、真田の癖に。

「予想がつけられない言動を杞憂とするか期待とするかで、何れ程自分が相手に惚れているかと楽しめるだろう。」

小さく笑った柳に俺と真田は横目で目を合わせて、心の中で溜め息をついた。

振り回された時の自分自身の反応も楽しむなんて柳しかできない話だよ。

「て言うか、俺って女なら超ワガママなイメージ?」

「小悪魔、がよく似合うだろう。」

うわー、女子は柳のコレに騙されてんだろうな、顔も整ってて、女子が好きそうな言葉をくれるしね。

隣で「悪女だろう。」と呟いた真田は、柳が女じゃなかったら一生嫁の来てはないだろう。

「真田は?俺達が女だったらどっちを嫁にすんの?」

「…話が大分変わっているぞ。」

嫌そうに眉をしかめた真田に、

「弦一郎には交際=結婚だから、この方が想像し易いだろう。」

と柳がペットボトルの蓋を開けた。

「俺は蓮二だな。生涯を共にするなら話や趣味の合う相手がいい。」

「何それ?!俺、真田が女だったら嫁にしたかったのにっ?!てかさっき自分が女なら俺の子を生みたいと言ったのは嘘だったのかいっ?!」

真田のあまりの発言にバンと机を立ち上がってしまった。

「弦一郎は根が尽くすから。でなければ、赤也や仁王辺りにもあんなに叱ったりしないだろうし。恐らく弦一郎は妻に働かせたくないと言う口だろう?だから男と女の時で選ぶ相手が変わったのではないか?精市だって、俺だって変わっただろう?」

穏やかな声の柳に宥められてるけど、やっぱ、なんか面白くない。

「俺は、そうだな。女の精市に振り回されてみたいし、自分が女なら弦一郎に全て懸けても安心出来るからだろうな。」

と言われても、よく分かんないけど、

「柳ってマゾ?」

「意外に精市も手間の掛かる奴が好きだろう、赤也を始め、仁王や丸井、弦一郎。」

「指で差すな。」

眉をしかめた真田を見ながら、

「確かにねぇ…、真田を嫁にしたら安心して家の中任せられるし、絶対浮気できないタイプだもんね。柳が彼氏なら、絶えず愛される事を実感できるだろうし、何より浮気しても絶対にバレるヘマしない。」

歌の文句じゃないけど、恋愛はナンバーワンじゃなくてオンリーワンだから、浮気だけは本当に許せない。

だからこんな理由になるんだろうけど、俺って独占欲が深いのかな?

というか単に心が狭いとか?

「俺は愛する者以外に目を向ける事は無い。」

「詐欺師ですら本気の愛にはペテンを使わないのに、俺如きが騙し通せる筈がないだろう。」

力強い真田と、優しく諭す柳の言葉に、ちょっとは愛されてる実感したかも。

「…うん。」

そしたら急に照れ臭くなって、熱くなる頬を見られないように俯いた。

単に友情の再確認しただけだったのかも。

(はっ?!これって、やっぱり、)

「三つ巴じゃないかと精市が思っている確率98%。」

「男の嫁はいらん。」

「…お前ら嫌い。」

明日、絶対俺と試合してもらうから。
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