グラフだけじゃ計り知れない可能性を探せ!
※この話は、丸井があるグラフを拾った事から始まる悲劇の物語である。
「ナニ先輩呼び捨てにしてんだよぃ、バカヤ!!」
「イッテ?!」
思いっきり頭を叩かれて振り返ると不機嫌な丸井先輩の後ろにホワイトボードに張られた謎のグラフが…。
その前に座る三強の空気の重さ…。
机で組んだ指の上に額を乗せた幸村部長の顔が見えないから余計怖い。
腕組んで目を瞑ってる真田副部長はいつも通りって言えばいつも通り。
柳先輩はノートを開いてるけど鉛筆が動いてない。
その三人を心配そうに見てる柳生先輩とジャッカル先輩。
携帯いじってる振りで様子を探ってる仁王先輩でガムを三つ投入した丸井先輩と俺…。
いきなりミーティングって部室に呼ばれたと思ったらこの状態…。
一体なんの用…?
つか、あのグラフ…?
「…百歩譲って俺が童貞なのは認めてようか。」
いきなり幸村部長がカミングアウトしだしたぞっ?!
あれっ?!入院中にナースとムニャムニャって…?
「神の子だから聖童を貫いて欲しいのだろう。憧憬よりも信仰に近い感情を持つ者が多い証拠だ。」
真っ白なノートを凝視したままの柳先輩まじこえぇぇぇ…。
「義務教育の身分で不純異性交遊等言語道断。」
風紀委員はこう言うッスね。
バンといきなり机を叩いた幸村部長は、
「童貞!童貞力!は?!意味分かんないしっ?!童貞だよ?!童貞が何か?朝練七時から、部活が六時まで、自主トレでプラス一時間かクラブに行ってて、文武両道の立海だから課題もたっぷり。趣味もそこそこにナイトゲームもできない日だってある童貞ですが?童貞上等、かかって来いよ?!」
…キ、キレた…、幸村部長キレた…。
机に片膝立てて中指も立てちゃったよ…。
真田副部長が「足を下ろせ」って言ったけど力がない…。
さっきから幸村部長が言ってる童貞とか童貞力とかなんだ?って思って、なんとなくホワイトボードに張ってあるグラフを覗いて、すんげぇ後悔した。
誰が作ったか知らないけど、「テニス部レギュラーの彼氏力・童貞力」…。
意味分かんないッス。
全然意味分かんないッス。
グラフの見方も分かんないけど、項目の意味が分かんない。
「…あの、包茎とか…、誰調べたンスか?」
「誰が仮性包茎じゃっ?!」
「へぶしっ?!」
左から雑誌が飛んできた、さすが仮性人念力が使えるらしい…。
「独断と偏見による予想表が出回ってる小耳に挟んでいたが、まさかこれ程に酷い物とはな…。」
バキッと音がすると思ったら、柳先輩が鉛筆握り潰したっ?!
えっ?!あの温厚な柳先輩がっ?!と思ったら、…柳先輩も…。
「やはり女子の皆さんは知識不足の上で勘違いなさっていますよね。ルネサンス期作品が性器が小さかったり包茎だったりするのは、獣と違い人間に進化した証として敢えてあのように表現されているのですから。」
クイッて眼鏡を上げる柳生先輩の方が仁王先輩に思えてきた。
「つか、これ女子が作ったンスかっ?!」
彼氏にしたいタイプ?なのか、そんなのに童貞とか包茎関係あんのっ?!え?!え?!
「女子も結構エグい話してるぜ…。」
笑ったつもりのジャッカル先輩、目が死んでる、怖い…。
「俺なんか餌付けしときゃ、幸村くんか仁王に繋がるって言われるからよぃ。」
なんで仁王って呟いた丸井先輩も女子にモテてそうでちがうのか…?
「最後のコレ、なンスか…?」
十字線の端っこ時計回りに彼氏力・包茎力・童貞力ってあって、残り一つがハート三つになってる。
中心に近い方が能力?が低いってことか?(彼氏力低い真田副部長や仁王先輩)
ここまで酷いこと書いておいてなんで最後隠すんだよ?包茎と童貞だけで一撃必殺だっての!!
「最後は恐らく、性欲だ。」
この世の終わりを告げるような柳先輩はノートをしまってしまった。(彼氏力は高い)
「間違いないぜよ。」
携帯いじって興味ない振りの仁王先輩。(彼氏力と童貞力低い、いいのか悪いのか)
「納得いかねぇけどな!どーせ女子の妄想だしよぃ。」
特大のガム風船を作った丸井先輩は意地張ってんのかな?(彼氏力は真ん中辺?童貞力も性欲も低いとかいう意味分かんない位置)
「夢じゃなくて妄想というのがポイントですね。」
眼鏡を外してレンズ拭いてる柳生先輩、マジ仁王先輩。(ほとんど柳先輩と一緒の位置で彼氏力は高いけど紳士だからなんとかっていらない注意書書かれてる)
「妄想にしても現実を見てないからそんな事言えんだろうな…。」
机に伏せそうなジャッカル先輩なんて珍しい。(彼氏力が丸井先輩より低い)
「いずれにせよ、くだらん。」
と言った真田副部長から目を反らした。(童貞力と性欲MAXって…)
「俺、魔法使いになるのが夢なんだ…。」
爽やかな笑顔の幸村部長逆に危ない!!(孤高の童貞力のみ頂点)
「…俺、死んでいいッスか?」
童貞力と包茎力の高いのに自分で噂のグッドルッキングガイとか言ってた過去を消したい。
本当に消したい。
俺結構イケてる方かな?って思ってたけど、女子には温かく見守られるタイプだったのかな?
手書きのグラフは残酷なくらい女子の本音満載で。
鋼の意思を持つ先輩たちもあまりの結果に動けない。
そんな現実を知った14の秋。
(20130925)
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