朝まで夏闘論?!
え?あー、ナツ?闘うは…、トウか?…ロン?
ナツトウロン?
なんだそりゃ?
夏に闘う、論?説明?的な意味か?
「なぁ、柳…。」
隣にいた柳に声をかけると少し右の方の眉をあげた柳は、組んだ腕をはずして、
「精市の悪い癖が出た様だ。」
て言うと広げたノートに
夏 ← 納ナ
ツ
闘 ← 豆ト
ウ
書いた。
「つまりは…、」
「言葉遊びからの思い付きだ。」
「そうか…。」
しかたなさそうに笑う柳にアレだが、俺は日本語ってやっぱスゲェなってまた発見した。
世界の言語の中で一番覚えるのが難しいのは日本語だっていう。
ネイティブで日本語を使う奴らはそんなに難しいなんて思うことはねぇだろうが、やっとひらがなを読めるようになった頃にブラジルに行って、親の仕事をきっかけにまた日本に戻ったときは本当に大変だった。
向こうでは地元の小学校だったが、日系が多い地区だったから、日本語の授業もあった。
ブラジルに行っても家でも日本語で、親戚にも日系や日本語を話せる人が多かったけど、やっぱりポルトガル語や、ちょっとだけ分かる英語の方が楽って言や楽で。
親は日本に戻ることを考えて俺になるべく日本語で話しかけていたが、学校や友達はポルトガル語だもんなぁ。
アルファベットだけ覚えりゃ大抵読めそうな英語とかとちがって、日本語はひらがな・カタカナ・漢字があるし。
面倒なのが漢字で一つでいろんな読み方と意味があるからなぁ…。
一番ビックリしたのが、同じ漢字、じゅくご?でもオン読みとクン読みで意味が違うって話だ。
確か…聞いたのは、「色紙」だ!!
「いろがみ」と「シキシ」で全然ちがうものを表しますって話に日本語スゲェ、奥が深ぇって思ったもんなぁ。
「ハイ!!朝まで夏闘論!!青春攻略部に珍しく!!7月10日にちなんで納豆について語りたいと思います!!」
ていきなりテンションマックスな幸村が「朝まで夏闘論」と書かれたホワイトボードを叩いた。
「…いつからテニス部は青春攻略部になったんじゃ。」
ダルそうな仁王が背中を丸めて携帯をいじってる。
「文句言う奴は鼻から納豆食わせるから。」
「ジャイアンかっつーの!!」
ムチャぶりをかます幸村にブン太が腹を抱えて笑えば、
「おーれは部長!!イップスだ〜。」
悪ノリした幸村が歌い出す。
それに爆笑するブン太と赤也に、渋い顔の真田と柳生、机に伏せた仁王、柳はホワイトボードに何やら書き始めた。
「今日の議題は納豆。各自がこれはおすすめと言う納豆の食べ方を紹介して貰いたい。」
柳がそう言うと赤也が真っ先に手をあげた。
「ハイハーイ!!俺はマヨネーズ入れんの好きッス!!」
あー、そう言えばこないだの合宿のとこそんなこと言ってたっけ?
「で!!パンに挟むときは明太子も入れるッス!!」
ドヤ顔の赤也に何人か引いてる…。
納豆にマヨネーズは分かる。
明太子?
あの辛いたらこ、だよな?
うまい、てか、納豆にあうのか?
「子持ちめかぶを入れた事がありますが、あのパック入りで味が濃い目なめかぶなのですが…?」
海の物繋がりで柳生が思い出したみたいに言った。
めかぶってあのネバネバしたこぶ?みたいな奴だよな?
「オクラと長芋入れちゃったりして、どう天才的ぃ?」
「俺そんなんキャラじゃねぇし、ちょろ毛。」
なぜかブン太のマネをした仁王は興味なさそうに携帯を見ている。
「つか、納豆で保育園の給食で出た五目納豆?とか言うのマジうまかったぜぃ。」
ブン太が教えてくれた五目納豆は、納豆にほうれん草とニンジンとひじきとチーズのみじん切り?が入った奴で、納豆とチーズの相性が意外によくて、スゲェおいしかったんだと。
ブン太んちに行った時に出た納豆ピザも、最初はビビったが、食ってみたら結構うまかったしな。
「そう言えば、納豆のてんぷらがあるらしいけど、誰か知らない?」
思い出した幸村がみんなに聞いてみるが、さすがに納豆のてんぷらは…、まずどうやって作るか想像つかねぇし。
「それとは違うが、ウチのオカンは春巻きの皮に納豆とか入れて揚げたのつまみに出すぜよ。」
暑さがしんどい仁王がぐったりしながら言った。
こいつ、あんま食わねぇから、暑さに参って全然メシ食ってなさそうだな。
大会近いのに大丈夫か?
「なんかうまそうッスね?幸村部長とか真田副部長はどうなンスか?」
ペットボトルを飲みながらそう言うと、なんでか柳がうんざり顔をして、
「赤也、弦一郎に振るな。」
「何故だっ、蓮二?!」
絶叫する真田をスルーして、
「弦一郎が我が家に泊まった翌朝に、和食好きな弦一郎の為にと納豆を出したのが…。」
一度もったいぶって切った柳が目頭を押さえながら、
「砂糖を掛けて食べるとはな…。」
フ、と窓の外を見た、あいかわらず黄昏が絵になるなぁ…。
柳の言い方にムッとして腕を組んだだけの真田だったが、
「いや、それ普通だろぃ?」
ガムを口に入れながらブン太が言った。
「あのよぃ?黒豆の納豆って知ってる?あれに砂糖かけるとおやつっぽくてうまいんだよなぁ。」
クロマメ?なんだ?黒い豆か?
「いや、キモイッスよ。」
「タラコ入れるよりマシだろうが。」
「落ち着けって。」
すぐにケンカをはじめるブン太と赤也を引き離してたら、
「そう言う精市はどうなのだ?」
「ん〜、結構、は?ナニソレ?って言われるけどわさび醤油が好きなんだよねぇ。」
ピリッとしたカンジで食べやすそうだな。
「精市にしては普通だな。」
…思っても言えねぇ、さすが柳。
「は?ナニソレ?」
超笑顔の幸村に柳が微笑んでかわす…、どうなってんだこの二人は…。
「んでぇ…ジャッカルは何つけんじゃ?」
頭に凍らせたペットボトルを乗っける仁王、夏バテになってるんだろうな、大丈夫か?て思いながら、
「納豆についてるタレとカラシだな?あと、生たまごとか…?」
それをアツアツのご飯にかけるのがおいしいんだよなぁ。
「ジャッカルが一番スタンダードだな。」
て柳に言われたが、そうか?納豆についてるのを使ってるだけだろ?
「柳に誉められるなんて、ジャッカルのクセに生意気だぜぃ!!」
「いや、意味分かんねぇし?!」
またブン太のおきまりのオチで終わったんだが、しかしなんでこう納豆で熱くなれるのか不思議だぜ…。
「ちなみに俺は玉ねぎのみじん切りを乗せる。」
柳っ?!
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