今週の12位は射手座
俺、どっかのラッキー野郎みたいに占い気にするタチじゃないが、朝パンくわえてテレビつけた瞬間、セーターがはち切れそうな女子アナに笑顔で言われたら、いろいろ萎えるの…。
と思ったら、パンにつけとったマヨネーズがブレザーにべっとりついてしもうたっ?!
まじか…、今から部活行くんじゃけど?て思うた瞬間、この爆乳お天気お姉さんの時間言うたら、遅刻じゃなかっ?!
真田の鉄拳は勘弁じゃ!!
手近にあったタオルでブレザーについたマヨを拭いたのに、今度はブレザーからドブの臭いがする?!
手に持ったタオルを見たら、そしたらこれぞうきんぜよっ?!おトイレ用のっ?!
誰じゃテーブルの上に置いたの?!て叫ぶ前に、
「兄ちゃん、時間いいの?」
我が弟クンがジャージ姿で不思議そうに見ていた。
「遅刻じゃっ?!」
「あ、兄ちゃんっ?!」
弟がなんか言ってたが俺はただただ真田の鉄拳だけは嫌で、ラケバ背負って家から飛び出した。
家から駅までは自己新出すくらい楽勝だったが、改札の手前まで俺は青くなった。
定期忘れた…。
イコール財布忘れた。
でもどっかにナニかあるはずと、ブレザーのポケットとラケバのポケットから小銭をかき集めて、電車代を作った。
んで。
慣れない切符を買う間に電車行ったぜよ…。
ハイ、鉄拳決定。
語呂ええやん、エクスタスィーやなって言っとる場合やないし。
柳に連絡しとこう思って取り出した携帯の画面真っ暗。
電源ボタンを連打したら、真っ赤になって充電して下さいって…。
10円はあるけど柳のケー番は暗記してんもん…。
てかやーぎゅのも暗記してなか、フツウ暗記してるもんやの?
一応改札抜けて次の電車待っとったら、
『ぴんぽんぱんぽん♪次に到着予定の車両は接続車両が人身事故の為の運転見合わせとなりました──』
まじかっ?!
今かっ?!今日かっ?!このタイミングでかっ?!
超へこむわ…。
もう何もする気も起こらなくて、電車来るまでホームに待っとったのがいかんかった。
30分遅れって、ちょっ、さすがの赤也でもなかよ?
部活行きづらいのぅ…、幸村は口も聞いてくれんだろうし、柳も渋い顔するじゃろうなぁ…。
これでやぎゅーに無視されたら、もうまーくん死んじゃうかも?
なんて無駄にネガティブにならんとさっさと学校へ走ればよかったぜよ!!
駅から出てちょっと歩いたら、突然の雨じゃとっ?!
駅出てすぐ走っとったら学校ついたのに、なんじゃこの仕打ちっ?!
俺が何したっていうじゃん?!
もうビッショビショじゃ、おぱんつの中まで濡れ濡れぜよ?!
しかもラケバはナイロンじゃし?!
ラケットは濡らせないし、しかもうっかり教科書つっこんだまんまじゃから重いっつーの!!
撥水スプレーかけたのいつじゃろ?つかなんでエナメルじゃなくてナイロンのラケバ買ってしもうたんじゃろ?
12月の雨に涙目になりながらやっと学校についた時はもう悲惨じゃった…。
スラックスの裾が泥でぐちゃぐちゃぜよ…。
雨で泥だらけになった道に苦労したけど、部室のある海林館まで来たけど、人の気配がなか?
雨じゃし、コートは使えんじゃろうけど?て思って、あ俺遅刻じゃ、体育館に移動?て思いながら一応テニス部の部室前まで行って、泣いた。
『本日は雨天の為、部活動は体育館で行う
集合場所と着替えは一号館三階の第一視聴覚室とする
尚、遅刻者は一分につきギャラリー五周追加とする
追記 仁王は本日ラケットの使用を禁ず』
・・・・。
まじか…。
真田副部長の達筆でニオ君指名なんじゃけど…?
…まぁ、考えたらそうかのう…?
連絡ナシで大遅刻したんじゃから、それくらいはアリな話じゃろうて…。
時々強い風が吹きつける中を元来た道を戻る。
雨も止んどらん。
なんかむなしい…。
玄関で上履きに履き替える時に濡れた靴下を脱いで、冷たいシューズに足を突っ込んだら、寒さが背筋から脳天まで突きつけた。
うわぁ…やばいかも…。
指定された場所に行って、ラケバからタオル引っ張り出して頭とラケバを拭いて、昨日タオルじゃったけどな。
ラケットまで濡れなかったのはほんによかったぁ…。
メグミ(ラケットの名前)を抱き締めて、誰もいないのをいい事に、感謝のちゅーを贈っておいて、またラケバに戻した。
今日はヘタレまーくんのせいでメグミと一緒に練習できんの、許してな?
後ろ髪を引かれる思いで廊下に出ようと、振り向いたらっ?!
「やっ、なぎ…っ?!」
ちょっ、おっ…、シャレにならんぞ?!柳って?!今の見られとらんよなっ?!
「随分とゆっくりした登校だな。」
「……」
ふと笑った柳はなんぞ企んでそうじゃな。
「まぁ、そう警戒する、仁王。これが仁王のメニューだ。」
ファイルから紙を取り出して寄越した柳は俺に押し付けると体育館じゃないどこかへ行ってしもうた?
あいつも訳分からんとこあるからのうと考えながら、心臓バックバクじゃけどなんもないフツーの顔して体育館に入った。
目立つ頭じゃき、一瞬みんなの動きが止まるが、ホントに一瞬だけで自分の練習に戻る。
でウチの部長はどこじゃと探したら、目が合った。
挨拶くらいしとくかと一歩踏み出したら、何事もなかったみたいに顔を反らされた。
しかも無表情じゃったし…。
いつもはいじめたくて仕方ないって笑顔なのに、今日は本格的に怒らせてしもうた。
大人しくアップ始めようってギャラリーに行く階段を上ったら、
「おっせぇよ、チョロ毛。」
て丸井に睨まれた、これも地味にへこむ。
「…すまん。」
聞こえたか分からんがそう答えて、誰もいないギャラリーで準備体操を始めた。
卓球台に柳からのメニューを見ながらパワーリストの鉛の調整して、また泣きそうになった。
なんじゃ、この量…。
いくらラケット使えないからって、素振りもできないからって、この量はないじゃろ?!
連絡ナシに一時間も遅刻したけどの!!
それとこれとは違うくらい、孤独な筋トレばっかじゃ…。
まぁ、いい。
王者立海の名にかけてやったるぜよ。
と。
意気込んだ俺はどこ行ったんじゃ?
まだ休憩指示までメニューを終わってないのに、すごいダルいじゃけど…?
汗も止まらん…。
休憩前じゃけど、水飲みに行こう。
ギャラリーから降りて、水飲み場に行こうと体育館から出ようした時、真田とご対面。
「仁王。」
「……」
やべぇ、幸村はなんも言わんかったけど、真田は遅刻した事怒っとるだろうなぁ。
ビビって固まる俺に、真田は俺から顔を反らして帽子を下げると、
「大会は終わったと言え、最近たるんどるぞ。」
「……」
ごもっともで、副部長サマ。
先に歩き出した真田の背中を横目で見送って、俺は水飲み場に向かった。
暖房の効いてない廊下はやけに寒くて、背中がゾクゾクした。
凍えそうに冷たい蛇口を捻って、水を飲むと冷たい塊が喉から胃に落ちていく。
目を閉じるとスッと心も体も軽くなった。
で。
次に目を開けると、真っ白い中にいた。
あんまりにも白すぎて眩しくて、目を開けとられんか──
「におーせんぱい!!」
「ぐはっ?!」
いきなり腹に衝撃が走った。
「うわぁーん!!におーせんぱい生きてたッス!!」
そう簡単に殺すんじゃなか…。
つーか、ここは…?
「お?大丈夫か、仁王?」
シャーッとカーテンが開いてジャッカルが顔を出した。
いつ見ても爽やかな笑顔じゃなぁ…。
「三割は減らすと踏んで作ったんだがな。」
ジャッカルの後ろから冬でも涼しげな柳が顔を出した。
「…真面目にやる時もあるぜよ。赤也、どきんしゃい。」
「におーせんぱいっ?!」
まだ腹に乗っかる赤也をどかして、起き上がる。
「もう起きても大丈夫か?」
少し眉を寄せた柳に俺は手を降って答えた。
ベッドから足を降した時、ジャージの色が違う事に気が付いた。
「熱が少しあるようだ。雨に当たっただろう。」
学校ジャージの上を渡して来た柳は俺と同じ電車の癖に、しっかり時間前についたんじゃろうな…。
「仁王、起きたんなら早く出てきなよ。」
「抜けるっ?!腕抜けるっ?!」
制服の幸村がムリヤリ俺の腕を引っ張ってベッドどこかカーテンから引きずり出されてしもうた。
「仁王君、誕生日おめでとうございます。」
にっこりと笑う柳生はまーくんおたおめのプレートが乗っかったケーキを差し出しとる。
俺、生クリーム嫌いなんじゃけど?
ほんに最悪の誕生日じゃ。
(20111204)
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