立海RPG
※10/29のチャットから
メールに呼ばれて、いつもの溜まり場に来たが誰もいねぇ…。
適当に部屋を見て回ったが、やっぱりいないみたいだ。
場所ミスったかなってメールを見直したけど、間違ってはいないようだ、あんまりアプリはやったことねぇから自信はないが。
そのうちブン太か赤也が来るだろうと、ぼんやり周りを見ながらバーチャルの世界ってマジすげぇなぁって思ってた。
はじめはブン太がハマッてた無料ゲームサイトのアプリに、サイトの中で使えるポイント目当てに招待された。
まぁ、タダならって俺は登録してたら、実は幸村も赤也も友だちに誘われて登録してたけど放置してたっていう話になって。
じゃ、このアプリでみんなで遊ぼっか?っていう幸村の無茶ぶりから他の4人も引きづりこまれた。
冒険とバトルがメインで出てくるモンスターや他のプレイヤーとバトルするたびにレベルが上がってどうたら、まだ詳しいことは分からないが、毎日ログインするだけでもポイントが貯まるらしい。
で貯まったポイントで装備やアジトの備品と交換できるとかなんとか。
俺は柳生を招待したときのまとまったポイントで大体装備を集めて、残りは毎日のポイントで貯まった分だけ消耗するヤツに交換してる。
課金はしないって絶対ルールで(なんでもハマると万単位で金つっこんで装備やなんやらをそろえたりするヤツもいるらしい、信じられねぇ…)、自力で貯めたポイントだけでそろえているが、やっぱ柳はちがうよな?
毎日ログインしてアプリだけじゃなくサイトトップにいって、クリックだけでもらえるとかいろいろな手を使って貯めてるそうな。
俺が呼び出されたアジトも仁王がコツコツと他のプレイヤーから勝ったときの戦利品でできあがってた、意外と仁王はそういうのが得意らしい。
誰かに話しかけようかって、マイページに行こうかと思ったときドアが開いた。
「ジャッカルせんぱぃぃぃっ!!」
剣もマントもボロボロになった赤也が青い顔して飛びこんできた。
「幸村か?」
こいつも凝りねぇなぁと思いながらHP回復の呪文を唱えると、赤也の顔も装備も元に戻ってくる。
「おぉっ?!さっすが〜ジャッカルせんぱい!!」
全回じゃねぇが半分以上戻った赤也ははしゃいで一回転してる。
「無駄使いすんなよ」
オマケで回復薬も渡した。
「おっしゃっ!!これでまた幸村部長のとこに行けるッス!!」
笑顔でぴょんぴょん跳ねる赤也はアプリの中でも幸村と勝負してる。
結果は赤也の全戦全敗、さすが幸村、神の子に勝てるワケがねぇ。
その上、幸村に真田と柳がついてるし、まぁ、普通に勝てるワケない。
「騎士王とハイエルフの賢者長じゃ、俺らが暇潰しの遊びだろうな」
データで全て解決させる柳ならわかるが、気合いで全てやってのける真田にはマジにヤラれたよ…。
「魔王よりはマシっすよ」
「あはは…」
神の子が魔王とはな…、合いすぎだろ…。
「ジャッカル〜っ!!」
「うぉっ?!」
後ろからブン太にタックル決められて、いきなり震えだしたケータイにマジでビビッた。
「俺にも回復呪文プリーズ、白魔術師さま?」
「仕方ねぇな」
ウィンクをしたコック長には敵わないから、赤也にしてやったより上の回復呪文をかけてやった。
「うわっ?!ずっりぃ!!丸井せんぱいばっか!!」
「俺だからいいんだよぃ!!」
コックと言いあってる勇者ってのもなかなかシュールだよな。
「部室と一緒でここも賑やかじゃの。」
「「「うぉっ?!」」」
突然天井から現れた仁王に俺らは一気に後ろに引いた。
「何その態度?まーくん傷ついたナリ」
天井から降りてきた仁王は泣き真似をした。
「ひょー?さすがシーフ」
口笛を文字で表したブン太は頭の後ろで腕を組んで、
「んでやぎゅーは?」
「あんまり遅いんで置いてきたぜよ」
左手で器用にサバイバルナイフっぽいので遊んでる仁王は、
「幸村んとこに」
てニヤリと笑う仁王はシーフ(盗賊)にちがいない。
「えぇっ?!そりゃ、早く助けなきゃっ?!」
がしゃがしゃと鎧を動かす赤也を仁王が押さえて、
「まぁ、とりあえずブーちゃんと赤也はこれを装備な」
戦闘向きの赤也と、なぜかブン太に何かを渡した。
仁王のことだから、どっかのアジトからパクッてきたんだろうな。
「つかにおっ?!てめっブーちゃんとか?!打ちまちがえじゃねぇだろっ?!」
「ワザとナリ」
「いいから!!行きますよ!!」
騒ぎ出しそうなブン太と仁王の襟をつかんだ赤也が引きづったまま入り口に向かった。
俺も魔法の杖で床を二回叩いて出発の合図をした。
「ぶわっ?!」
てせっかくかっこつけたのに、赤也たちが入り口に固まっているので、出ようとした俺はブン太の背中にぶつかってしまった。
「ゃやは゛い…」
赤也の打ち間違いから相当ヤバイ状況なのは分かった。
うん、言われなくても分かったぜ…。
「申し訳ありません」
神官なのにムリヤリ眼鏡をくっつけたのはポリシーなのか、柳生はすまなさそうに下を向いていた。
「あんまり遅いから俺の方から来てあげたゃ」
サイッコーの笑顔で発音が難しそうな文を打ったのが、赤也が入り口で立ち止まった原因?魔王幸村だった。
「さて。覚悟は如何程かな?」
いつもの伏せ目がちでエルフ耳の柳が何やら分厚い本を開いた。
「今日は時間も有る じっくり相手をしてやろう」
カシャンと音を立てて剣を抜いた真田に、とりあえずアジトの中に逃げようと後ろを向いたが、柳のせいか透明な壁にぶつかって動くに動けねぇっ?!
「じゃ、俺たちもやるぜぃっ!!」
後ろを向きながら言ったブン太に仁王と赤也も俺の方を向いた。
しかもみんななんか持ってねぇか?!
「ぬなんだ?」
俺も赤也並みにマトモに文字を打てなくなってしまった。
カーソルの下ボタンを必死に連打するがシールドのせいで後ろに行けねぇ?!
「うわぉっ?!」
画面と下ボタンを交互に見てるうちにケータイが震えた。
まるで爆弾が爆発したみたいに思えて、ケータイを投げ出してしまった。
バックバクする心臓を押さえて、恐る恐るケータイを持ち上げる。
「ちょっ…、マジかぁ…。」
画面に出たメッセージに俺は頭を押さえた。
『Happy Birthdayジャッカル!!』
7つのクラッカーが俺の方を向いてる。
きっと真っ赤になっただろう顔を押さえて、礼を言おうとボタンを押そうとしたときに玄関のチャイムが鳴った。
打とうとする文と止まらないチャイムに悩んだが、バーチャルの前にあるのがリアルだから、ブン太たちに悪ぃが俺はケータイを閉じて玄関に行った。
まだ鳴りっぱなしのチャイムに勧誘とかだったらどうしようと思いながらも、インターフォンの画面を見て、俺はまだケータイの中にいる不思議な感じがした。
まだ乱暴に連打されてるチャイムを壊されたくなくて慌ててドアを開けた。
『Happy Birthday ジャッカル!!』
クラッカーのテープと一緒にぶつけられた画面と同じ言葉になんだか鼻の奥がジンとした。
「んじゃ、誕生日パーティー始めようぜぃ!!ジャッカルんちで!!」
「…俺んちでかよ。」
どんなきれいなグラフィックよりでも再現できないばっちりとウィンクしたブン太には全く敵わねぇな。
ま、イキな誕生日ありがとよ!!
※片霧さま・八雲さま・遥風さま・うりんさま
(気持ちは20111103)
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