スコートって男の浪漫だよね?
ええそうですねと相槌を打ったら、コートが水を打ったように静まり返りました。
「え?何?お前らスコートに萌えないの?滾らないの?思い余って右手が、」
「精市、その辺りで辞めてくれないか?」
畳み掛けるようにスコートと男性の習性の因果関係を説明する幸村君を額を押さえる柳君が止めました。
「やっぱさ?スコートだよね、柳生?」
「はい。スコートを考案した方をノーベル賞を贈っていただきほど素晴らしい発明です。」
腕を持て余すように投げ出しながらしゃがむ仁王君がイグノーベルじゃろと呟きましたが、おや、意外と仁王君もお好きですね。
皆さんも想像してみて下さい。
あのスコートの丈とフレア具合。
これ以上女性の太股を最も美しく魅せる衣服があるでしょうか?
スコートが揺れる度にアンダースコートが恥ずかしげに顔を出し、その密かな膨らみはまさに秘密の花園。
まだ誰も立ち入る事を許さない禁断の楽園に膨らむ期待を誰が止められましょうか!!
「ホラ、柳生もこう言ってるし。みんなも素直になりなよ?スコート好きだろ?」
「私も大好きです。」
相変わらず純情ぶってる仁王君は私の意見に引いていますが、さすが幸村君です。
天真爛漫あるがままに自分の好きな物を好きだと胸を張って言える幸村君についてきて正解です。
「精市。」
目頭を押さえていた柳君が言います。
「自分に正直になっていいのだな?」
「今言いたい事言わないでいつ言うのさ?」
その何気ない幸村君の一言にいつも私達は気付かされ、救われるのです。
柳君は目頭から指を離し例のアルカイックスマイルを浮かべると、
「俺はトレパン派だな。」
なんていう事でしょうか。
まさかの柳君がトレパン派とは…、いえ、もしかするとこれも彼なりのこだわりがあるのかもしれません。
「ああ言った手合いはイマジネーションだ。当然ながら自分以外を100%知る事は不可能だ。ならば、データを収集出来なかった残りのパーセンテージこそに漲る醍醐味がある。」
参謀の呼び名は伊達ではありませんね、随分と乙な趣味をお持ちのようです。
「なに言ってんだよ?ショーパンのほうがエロいって、な、ぺぺん師。」
「だまらっしゃい、赤いこぶたちゃん。」
これも意外です、丸井君もこちら側と思いっていましたが、私もまだまだのようです。
「女子がスコートいやがってショーパンはいってるけど、ショーパンのほうがボール取るときとかぱん形とかぱんつの色とか柄とか丸分かりじゃん?」
「たまにおぱんつがコンニチワじゃし。」
女性の必需品の形も分かると笑った丸井君にそれは完璧なセクハラぜよと言った仁王君はやはり姉妹がいる方です。
えぇ、女性の日は普段穏和な妹でさえ手の施しようがない暴君に変えてしてまいます。
その日はそっとして差し上げるのが彼女達に一番の薬なのです。
「ジャッカルもショーパンだろぃ?」
とガムを口に放り込んだ丸井君に少し引きつり気味だった桑原君は頭を掻きながら、
「…どちらかと言えば幸村?」
恥ずかさからか名称を避け、幸村君の名前を出す辺りが桑原君の処世術ですね、幸村君が満足そうに頷いています。
「ジャッカルの癖にスコートかよぃっ?!赤也はショーパンだよな?ショーパンって言え!!」
パートナーに裏切られた丸井君は天然パーマの後輩の頭を掻き回しながら無理矢理自分の側に引き込もうとしています。
3対2、そういうつもりではないですが、多数決、民主主義の性ですね。
「は?俺もトレパン派ッスよ。」
鬱陶しそうに先輩の腕を払うついでにしっかり丸井君のポケットからガムを失敬した切原君は、
「太い足見せられるより黙ってトレパンはいてろって言いたいッスよ。」
と吐き捨てるように言った切原君の視線の先には数人の女子が。
切原君、まだ君には早かったようですね。
君の視線の先にいる女性達は決して足が太くありません。
日々のトレーニングで鍛えられた大腿筋の上に成長期の証しである女性特有の丸みを出す為に絶妙な加減で乗せられた脂肪をまだ理解できないとは…!!
ご覧なさい、柳君の悲しそうな顔を。
そして、真田君の怒りの形相を?!
「…貴様ら、何の話をしているのだ。」
わなわなと拳を震わせる真田君にしてみれば部活の休憩中に不謹慎極まりない話をしているのだと副部長の立場と彼本来の潔癖な性格から許しがたいのでしょう。
幸村君も苦笑いをしているところだと、これにて遊びは終わりのようです。
誰もが諦め顔で振り分けられたコートに意識が向いた時。
「女子はハーフパンツに決まっているだろうが!!あの微かに空いた太股と布地に間合いに手を差し込みたくなる衝動が湧んとは男としてたるんどるぞ!!」
と力強く叫ぶ真田君へ幸村君が天使のような笑顔で親指を人差し指と中指に挟んで突き出しました。
意外な伏兵にこの議論はしばらく荒れそうです。
→荒れた議論の結果発表
(20110516)
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