短編


そうだ、合宿へ行こう〜U-17編


昼休みに校長室に呼ばれたかと思ったら、U-17合宿に特別招待とか意味分かんねぇー…。

「今さら合宿とかめんどいんじゃけど?」

ジャージ着終わったらマフラー巻いてる仁王先輩はどんだけ寒がりなんだ?

「俺さー、高校のオープンキャンパス予約してたんだけどキャンセルできんのかな?」

丸井先輩はベンチに足乗っけて靴紐結んでた。

「ブン太、まさか外部…?」

ロッカーに体半分突っ込んだまま固まったジャッカル先輩に、

「俺も予約してたなぁ?元は外進向けだけど、内進の俺達も選択科目の下見できるってさ」

と幸村部長はジャッカル先輩の肩を叩いてから、

「その前に、追試受けないとね」

急にうんざりした顔をしてロッカーに額を押し付けた。

「あ、俺も残ってた」

「赤也、お前はまた…」

何回やっても追試を合格できない俺を怒る気にもならなくなった真田副部長は帽子を深く被ったまま手を離さない。

「再来週には期末考査が始まりますよ、切原君」

みんなから見えない位置からそっとプリントを差し出してきた柳生先輩には申し訳ないけど、多分答えが分かってても覚えられないッス。

「赤也の追試って何じゃ?変わってやろうか?」

「え?マジッスか?」

ダルそうにパイプ椅子に座ってる仁王先輩いつになくやる気だ。

真田副部長が渋い顔してなんか言いそうだけど、ここはお願いしないわけがない。

「ただし一教科だけな。ホレ、範囲見せんしゃい」

頬杖をついてパンパンとテーブルを叩いた仁王先輩の前に柳生先輩からもらったプリントを置いた。

「これ、期末の分ッスけど」

「やっぱやめたナリ」

「なんでッスか?!」

見もしないでプリント突き返すんなら最初っから替え玉するとか言わないでくださいよ?!

「今更期末などと…、中間ならまだしも…」

「真田君も妥協を覚えましたか」

こっそりため息ついて真田副部長にはホント申し訳ないですけど、紳士のクセにその言い方はいろいろ失礼じゃないッスかね?!

「なんで高校生の合宿に俺ら呼ばれてんだ?」

「まじにな?んで何日くらい?集合する日書いてんのに帰る日書いてなくね?」

ベンチに座った丸井先輩が広げた招待状?招集状?をジャッカル先輩が覗き込んでた。

「ほぼ高校生だけのU-17に中学生である俺達を特別招待という事は来年度以降の育成がメインと予想される。故にお客様待遇の合宿招待で練習もそれ程過度なものでもなく、学業に差し支えないように今週末の三連休を利用するのだろう」

今まで合宿までの行き方を調べていた柳先輩がパソコンから顔を上げた。

「秋の三連休に山に行けると思えば中々いいのかもね」

スケッチブックも持ってこうかなぁとポジティブな幸村部長に

「あー…、張るカイロと張らないカイロ何個持ってけばいいんじゃろう?」

テーブルに突っ伏した仁王先輩は寒がりすぎるだろ?まだ秋だぞ?

まさか山だからって今から雪なんか降ってるハズないし。

「温泉とかあんのかな?」

「あるんじゃね?山だし」

「紅葉が残っていたらいいですねぇ、仁王君」

「俺は寝てたいナリ…」

「あ、俺牡丹鍋?イノシシとか食ってみたいッス!」

「赤也!物見遊山に行くのではないぞ!」

「まぁまぁ、怒るな弦一郎。滝修行ができるかもしれないぞ」

「せっかく降ってきた話だし、そんなに気負う事もないんじゃないかな」

と部室で笑っていた時もありました。

いつになったら家に帰れるのか、それは神様も決めないっぽいです…。




(20151122)
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