短編


Quanda se BURCA O Cutne DA MONTANHA NAO SE DA IMPORTANCIA AS PEDRAS DO CAMINHO


小さい子や若くして亡くなった人の家族や親しい友達へ、「あまりにも素晴らしい人だから神様が側に置きたいから導かれた」と言って慰める話を聞いた。

幸村が倒れた時、俺は(あぁ、やっぱり)なんて思っていた。

アイツは神の子だから、神様も早く側に呼びたかったんだろうって。

幸村にすまねぇ話だが、死ぬかもしれないって言われた時、俺はナゼか誇らしいような妙な安心をしてしまった。

「…まぁ、な?その気持ち、ちょっとは分かるぜぃ…」

今だから言える、今日も幸村が元気にはしゃいでるの見て、このバカ騒ぎならあのころのモヤモヤもカンタンに消えると思って正直に吐き出した。

「なんつーか、さ?幸村くんってきれいすぎるじゃん?心がさ。だから、…うん。俺もジャッカルの言いたいこと、分かるわ…」

今年は三連休の最後が俺の誕生日で、それでも部活はあるから前から行こうって話してたボーリングに来た。

広いし、ボーリング投げる音や機械の音もけっこう響くし、それに負けないくらい音楽もかかってたり、こんな風に隣同士に座ってナイショ話するにはイイカンジのうるささだ。

「幸村くんはテニスに一途じゃん?良くも悪くも」

「あぁ…」

分かるぜ、ブン太。

幸村はテニスに対して怖いくらいに純粋なとこがある。

「アレ、俺、衝撃だったわ…。入部初日の自己紹介で全国制覇ブチかました上に、その日のうちにレギュラーに全勝したの?マンガみたいなことがマジにあるんだなぁって」

「俺は後半怖かったぜ…」

夢を見るみたいに入部初日を思い出すブン太はホントに幸村を尊敬してんだな?

どっちかっていうと俺は今もちょっと恐怖を感じる。

何か、こう、オーラ的な。

初めて会ったときも、初めての全国制覇も、二回目の全国制覇も、入院中も、決勝前に戻ったときも、今でも。

コートにいるときなんか怖くって近寄れねぇ、ミーティングのときも言われたくないことをズバッと言われる。

耳が痛いってのは、自覚してんのに直すのを逃げてるって証拠で俺が悪いんだが。

でも制服着て移動教室や購買で会ったりすると、幸村も俺らとおんなじかなぁ?って、なんか意外というか。

その安心とこへ、フッと現れるオーラっていうか、そういうのがコートの外も神の子だなぁって思うときがある。

たまたま好きなことが得意なことで、どうやっても情に流されやすい俺とはちがうって思う。

「つーかさ?お前、幸村くん死んだらどうした?」

「……」

いきなりそんなこと言われて、俺は右側にいるブン太をガン見してしまった。

今のゲームは休みのブン太はいつ通りガム食いながら、座りにくいイスに寄りかかって頭の後ろで腕を組んでる。

どんなキツい試合でもあんま見ねぇマジ顔のブン太の視線の先は幸村。

一番重たいボールをカンタンに振り切って、いつも8ピンしか倒せないとか柳にグチってる。

またブン太を見ると、幸村を見てんだけどどっか遠い目だ。

俺は、お前がそんな例え話なんかぜってぇしないって思ってたぜ…?

「…うん、…まぁ、葬式には行くかぁ…?」

気遣いもボキャブラリーもない頭でなんとか無難なことを絞りだせたような気もするが、幸村が死んだ前提で話してるから、俺ってダメな奴じゃねぇか…。

「そんなこと言うなよ」くらい言えよ、俺…。

「葬式か…」

そうつぶやいたブン太は限界までふくらませて割ったガムを口の周りから引きはがして、また口の中に戻す。

いつもなら一瞬ですぎる時間が、一時間も二時間も長く思えた。

「葬式っつったら、写真だな?幸村くんならあの写真使いそうじゃね?」

「は?写真?…んー…?」

マジ顔からなんつーか、ぼーっとしたカンジのブン太が葬式話をふくらませてきたぜ…。

写真かぁ、たしか祭壇に写真飾るよなぁ?

ブン太がいうあの写真ってなんだ?

中二の全国制覇んときか?

あれが一番幸村らしくていいな?

「俺は脱走したウサギ捕まえた時のヤツかな?ちょうど花壇の真ん中だし、最高じゃね?」

仁王が撮ったっつーのが気に入られねぇが、なんて小声で言うから、不謹慎な話してんのに笑いそうになったじゃねぇか?

「んー?アレか…?たしかにあの写真の幸村もきれいだし、花に囲まれてイメージぴったりだけどなぁ?」

「だろぃ?」

だけどそのイメージじゃねぇんだよなぁ、俺は?

「どっちかっつーと、全国制覇したときの幸村がいいな」

本人両方のレーンで同時両手投げかますくらいピンピンしてるから、どっちかもなにもないんだが。

「バッカだな、ジャッカルは!」

「イデッ?!」

そりゃもういい音がした。

ビタンと叩かれた頭を押さえてブン太を振り返ると、なんでかブン太が怒ってる。

「幸村くんってのは慈愛に溢れた天使の微笑みをする美少年なワケ?」

「お、おう…?」

なんか知らねぇがすげぇ気迫だな、ブン太?

「むしろ生徒手帳の写真じゃなくて、スナップ写真を使ってもらえるだけみんなに愛された証拠って赤也が言ってた」

「あ、赤也??」

オイオイ、そこは柳じゃねぇのか?

「おうよ?赤也んちもムダに親戚多いらしくて葬式行きまくってるから、その辺の事情と社会勉強は実地積んでる分柳より確実だぜぃ?」

「へぇー…、赤也がなぁ…?」

俺も向こうにいたころに葬式っつーか、参列者でつれてかれたことあるけど、赤也もかぁ?

あれ?向こうの葬式って、写真あったか?あったような気もするけど、どんな写真使ってたか思い出せねぇ…。

身内から葬式出なかったせいか、参列のあとの親父がいう精進落としっていうのが楽しみだっただけに…ガキのころの俺不謹慎すぎだろ…。

「幸村くんのテニスを知らないヤツにはアレで十分なんだよぃ」

「……」

味がなくなったガムを何かの紙に吐き捨てたブン太は誰かの炭酸を勝手に飲んでいた。

勢いあまってガーター出した幸村が赤也に肩パンされて笑いながら仁王のケツを蹴ってた。

「…俺は、テニスしてるときの幸村の顔が好きだぜ?」

怖いって思ってしまっても、本気で尊敬してるから、何があっても越えられない強さの前に膝を付きたくなる本能みたいなもので。

穏やかに笑う幸村もいいが、やっぱり一番幸村らしい姿をみんなに見てもらいたいと思うのは俺のエゴか?

それが幸村を独占したがるブン太と俺の違いか。

「だ〜か〜ら〜?葬式じゃん?式だぜぃ?式?式ってつくのは儀式なワケ?正装じゃなきゃなんねぇの!学生の正装は制服だろうが?お前、何年日本にいんだよぃ?!」

「…お、おう…そうだな…」

買った真田も手をつけてないチキンをくわえて俺に食って掛かるブン太は幸村が絡むと常にマジだ。

そのマジさ加減の半分を普段の練習に出せって幸村に苦笑いされてんの教えてやりてぇよ、まったく…。

「仮によぃ?全国制覇したときの写真使っても、きっと首から下は制服姿に差し替えられるって赤也が言ってた」

「赤也すげぇなっ?!」

「運悪く大昔の写真しかない場合も死んだときの年齢に合わせていじってくれるらしい。その逆もアリ?かも?とか?」

「マジかよっ?!」

中二でそんなことまで知ってるのかっ?!

中三であんなことまで知ってるヤツが近いにいるからちょっとやそっとじゃ驚かねぇが、これはビビッたぜ…。

「まぁ、でも…」

軟骨までしっかり食ったチキンのホネをゴミ箱に投げ入れて、

「二連覇キメてあんなドヤ顔なのに超絶カッコいい幸村くんを制服コラなんかしたら、幸村くん信者のうぜぇ女子に作画崩壊とか言われて一生童貞の呪いかけられるぜぃ、ジャッカルが」

「俺かよっ?!」

俺全然関係ねぇじゃねぇかよっ?!

幸村の葬式の写真と俺に彼女できるできないの話全然関係ねぇ!!

つまり幸村が若くしてあっちに呼ばれたら、俺に出家かなんかしろってことかっ?!んな無茶くちゃなっ?!

「つか作画崩壊って…」

アニメかよ?相っ変わらず女子の考えること分かんねぇなぁ…?

崩壊も何も幸村は幸村がだろうが、お前らの理想の王子サマじゃねぇんだぞ。

「髪振り乱してボール追いかけり、汗だくになって必死こいてラケット振ってる最高に男らしくてカッコいい幸村くんは俺らだけが知ってりゃいいんだよぃ」

そう言ったブン太はガムを口に放り込んだ。

言われてみりゃ、俺がいつも見てる幸村ってそんなカンジだよな。

花が好きだからってめんどさくて嫌がられる美化委員になったって聞いてびっくりしたし、テニス以外に絵で賞状もらったの見て、神様ってヤツは愛してる相手にはいろんな才能をあげるもんだなぁって思ったっけ?

だけど、俺は美化委員の仕事をしてるとこも、絵を描いてるとこもよく見たことねぇんだよな?

そのせいで、ブン太がみんなが好きだっていう幸村の表情やイメージが理解できねぇのか?

「俺さ、お前がインタビューで答えた座右の銘、結構好きだぜぃ?」

「あ、あぁ…?」

い、いきなりなんだよ、ブン太?

お前が俺のこと好きっていうときはロクなことじゃねぇんだよ…?

「訳の方しか覚えられなかったけど、『希望、夢に向かうとき、小さな事にこだわらずに進めば必ず良い事がある』、カッコいいよな」

…すげぇ、意外。まさかブン太に誉められるとは思ってなかったぜ…?

「俺結構くだらない事をいつまでも悩むんだよなぁ」

知ってるぜ、でもぜってぇ知られねぇように隠すのが上手い。

それで手遅れになることもあるけど、ブン太はプライド高ぇからなぁ?

「俺の誕生日んときにさ、」

急にしんみりした声を出したブン太は右膝をイスに乗せて抱えた。

「幸村くんに会えなかったじゃん?」

「…あぁ」

多分あのころが幸村の具合が一番悪かったときだ。

「この世の終わりみたいな俺に最後まで付き合ってくれてサンキューな」

…サンキューって、お前…。

最後までも何も、俺らダブルスパートナーだから一緒に練習しなきゃ意味ないから、そんな、…ブン太に礼言われることは、俺は…。

「三連覇のために、幸村くんに会えないからってダダこねてる場合じゃなかったんだよぃ。大事の前の小事ってヤツだな」

悔しいけど、って呟いたブン太はどこまでも幸村を尊敬してんだな?悔しいの理由は聞かないでおいてやるよ。

「だから、気付かせてくれてサンキューな、ジャッカル」

「……」

聞き返そうとした時には、幸村に次のゲームに誘われてブン太は歩き出してた。

…ったく、言いたいことだけ言いやがって、ホントしょうがねぇヤツだな。

俺も柳生に呼ばれてシューズを履き替えようとしたとき、ブン太に呼ばれた。

なんだ?また賭けでもして奢らせる気かと顔を上げた。

「誕生日おめでとう、相棒」

俺のほうを見ないで拳を突きだしたけど、それが俺には最高のプレゼントだぜ。

(20141103・'14桑誕)
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