短編


サナックマとコアカヤックマに、おまけのキイロイニオウ


※丸井弟ズ捏造中


ゴールデンウィークっつても地区予選も近いから朝から部活で全然休みって感じしねぇ。

学童も園も普通に休みの弟たちは部活に行く俺を涙目で見送るから、中3なのに日曜出勤するオヤジの気分を味わうのなんのって。

ま、ウチのとーちゃんは有給ブチ込んで12連休とかふざけたこと言ってずぅーっと家にいるが邪魔にされてやんの。

かーちゃんの方は普通に仕事だし、今年のゴールデンウィークも家族全員が休みってのがなさそうだ。

なーんか、俺が中学入ってからそうなっちゃったような気がするなぁ?

ちょっと寂しいな…。

でも今日はいつもより早く部活終わったし、こどもの日だから柏餅もケーキも買って、弟たちとたくさん遊んでやるか!

右手のお土産を確認して気合いを入れ、玄関を開けた。

そこに、ウチの靴じゃないのが三足。

見たまんま男物の靴でとーちゃんの友達?って思ったけど、学生の時はぼっちで根暗だったらしいとーちゃんは友達いないそうだ。嘘だけど。それでかーちゃん口説いたんじゃね?

え?じゃ、なんで?って混乱しはじめたら、二階から弟たちの笑い声が聞こえて、(ヤベェッ?!)と思いながら階段をダッシュした。

「おいっ?!だいじょ──」

ドアを開けてそこまでしか言えなかった。

下の弟がスクワットする茶色いクマに肩車されてる…。

上の弟は?!って見回したら、白いクマと携帯ゲームしてる…?

で、なぜかベッドに黄色い鳥っぽいのが自分んちみたいな顔で寝そべってんだけど…?

「あ!ぶんちゃーおかえり」

「にーちゃんおそいよ!おかえり!」

「ぉ、おう…」

いつもよりご機嫌な弟たちに口の中でおかえりってつぶやいて、ヤツらを見た。

「つか、お前らなんでいんだよぃ?なんだよ、ソレ?」

お土産の箱を机の上に置いて、ラケットバッグをその脇に立て掛けた。

「サナックマなのだ」

下の弟のジン太を担いだおっさんがやたらご満悦ってツラで答えやがった。

公式165センチのクマに合わせたみたいな着ぐるみを180のお前が着てるとなんかもっこりしてんだよ。

あと思いっきりスネ出てっから、人間の足見えてっか。

「コアヤヤックマだお」

その流れで言ったらコアカヤックマだろぃ?言えてねーじゃん、つかお前「だお」とか言うキャラじゃねぇだろぃ?

それと決めポーズパクんな。

「プリッ」

よかったじゃん、お前普段からプリピヨ言ってるキャラ立ってるぞ。

小さい方の白いクマよりデカいからビッグバードみたいだけどな。

「キイロイニオウちゃんだよ」

ってジン太が嬉しそうに教えてくれんのはいいが、てめぇはさっさとベッドから降りろ。

なんでベッドの上で工作してんだよぃ?この鳥頭!

「アカヤックマつえー!すごい!かっけー!」

「そんなことないだお。カン太も強いだお」

男兄弟いないから上の弟のカン太になつかれてまんざらでもないアカヤックマは、

「じゃ、このポケモンあげるだお」

「え?!ほんとに?!アカヤックマありがとう!!にーちゃん!!ポケモンもらった!!」

ってすげぇ嬉しそうな顔なカン太に言えないけど、その携帯ゲーム機両方ともアカヤックマのじゃん。

それって移動しただけってことだろぃ?ゲーム関係に関しては変に知恵回るよな、このワカメ。

「シャナックマしゃん、しゅごーい!!」

「フハハハハハ、もっと喜ぶが良い」

おいおいこっちも普段はクソ生意気な甥っこに振り回されてる分ご機嫌だな?

そのサナックマが俺の視線に気付いて慌てて、

「なのだ」

ムリヤリキャラ付けの語尾を付け足したし、いやムリしなくてもいつも「なのだ」になってるから?

「ジン太君、次は飛行機なのだ」

「わーい、ひこうきぃ?なにそれぇ?」

サナックマはジン太を肩の上で足を外させ、

「体を真っ直ぐにするのだ」

「こうでいいのぉ?」

床と平行になったジン太の胸と腹を持って、ウェイトリフティングもどきを始めやがった。

「しゅごーい!しゅごーい!シャナックマしゃん、しゅごすぎですぅー!!」

って超はしゃいでるジン太使って筋トレしてんじゃねぇよ!!

「胸と腹に力かかって危ないだろうが!!今すぐ止めろ、おっさん!!」

ウチの弟にケガさせたら、お前だからって容赦しねぇからな!!

「…む、それは申し訳ない事をしてしまった。ジン太君、どこか苦しい所はないか?」

「だいじょうぶだよ、いたくないよ?あとね、なのだ、だよ?シャナックマしゃん?」

「そうか…、ジン太君が無事で良かったなのだ!では腕立て伏せにするのだ」

「うんうん!うでたてふせしよー!」

って結局筋トレすんかよぃ?!

腕立て伏せしたサナックマに乗っかったジン太は「まほうのじゅうたん〜」って喜んでんだけど、なんか、兄ちゃん色々複雑だぜ…。

「アカヤクッマ、遊戯王やってー」

ゲームに飽きたみないカン太がアカヤックマに別なゲームに誘ってるけど、まさかトレカじゃねぇよな?

ウチはトレカ禁止だから、ヤバイ遊び教えてんじゃねぇよ、このワカ──

「お願い、死なないで城之内!あんたが今ここで倒れたら、舞さんや遊戯との約束はどうなっちゃうの?
ライフはまだ残ってる。これを耐えれば、マリクに勝てるんだから!
次回、『城之内 死す』
デュエルスタンバイ!」

「いやお前そんなキャラじゃねぇだろぃ?」

何そのキメ顔?あんまりの展開に無意識にツッコンでしまったぜぃ。

「えー?にーちゃん、しらないのー?遊戯王?」

兄ちゃん遊び方はよく知らねぇけど、そんな遊び方じゃねぇってのは分かるんだけど?

「お兄ちゃんはマジメだから知らないんだお」

ってすんげぇ優越感なツラで見てくるワカメ殴りてぇ…。

なんで遊戯王やってで、次回予告するヤツいんだよ?てめぇはどっかのペテン師か?

「プリ、イタッ?!」

最悪なタイミングで鳴きやがったキイロイニオウにティッシュの箱を投げつけてやった。

「痛いナリ〜、ブンちゃん酷いナリ〜」

ってムダに体をクネクネしながら言うから、

「ぶんちゃー、キイロイニオウちゃんにあやまるのー」

とかジン太が言い出すんだよ!!ジン太はこんなヤツほっといて腕立て伏せの回数数えてればいいのに。

サナックマだからほっとけば余裕で千回いくから、数を数える勉強になるぜぃ?

「ピヨ」

「え?なおったっ?!」

は?何が?なんかあったっけ?

「プリ」

「うわー、すごい!!キイロイニオウ、ほんと天才!!」

すごいのお前だよ、カン太。

なんでプリピヨで通じんだよ。柳生でも2回目にはキレてるからな。

でも、ラジコン直してくれてサンキューな。

「プピーナ」

そのタイミング!このタイミングで人の心読んだみたいなドヤ顔ムカつくんだよぃ!!

つかベッドの上ではんだなんか使うな、この白髪鳥!!

「あらー、ブンちゃん帰ってたのー?」

「うわぁっ?!」

いつのまにか後ろにかーちゃんが立ってて死ぬほどビビった。

「今日はサナックマさん達にジンちゃんとカンちゃんを見てもらったから、一緒にお夕飯食べてもらおうと思うの。ブンちゃんも手伝ってくれるかしら?」

「あー、うん?」

いや見てもらったっつーか、こいつら好き勝手やってねぇ?

「みんな、今日はこどもの日だからたくさんお料理作ったの。遠慮しないで食べてね」

「「「ありがとうございます」」」

「お前らそれが目当てかよぃ?!」

全員起立して直角に頭下げやがって、部活のノリで挨拶すんな!!近所迷惑だからな!!

「メインはしゃぶしゃぶよー」

て言いながら階段を降りるかーちゃんは知らない、思いっきりがっつポーズしてるこいつらを。

「お前らみんな帰れ!!」

こどもの日らしく自分ちでこどもらしいことしてろ!!

(20140505)
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