楽しむ為の非情のテニス4〜立春の稲妻が合図だ!編
こんにちは、切原赤也ッス。
もうないかと思っていたら、一年半ぶりの第四弾で初の節分ネタをやるッス。
「さて今年も慣例に従い精市が鬼の訳だが」
柳先輩は落花生が入った袋を部員に渡して歩いた。
「例年通り存分にやってもらって構わない」
毎年部長が鬼をやる伝統があるらしいが、去年もヒートアップして余りの痛さかどうか知らないけど部長が泣いて土下座してた。
この時ばかりは幸村部長いなくてよかったと思う。
今年は幸村部長で、俺ら1、2年はビビッてるけど3年は嬉しそうに自前の豆も用意している。
「クックックッ…ついにこの日が来たかのう」
「下克上等だぜぃ!!」
3BコンビがおもちゃのピストルにBB弾を込めてるよ…。
仲いいんじゃないのか…?て思ったけど、いつもの部活を思うと、うん…そうッスね。
「鬼ですか…、もし幸村君がラムちゃんさんだったらどうしますか、桑原君?」
「…そりゃ悩むな、幸村でも」
あの人本当に紳士なんスか?てツッコミたいけどいくら鬼娘のコスプレでも中身は幸村部長なんで悩まないでくださいよジャッカル先輩…。
「やっべ?!幸村くんラムちゃんだったらどうする、仁王」
「俺はためらいなく的を打つぜよ」
カチッてピストル鳴らす仁王先輩かっこいい!!って思ってしまった。
「幸村の準備が整ったようだぞ」
窓の外を見ていた真田副部長がなんかあきらめたみたいにつぶやいた。
「出陣じゃ〜!」
「いっちょ、ヤッてやりますか!」
ピストル肩に担いでカッコいいっちゃカッコいいンスけどね、仁王先輩、丸井先輩。
相手は幸村部長ッスよ?
しかも女装っぽい鬼の格好してても打てるンスか?
腹筋バキバキに割れたビキニってのもちょっとアレだけど…。
つか、ほどほどにしてくださいよ、明日から八つ当たりされんの俺たちなんスから…。
「幸村ーっ?!タマ取ったらーっ!!」
叫びながらドア開けてピストル構えた仁王先輩は昨日任侠映画かなんか見たンスか?
「ヘイヘイ!かかって来いよ!ピッチャービビッてるぅ!!」
て答えた幸村部長の言ってる意味が分からなくて、真田副部長の後ろから窓を見たら、カミナリ様がいました。
鬼じゃなくて。
カミナリ様。
頭はもじゃもじゃなツノ付きカツラ。
黄色の全身タイツに虎柄の布を腰に巻いて、スニーカー。
なんで持ってるのがおもちゃのバット?
「精市だからラケット禁止にしたが、バットとは考えたな」
て満足そうに笑う柳先輩、ツッコミどころ違う!
「いや、なんでカミナ─」
「鬼だ」
「いや、つかアレ─」
「あれは鬼だ」
「でも」
「鬼だ」
ツッコまずにいられなかったけどあんまりにも力強く言い切る真田副部長が鬼です。
柳先輩に解説を求めようとしたら、3Bコンビが一斉射撃に入った。
「丸井!的はデカいぜよ!!」
「幸村くん!覚悟!!」
「ざんねーん、金カップ入ってます!」
って腰に巻いた虎柄の布まくってVサインする幸村ぶちょぉっ?!
恥は?!アンタ恥はどーしたンスかっ?!もっこりしすぎ!もっこり強調しすぎ!
つか、バット一本でBB弾打ち落とす神の子パない…。
「正しくはファウルカップだぞ、精市」
と冷静に訂正する柳先輩…、なんだろう?一見常識人に思えてなんかズレてんだよな…。
「乳首じゃ!乳首狙え、ブタちゃん!」
「誰がブタだ!チョロ毛!的小せぇよ、金的一本だろぃ?!」
「ははっ、BB弾なんてサーブより遅いって。余裕、余裕」
だから余裕っつか…、笑顔で、しかも手塚ゾーンばりに全く動かないで打ち落とすもんだから余計怖いッスよ…。
やべぇー、まじやべぇー、豆投げに行きたくねぇなぁ?
「我々は後方支援に徹しましょうか」
「そうだな、弦一郎はどうする?」
後ろの窓から出た柳生先輩たちは後ろから幸村部長を討ちに行く気なんかな?
柳先輩がいるなら確実そうだし、俺もそっちに混じろうかな?
「俺はここに残ろう」
仕方なさそうに呻いた真田副部長は窓から離れた。
「俺に勝つにはまだ早いよ、なんちゃって?」
「ムカつく!まじムカつく!幸村!死ね!」
「ちょっ?!におっ?!」
不二っぽい真似をしたとたんにキレた仁王先輩は段ボール抱えて部室から飛び出た。
「ナニしてんだ、あのバカ!」
ナゼか頭にカゴを被って後を追った丸井先輩を先輩をぼんやり眺めていたら、
「赤也」
「あ?ハイ…?」
真田副部長が扉を開けていた。
「共に殿といこうか」
と副部長がほうきを渡してきたからさ?
俺の番がすぐそこまで来てるのを嫌でも実感したしまったんだ…。
(20140203)
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