3000打勝手に柳祭り〜4
SHRの後、部活に行く為に席を立った時だった。
「ジャッガルぜんばぃ〜…。」
「ガンバレ、赤也…。」
「むりでずぅ…。」
戸口に立つ二人に女子達が色めき立つ。
F組の女子の血圧を上げ、男子の不快指数が急上昇だ。
勿論俺も一人だ。
「ホラ、行け。」
「うぅ゛…、あとでうまい棒11本入りのやつ、おごっでぐだざぃ…。」
「…分かったよ。」
俺の価値は99円か、コンビニではうまい棒が一本9円で、しかも袋に11本入りで販売されているからな。
まぁ、いい。
赤也が何を仕掛けてくれるか楽しみにだ。
お手並みに拝見と行こうか?
「やなぎぜんばぃ〜…。」
中学二年にもなって鼻を啜りながら俺の席までやって来た赤也は、
「えーご、赤点なんれず…。」
…それを俺に報告してどうする?
まず精市ではないのか?
「担任がやなぎせんぱいから教わってこいっで…。」
「…そうか。」
何故俺だ?
2Dは松原女史か、成る程あの時の仕返しという訳か。
面白い、受けて立とうではないか。
「んで…、えぐっ、追試一発で合格しないと、ぅぐぇ…やなぎぜんばぃに…。」
赤也は鼻を啜りながら更に泣き出した。
「どうした?はっきり言え。」
常備している餌付け用のおやつカルパスを差し出すが、いらないと言うように頭を振った赤也は、
「ふげっ、やなぎぜんばぃに、えーぶぃに出てくるみたいな女教師の格好させて授業させるっでぇ…ビグッ…。」
「……ほおう?」
実に面白い。
やってくれたな、松原女史。
「赤也、そこに座れ。」
俺は自分の席に座ると、赤也の鞄から教科書を取り出しテスト範囲だった場所を確認する。
狭い方だ、故に問題数を稼ぐ為に捻った物が多かったのだろう。
応用問題が苦手な赤也はそこで点を落としたのだろう。
皺が寄って破れ掛かった答案用紙を出させれば、やはりそうか。
問題用紙も見れば、単元外の問題も数問見受けられる、しかも配点が高いと来た。
これは何が何でも赤也に叩き込ませなくてはいけないな。
「赤也、追試は満点合格だ。」
赤也の鼻をかんでやりながら、俺は決意する。
「死んでもむ〜り〜で〜ずびぃ〜…っ。」
大きな目が溢れ落ちんばかりに泣き出すが、この際形振り構っていられない。
「我がテニス部に敗北の文字は無い。赤也、お前もエースを名乗るくらいならそれなりの覚悟をしろ。」
「ぶ、びぇー…んー…、ぐふうぅ…。」
幼児の如く泣きじゃくっておきながら、これがコートでは悪魔なんて呼ばれているから人は分からない。
ついで英語に関しての理解力は幼児以下なので、全体練習に間に合うギリギリの時間まで特訓をしたが一つ覚えさせるだけが精一杯だった。
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