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鏡映のモノポリー×鼠の嫁入り
完結記念特別対談企画



────きっかけはなんですか?

梅吉「まずは完結おめでとうございます」
まみゅう「ありがとうございます(笑)。」
梅吉「鏡映のモノポリーを書き始めるにあたって、きっかけなどはありますか?」

まみゅう「そうですね、これまでいくつかイルミ長編を書いてきて、そろそろ自分の中のスタンスというかイルミさん像が固まってきまして。私の中のイルミさんっていうのは、模範生であることで自分の存在意義を保ってるイメージなんですよね。
キルアには才能で勝てないから、いい子でいることで家族の愛や関心を得ようとしている。だから親から教えられた暗殺者としての正しいことを、頑なに正義だと信じて行動している。そういうちょっと可哀想な、報われないイメージなんです。頑張ってても方向がおかしいから普通の感性の人には受け入れられないし、ある程度なんでもそつなくできちゃうからこそ、肝心の家族には努力部分が伝わらなくてイルミなら当たり前って感じに思われている。何も望んでいないと思われている。
だからなんとかしてその愛情の渇きを満たして幸せにしてやりたくて、でも普通の色恋じゃたぶん彼には無理で。そこから同じように家族愛に欠落を抱えている夢主なら、お互いの心を埋めあえるんじゃないかと思って鏡映のモノポリーの設定はできました」

梅吉「なるほど。あとがきでもおっしゃっていましたが、鏡映というタイトルはそこからきているんですね。たしかにお互いにお互いの家族像や関係性を羨んでいて、そこが一番譲れない場所だからこそ似ている二人は鏡のようでした」

まみゅう「そうですね、イルミさんってたぶん、家族や仕事に以外に興味が無いから、お話を書く時に夢主に興味を持たせるのに毎度苦労してて......上手くやらないと関わることすらできないか、関わっても夢主がすぐ殺されちゃうんですよね」

梅吉「あー(笑)。」

まみゅう「でも興味を引くと言っても難しいので、とにかく感情を動かそうと。そう考えたときに、喜怒哀楽という強めの感情の中で最も向けさせやすかったのが怒りや憎しみだったんです。ヒソカにもお前を殺すよってブチ切れたくらいだから、家族にちょっかいをかければイルミさんから感情を引き出せるかなって。それで夢主とイルミさんが大事にしている物の共通点として、仕事ではなく家族を想う心を設定しました」

梅吉「よく愛憎は表裏一体とも言いますもんね」

まみゅう「そうそう!悪い感情から始まってもその気持ちを裏返らせることは可能だと思ったんです」

梅吉「たしかまみゅうさんは大体のストーリーを立てて、次に章とタイトルとあらすじを最初に作ってしまうんでしたよね」

まみゅう「はい。基本プロットは作らないので最初に決まっているのは起承転結の起結だけ。あとはテーマ、今回だったら似たもの同士の二人が欠落を埋め合うと言ったようなものだけ考えてます。そこから十話単位でこんな流れになったらいいなってタイトルを仮置きして......あとは成り行きですね(笑)。あんまり先の展開を決めておくと、もう話がわかってるから書く気が起こらなくなっちゃう。なるべく各話も自分が続きを気になるような形で終わるようにしておくと、よーし書くかって気になれますね」

梅吉「私もたまにそういう書き方するので成り行きってすごく分かります。でもまみゅうさんのお話はスムーズで全然とっちらかってないので、ストーリー展開がスッと頭に入ってきます。そういうところにまみゅうさんの知的さと頭の良さを感じますね」

まみゅう「いや、結構放りっぱなし投げっぱなしみたいのもよくあって、プロット無いからこそ後で使えるようにネタだけは散らばらせてるんです。だから使ったところは伏線回収したように見えるけど、そういえばあれは?ってのも多くて。今回だとあれだけお世話になっといて主人公組との関わりはぶっつりだし、夢主の捻挫とかも後半すっかり忘れてましたね」

梅吉「あっ、捻挫。そういえばそうだった。夢主が身動き取れない中で頑張ってるところだったからすっかりそっちに意識が行ってました。多分夢主もイルミさんの足にしがみつくのに必死できっと痛くなかったと思う!(笑)。」

まみゅう「まあハンターハンターは怪我の治りが早いのでみんな大目にみてくれるかな、と。探せばきっといっぱい粗があると思うので......この話はこの辺にしといてください(笑)。」




────鏡映のモノポリーの見どころを教えてください

梅吉「私いっぱいあるんですけど、ベストスリーをあげるなら、キキョウ・シルバ・イルミへの念の説明をする夢主の水を打った静けさのシーン、夢遊病でイルミに初めて抱きつくシーン、最終試験の対戦シーン。あっ、でも同じくらい夢主とイルミが初めて心を明かし合うシーンも。あとヒソカによる鏡の発言と一番最後の締めも......ごめんなさいやっぱりベストスリーには収まらなかったです(笑)。」

まみゅう「えへへ、全然スリーじゃないけど、全部触れてもらって嬉しいとこばかりですね。話の本筋の見せ場は今挙げてくださったようなところなので、あえて誰も触れてくれなかったけどここ好きってとこ語らせてください。三次試験のトリックタワーのイルミさん、かっこよくないですか? 抱きつくシーンよりも前の、さくさく殺りつつ殺した数はちゃんと把握してるとことか、『クリアできるから殺す理由がない』とかの割り切り。書いたの私なんで自画自賛かよって感じなんですけど、イルミさんって頭もいいし味方だと頼りになるし、はあ~好きって思ってました。あと婚前契約の神字リングは原作時事ネタをぶっこめたので個人的に大満足です」

梅吉「ああ~!確かに!確かにカッコいい!頼りになる!確かにイルミさんかっこいい!あまりにもイルミさんだった!超分かる!」

まみゅう「敵には回したくないですけど、そういうキャラほど味方になったときに滾る......!基本的にハンター試験からイルミさんはわりと歩み寄ってきてくれてますからね、不器用すぎるけど。わかりやすいイチャイチャではないんだけど、その不器用な甘さを感じるようになったらもうあなたはイルミさんに落ちてます。ね、梅さん(笑)?」

梅吉「ううっ、布教が抜け目ない......(笑)。確かに『あいつが敵に回ると厄介だな......』みたいなキャラが味方側にいると凄く滾る」

まみゅう「隙あらばガンガン布教していきますからね。G・I のヒソカみたいにイルミさんもいつか原作で共闘みたいな展開になってくれればいいのに……(笑)。」

梅吉「あと私、神字リングが壊れた時の『そのとき包まれた温度に、なんだかどうしようもない懐かしさを覚えた』ってところ、凄く好きです。夢主がイルミさんから向けられていた優しさをちゃんと受け取っていたんだって、受け取れていたんだっていうのが分かるというか。あそこまで夢主はギリギリのキリキリだったじゃないですか。だから余計にその救われたような一瞬が際立っていて、もはやこの一瞬のためだけに生きていたんじゃないかって思えるほど素敵な一文でした」

まみゅう「えっなにその素敵解釈!基本的にイルミさんがデレてるときは夢主寝てますからね......何か心を許せるきっかけ、気づきが欲しくて体温を用いたんですがあの瞬間のために生きてたって最高だなぁ。夢主もだいぶ頑固だったので、全力出し切って万策尽きたあとでしか素直になれないと思い、ああいう展開にしました。あとはね、キルアに対する誠意的な意味も込めて。あのまま普通にイルミさんの言いなりだったら結局自分が可愛いだけでゾルディック家を大事にしてないことになるので、そこはこう、一本筋の通った感じにしたかったんです」

梅吉「鏡映のモノポリーでは、というかイルミさんのお話ではですけど、やっぱりキルアの存在って欠かせませんよね」

まみゅう「どーしてもね、切り離せない。原作沿いを書くと毎回夢主をキルアの側につかせるか、イルミさんの側につかせるかめちゃくちゃ迷うんですけど、ハンター試験だと特に最終試験がほんとに修羅場になるんですよ。とりあえずポリシーとして原作の展開は変えたくないけど、誰かが不幸せなまま夢主とイルミさんが幸せになってもスッキリしないので、キルアには少し大人になって引いてもらうことにしました。ていうか原作がそうですけど、キルアの思う『友達』の定義が重いんですよ(笑)。ずっと欲しくて理想化してて、やっと手にしたからこそっていう部分もあるんでしょうが、もう少し気楽にね。蟻編ではイカルゴに友達ならありがとうって言わない、当然だからってスタンスになってましたけど試験編ではまだまだ『友達のあり方』について悩んでるかなって思って。そういう意味ではハンター試験全般にわたってのキルアの成長や心境の変化もモノポリーでの見どころかもしれません」




────ここに水見式のグラスと葉を用意しました

まみゅう・梅吉「ええ~~!今やるんですかっ!?」

────そんなこと言わずに


梅吉「まみゅうさんの水見式の結果......あ、葉が動いてますね。操作系です」

まみゅう「あーでも、予想通りです。接続詞を多用しがちなカチカチ文章でも察していただけるかもしれませんが、理屈っぽい性格をしてまして。気分屋なとこもありますが、開き直りゆえのマイペースで生きてますね

梅吉「たしかにまみゅうさんは操作系!どこか知的で理路整然としている印象はありますね。でも併せ持つようにして書かれる愛情の変化心情の変化が凄く素敵です。ちょっとだけ感受性豊かな放出系よりなのかな、とも思いますね。......開き直り(笑)。前向きになる思考変換が独特なところがかなりマイペースでマイルールのある操作系って感じがします」

まみゅう「放出は初めて言われた!でも人に迷惑かけない自分だけのことに関しては大雑把だから言われてみればそうかもしれない!独特って、Twitter でやってるイマジナリーフレンドのイルミさんのことですかね(笑)。困ったことや迷うことがあったら心の中のイルミさんに相談してばっさり無茶ぶり解決してもらうんですが......あの、別に本当に見えてたり頭がおかしい訳では無いので!イルミさんだったらどう対処するかなって参考にして生きてます」

梅吉「一応、Twitter見てない人もいると思うので、どんな感じか……」

まみゅう「今ですか(笑)!?今は無理ですけどえっと、そうだな、たとえば急に予定を突っ込まれていつもの仕事量の二倍あるぞ、締め切り間にあうかな頑張れるかなってときに心のイルミさんに相談するとですね、『二倍の仕事があるなら二倍の速さで仕事すれば問題なくない?』と返ってきますね。だいたいとても厳しい……これがイマジナリーイルミさん」

梅吉「イマジナリーイルミさんはいつも面白く拝見させてもらってます(笑)。どちらかというと、なんでも念能力やハンターハンターに昇華させてしまうところですかね。頭の良い人の遊びを含んだ発散方法って感じで、溢れるユーモアセンスに感心しながらいつも笑ってます。そういえば、鏡映のモノポリーの夢主も素質的には操作系ですね」

まみゅう「そうです、この夢主は後天的に特質になったものの元は操作系です。一応これまでに全系統の夢主は書いたので系統は何でもいいやって思ってたんですが、イルミさんと似たもの同士という設定なら同じ系統で理屈屋の方がいいかなって。口で言い負かされるイルミさんが見たいっていう下心もありました」

梅吉「イルミさんと口でやり合ってるあの殺伐とした感じとか、イルミさんのストレス具合とか、すごく伝わってきました。まみゅうさんの思うイルミさんについては結構聞けたと思うのですが、まみゅうさんは夢主のことどう思ってますか?」

まみゅう「ストレス具合を書く時はイルミさん視点で見てるのでうわ~強かで嫌な女だなって思うんですけど、そうでないときは常に肩肘張って生きてる不器用な子だなって思います。警戒心も強いしあまり人と心の底から打ち解けるということが出来ない。命を賭けるくらいには可愛がってたくせに結局夢遊病のこともキルアに話しませんでしたし、本編で夢主の念や過去、悩んでいたこと、望んでいたこと、全部知ってるのはイルミさんだけなんです。ヒソカとも依頼だけの関係だし、この先ゴン達とも特に深くかかわらないでしょう。でも、イルミさんほどは家族以外どうでもいいって割り切れてはいなくて、レオリオやクラピカには少し身の上話をしてみたり。たぶん夢主自身も本当は打ち解けたいし受け入れてもらいたいとは思ってるんですよね......うん、結構めんどくさい性格だ(笑)。博愛主義とはほど遠いですが、母親、そしてその母親と繋がるゾル家への献身を見るに、一度自分の内側と認識したものはとことん大事にしそうです。だから家族になったらゾル家を支えてくれそうだな、念能力も暗殺に向いてるなって密かに思ってました」

梅吉「その辺はイルミさんと似てますね」

まみゅう「そうですね、ゾル家大好き夫婦になりそうです(笑)」




────これまでの振り返りをお願いします

梅吉「確固たるイルミさん中心サイトとなって久しいまみゅうさんですが、モノポリーを書いてみて、自分の中で変わったことなどありますか?」

まみゅう「夢小説だから当然なんですけど、昔の作品はもっと夢主が主人公だったんですよね。それがこのモノポリーもそうですけど、いつの間にかイルミさんがお相手と言うよりかは主人公格に......。主人公の定義は様々ですけど、個人的には精神的な成長をするか否かがポイントだと思ってます。その意味で単に恋愛的に結ばれて幸せってするんじゃなくて、イルミさんなりに少しでも心境の変化があるようなお話が書きたいと思うようになりました。もうこれ、正直キャラ崩壊なんですけど......こういう気持ちの変化もありえるかもしれない、みたいなギリギリのラインを狙いたくて。自分の中で変わったことと言えば、読者受けは知らん!と思えるようになったことですかね(笑)。原作感を出して最後のカタルシスに持って行くため、夢小説とは?ってくらいに相当殺伐とさせましたから......」

梅吉「まみゅうさんの作品群はカタルシスすっごい感じます。その殺伐加減が、まみゅうさんがイルミさんを中心にまわっていることを表してますね。精神的な成長、分かります。人と関わる中でどう感じてどう行動に変えていくのか、それがなければまさに熱を持たない闇人形......」

まみゅう「ね、今日も気づくとイルミさんの話しかしてませんもん。その成長や変化が急だと、このキャラはこんなことしない、言わない!ってなりやすいと思うので、そこはじっくりじわじわ。読者の方には毎回、かなり遠回りでもどかしい思いをさせてしまっているなとは思ってます。原作ではあまり共感できるキャラクターというイメージはないと思うのですが、イルミさん視点を多く書くことで、読んでくれた人にとってもう少しだけ身近なキャラになってくれたらいいなと思います。このイルミさん、全部私の妄想なんですけどね」

梅吉「夢小説から新たな面に気づいて好きになったってキャラは全然いるので全然ありです。まみゅうさんが思うイルミさん像を突き詰めて書き続けてきたからこそのスタンスであり、それが今回の鏡映のモノポリーとなった訳ですね。逆に変わらなかった事ってありますか?えっと、イルミさんへの愛以外でお願いします」

まみゅう「愛以外で(笑)。うーん、サイトを通して変わっていないのは、イルミさんに必ず暗殺者でいさせているということでしょうか。これは拘りですね。逆トリで現代社会を舞台にしても他の仕事をさせたくなかった」

梅吉「ああ、流石。イルミさん中心サイト筆頭ですね。初期に投稿されてた"Top Secret" 時代からまみゅうさんを存じていますが、凄く初志一貫したサイトだなと思います」

まみゅう「あぁ~ものすごく懐かしい作品を......有難いことに今でも好きだとおっしゃってくださる方はいるのですが、自分で見返すと文章酷いなってじわじわ恥ずかしいです。あの当時から書きたかったことに関してはさほど変わっていないのでそれだけは救いなのですが、うん。逆に今は成長したんだなと思って後ろは向かないでおこうと思います。創作スタンス的に変わってないのは、表に出したやつはなんとか完結させるぞっていう心構えですかね。そのお陰でサイトにあげてない書きかけの没案は溜まっていく一方なんですけど......まあ、これからもなるべく連載にしたやつはちゃんと終わらせたいですね」




────これからの抱負などあれば

まみゅう「結構イルミ夢に関しては色々と書きたいことは書き切っちゃった部分もあるんですけど、イルミさんの幸せの可能性は無限大だと思うので全てのハッピールートを開拓したいです。また、これまでずっとイルミ夢サイトとしてやってきたので、そろそろ他のキャラクターにも挑戦してみたいな、って気持ちもあります。イルミさんもそうですが原作そのものの世界観も好きなので。そこで暮らす他のキャラの価値観を考察するのも、結局はイルミさんを読み解く手掛かりになるんじゃないかと。全ての道はローマならぬ、パドキアに通じています。そういうことでよろしいでしょうか(笑)」


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作者:まみゅう(mamyu)
東にイルミ夢サイトあれば行ってブクマし、西にリアルの生活で疲れた読者がいれば行って夢を読ませたい木偶の坊ならぬイルミさんの木偶。ハンタはもっと前から知っていたが、実は夢歴=サイト歴でまだまだ自分は初心者だと思っている。話しかけにくいと言われるのが、実はちょっと悩み。

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