- ナノ -

■ 2.世界の仮面


「はい、ダウト!!!」

「ちぇ…」

ララの指摘にシャルは膨れながら、カードを集める。
連戦連敗。
頭はいいはずなのに、なぜかシャルはこのゲームに弱い。

一緒にやってるマチやシズク、フランクリンも、このお決まりの展開に飽きてきてしまったようで、もうやめない?と言った。

「えー!俺、負けっぱなしで終わるのやだよー」

「だったら、次やって勝つ見込みでもあるのかい?」

「何回やっても無駄だろう」

皆の態度は冷たいが、事実、負け続けているのだから言い返せない。
シャルは言葉に詰まって、仕方なくトランプを片付けた。

「じゃあ何すんのさー」

「別にあんたの為に遊んでんじゃないんだから」

マチは呆れたようにそう言うと、急に顔をしかめた。

「どうしたの?」

念の使えないララは何事かと思って彼女の顔を仰ぎ見る。
あいつだ…。
マチがそう呟くのとほぼ同時に、それまでアジトの隅で読書していたフェイタンがオーラを纏わせながら立ち上がった。


「やあ☆相変わらずの歓迎ムードだねぇ◇」

ニヤニヤと笑いながらアジトに入ってきたのは、ピエロのような格好をした男。
すかさずマチはララを自分の後ろに隠した。

「……何しに来たか?
今は仕事ちがうよ」

「そのわりには、皆結構集まってるようだけどねぇ◇」

すんなりここまで入ってきたことと、『仕事』という言葉から、彼も蜘蛛の一員なのだということはわかる。
だが、フェイタンが纏っているのは明らかに攻撃のためのオーラだった。

「お前には関係ないね」

「隠されると、ますます気になっちゃうなぁ💓
それとも、アジトに侵入者がいるみたいだから排除しちゃってもいいのかな?」

ピエロの彼は怪しく笑うと、どこからともなくトランプを出し、口元に当てた。
その狐のように鋭い目は、しっかりとララの姿を捉えている。

一触即発な雰囲気のピエロとフェイタン。
その間に割って入り、シャルがまあまあ、と二人をなだめた。

「ほら、シズクも言ってやってよ」

「団員同士のマジギレご法度ですよー」

その言葉にフェイタンはちっ、と言ってオーラを鎮めたが、未だに警戒体制は解いていない。
彼が喧嘩っぱやい性格なのは、ここ数日で学習していたけれど、こんなにも嫌われているピエロもある意味可哀想だ。

ピエロはゆっくりとこちらに近づいてくると「キミは誰だい☆?」と言った。

「えっと、私」「ヒソカ」

ララが名乗るよりも先に、それを遮るような声が聞こえた。
落ち着いているが、有無を言わせぬその響き。

いつのまに現れたのか、ピエロの彼を呼んだのは他ならぬクロロその人だ。
そしてまた、いつものように読書中だったのか、ご丁寧に本まで持ってきて……
そこまでして彼はこのピエロに用事があるのか。

「話がある」

「へぇ……団長直々にかい☆?」

「ああ…」

「ちょっと団長!」

クロロは頷いただけで、それが何の話なのかは言わなかった。
すかさず抗議の声をあげるマチ。
彼女がクロロに楯突くなんて珍しいことなので、ララは不安そうに皆の顔を見回した。

「面白そうだねぇ…◆」

やがて、交互にララとクロロを見た後、ピエロの彼はトランプをさっと仕舞った。
手品みたいだ。
ララは気になって小声で「誰?」と訊ねてみた。

「あんなの、覚えなくったっていいよ」

「ははは、まぁ関わらないに越したことはないよね」

シャルはニコニコと笑って見せたが、やっぱり目が笑っていなくて。

「ダウト」

ララは小さくそう呟いた。

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