解散宣言
- ナノ -



07.自己中上等ストラテジー

「キッツ……え?まじ?まじなの?グンマ」

「お、おう、悪いかよ」

よりによってなんで歌手を選んだジェノスくん。
そりゃ肝心な部分を他人に丸投げしてしまったオレも悪いがもう少し現実的なものがあっただろう。緩い顔面をした兄貴が珍しく顔を引きつらせて、オレをまじまじと見る。

「お前さぁ、ヒーローやってる俺が言うのもなんだけど、もう少し現実見た方がいいぞ」
「そ、そうかな?やっぱりそうだよなぁ〜えへへ」
「先生、グンマさんは本気です!どうして応援してあげないんですか!」

ちょっ、ジェノスくん黙って。君のせいでオレは白い目で見られているんだから、もうこれ冗談と言うことにしといて。
だが出かけようとしていた兄は完全にその気を失ったのか、戻って来て腰を下ろす。「いや、応援するのは簡単だけどよ……」応援されたいわけでもなりたいわけでもないから間に合ってます。

「ていうかグンマさ、お前壊滅的に歌下手じゃなかった?」
「そうなんですか?」
「そ、それ子供の頃の話だろ。今はもう普通だし!」
「ん〜でも、普通レベルじゃ駄目だろ。顔はうん……普通かどうかも怪しいしな」
「兄貴、オレたち兄弟ってこと忘れてね?ブーメランだからなそれ」
「っく……」
「大丈夫ですよ、お二人ともかっこいいです」

「「お前に言われたくねぇわ」」

あまりのショックでジェノスくんにお前とか言っちゃった。まぁ本人気にしてないようだし、イケメンだから心も広いんだろどうせ。はぁ〜爆発しろ。
だがいじけている場合ではない。今はオレの夢の話だ。全然志してないけど、今は話を合わせるしかない。

「ま、まぁとにかくオレはそういうことも視野に入れてて……」
「でもお前コネとかあんの?つか、ソロで活動すんのか?」
「それなんですよ、先生。俺はグンマさんもヒーローになればいいんじゃないかと」
「待って、どゆこと」

あ、ちなみに今制止をかけたのはオレです。ただでさえ話がややこしいことになってるのに、これ以上どうするつもりなんだ。だいたい非力なオレにヒーローなんて務まるはずもない。

「グンマさん、A級1位のアマイマスクを知っていますか?」
「へ?あぁ、そう言えば聞いたことあるな。アイドルと兼任してるんだっけ?」
「そうです。ヒーローの中にはただのヒーロー活動以外に、メディアに顔を売ることでヒーロー全体の印象を良くする者もいます。いくらヒーローとはいえ戦えばそれなりに損害が出る。ヒーローの印象を常に良くしておき、一般市民からの人気を保つのも重要な役目です」
「は、はぁ……」
「そこで俺としては、グンマさんにそういう方向のヒーローを目指してもらうのもありではないかと考えているのです。もちろん『イケメンヒーローランキング6位』『19歳の若さでS級デビューした天才』『サイボーグ王子』と言われる俺がそういうメディア展開をするのも悪くありませんが、あくまで俺が目指しているのはヒーローではない。俺が目指しているのは強さであり、俺の故郷や家族を奪ったサイボーグを破壊することです。そう、始まりは4年前……15の俺が味わった悲しみを繰り返したくない。もちろん今だって先生やグンマさんのような方々に出会えて幸せですが、あの頃の幸せを壊した奴らを俺はこれ以上ほっておくわけにいかないんです。そもそも俺は、」

「あーストップ!20字以内、ジェノスいつも言ってんだろ」
「実の弟の知名度アップは先生の知名度アップ」
「なるほどグンマ頑張ってくれ」

「お前らそういう奴なのな」