解散宣言
- ナノ -



21.重力ブラックアウト

ものの数秒でA市は壊滅。
モニターを通して伝えられた映像に、流石に絶句するしかなかった。
幸か不幸か協会本部はメタルナイトの特殊設計により無事だが、あまりの出来事に呆然とするしかない。守るべき街が消えて、ヒーローたちだけが残ってしまうなんて皮肉もいいところだ。

しかし、A市を壊滅させた敵はすぐそこにいるのだ。会議室内が騒然とするなか、兄貴は天井を突き破って外へ出る。続いて他のS級ヒーローたちも敵の討伐と状況確認のため続々と外へ出て行った。

……え?
もしかしてオレはこのまま放置なの!?

まぁちょっと我慢すればいいか、ぐらいにしか考えていなかった拘束が今は完全にパニックを引き起こしている。おまけにさっきの衝撃で椅子が倒れて、オレの身体は無様な芋虫状態だ。もちろんC級のオレが出て行ったところで何の役にも立てないけれど、この危機的状況化で自由が奪われていることの怖さたるや……。

兄貴が開けた天井の穴から見える空は、青ではなく鈍い金属の色を放っていた。どうやらこれこそが敵の宇宙船らしいのだが、サイズが尋常ではない。攻撃を繰り返されれば協会の建物もいつまで耐えられるか怪しいところだろう。
とりあえずせめてちゃんと天井のあるところに行こうと、もぞもぞ這いずって地道に移動する。そういやさっき説明してたおっさんはどこ行ったんだ。まぁあの人も色々指示しなきゃならない立場なのだろうが、せめてこの縄を解いて行ってほしかった。それにしても固く結び過ぎなんだよ。

なんとか壁際までたどり着いたオレは壁を支えに体勢を立て直す。猿轡のせいで息は苦しいが、足まで拘束されていないのがせめてもの救いだろう。時間をかけて立ち上がったオレは、とりあえず誰か人を探しに部屋を出る。声を出せないのでうーうー唸りながら廊下を歩くさまは完全に黒歴史だが、今はそうも言ってられない。

(指令室ってのは、たいてい上の階にあるもんだろ。)

そしてそこからならある程度外の様子もわかるかもしれない。そう考えたオレは、迷いなく見つけた階段を上る。この揺れの中でエレベーターを使う勇気は流石にない。しかし階段を使うという普通なら正しい判断は、ただ運が悪い、という理由だけでグンマに不幸をもたらした。あと一段で踊り場、とりあえず息を整えよう、と思った矢先、今まで以上の揺れが協会本部を襲ったのだ。

「っ!!」

せめて両手が使えれば、手すりを掴んだり、バランスをとることができたかもしれない。だが、足を滑らせたオレの身体はそのまま重力に従って落ちるのみ。衝撃が先か、がごん、という鈍い音が先か。それすらもわからぬままに、オレは暗闇の中へ意識を手放した。