解散宣言
- ナノ -



01.ロングロングストーリー

やべぇ、死ぬ。

そう思って固く目を瞑った瞬間、轟音とともに強烈な地響き。
だけならともかく爆風に吹き飛ばされたオレは吹っ飛んで、背中をその辺の建物の壁に嫌と言うほど打ちつけた。

「ったぁ……!」

何が起こったのかわからず目を見開いたが、痛みで目の前がちかちかする。なんでオレがこんな目に……。ていうか今のなんだ?怪人は?オレ生きてる?
とりあえず触って身体の無事を確かめたが、背中が猛烈に痛いこと以外は特に怪我はないようである。というかよく背骨折れなかった。それだけでもツイてるよ、ほんと。

しかし本当にオレがツイてる男なら、コンビニに寄った帰りに怪人にばったり出くわして死にかけるなんてこともないだろう。ようやく落ち着いて辺りを見渡せば、ちょうど怪人がいたあたりに巨大な大岩。というかあれはビルだな、どう見ても。ビルがふっとんで来る状況の意味がわからないし、下手するとこっちも巻き添えを食らっていた可能性があるが、とりあえず怪人があの下敷きになったのなら安心できる。
そして安堵に胸を撫でおろしたオレは肝心なことを思い出した。

さっきオレを助けようとしてくれたあの人はどうなったんだろう。

必死で怪人から逃げていたので、その人の姿はちゃんと見ていない。だが元々負傷していたようだったし、怪人の攻撃を食らって吹き飛ばされていた。
あぁ、今更思い出したけどほんとに大丈夫か?もしオレを庇ったばっかりに死んだなんてことがあったら流石に寝覚めが悪いぞ。記憶を頼りにあの人が飛ばされた方向探してみると、どこからともなく変な音がする。あとちょっと焦げ臭い。

「おい、無事だったのか」
「う、うわっ!」

不意に声をかけられ、オレは文字通り飛び上がった。慌ててきょろきょろするが、特に人影は見当たらない。「ここだ」言われて声のする方に視線を向けたオレは、あまりの光景に言葉を失った。

「……っ!」

そこには金髪アフロの生首が転がっていたのである。


▽▲

オレを助けようとして生首になってしまった彼は、どうやらサイボーグだったらしい。正直、だったらしい、で済ませられるような話ではないが、ジェノスと名乗った彼は確かに人間の身体ではなかったし、もうここまでくるとなんでもござれ。オレを助けようとしてくれたことには変わりない。

話を聞いたところ、彼はどこぞの研究施設で敵と戦い負傷して、その後走ってスーパーの特売セールに向かい(既に意味不明だが、彼の話が長すぎたためちゃんと聞いていなかったオレが悪いかもしれない)最後に身体を治すため彼を作った博士の所に行こうとしていた時、ちょうど怪人に襲われているオレに気が付いたらしい。負傷した状態でそれでもオレを助けようとしてくれるなんて、ヒーローか?と思ったが、彼はそういうものに興味がないようだ。

とりあえずオレはオレのせいでさらに大破してしまった彼を博士のところに連れていこうと決めた。

「助けるつもりが逆に助けられるとは……情けないが非常に助かる」
「いや、全然。ほんと感謝してます。ていうか重っ!」

恐る恐る壊れた胴体を持ち上げようと試みたが、なんだこれ重すぎだろ。サイボーグだから当たり前か。いや、たとえ生身の人間でも脱力した大の男を持ち上げる力なんてオレには無い。

「あ、あの、とりあえず首だけ持って行くっていうのはダメっすかね……?」
「それでも大丈夫だ。博士のところに行けば、替えのパーツはある」
「よかった。じ、じゃあ失礼します」

首だけ抱えて歩くこの状況。なんだかホラーすぎやしませんか。
首だけでもまぁまぁの重さがあるので、抱っこするように抱えるしかないが、これ顔面は外側に向けた方が良いの?それとも内側?
迷ったがお腹のあたりで喋られるのも勘弁なので、周りに見せびらかすように外側に向けるしかない。お巡りさん、頼むから今は出くわさないで。


「そうだ、まだ君の名を聞いていなかったな」
「あ、グンマって言います」
「そうか、グンマ。一つ聞きたいんだが、あれをやったのは君か?」

あれって……?と聞きたいところだが、今のジェノスさんは指を指して示せる状態ではない。だが、彼の視線を追えば何を聞かれているかだいたいわかった。そもそもあんなでっかいもんが視界に入らないほうがおかしい。オレは質問の意図がわかるなり、まさか、と言って笑った。

「あんな巨大なビル、オレが動かせるわけないじゃないですか。突然降ってきたんですよ」
「しかし、それほどピンポイントで飛んでくるものだろうか。もしかして君は本当は怪力で……」
「いやいや、それならジェノスさんを運ぶのにこんな苦労しませんて」
「そうか……」

そうは言ったもののジェノスさんはまだ納得がいってないらしく、しばし黙り込んだ。その微妙な沈黙が気まずい。

「ていうか、怪人もですけどサイボーグに会ったのもびっくりしましたよ、どうなってるんすか」
「ん?俺か?俺の話を聞いてくれるのか?」

何か話題を、と思ってオレの振った話が、どうやら悪かったらしい。そこから博士の研究所に着くまで延々と長い話を聞かされ、ようやくたどり着いたころにはオレの目は死んでいた。

頼むから簡潔にまとめてくれ。できたら20字以内で。

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