- ナノ -

■ 誕生日を聞いたらSS(イルミ/シリアス)

「そういや、イルミの誕生日っていつなの?」

何気なく発したその質問には、他意も、ましてや悪意なんてものもなかった。

ただ、そのときちょうど私は占いに嵌っていて、この無表情な男の未来をお手軽に調べてやろうと思っただけである。その証拠に私の手にあるのは本屋で買ったごく普通の占いの本で、わかる未来もごくごく瑣末なもの。
イルミは本のタイトルに視線を走らせ、どうでもよさそうにため息をついた。

「7月7日」
「えーと7月は……って、それキルアのじゃん」

一瞬騙されてページを捲りそうになるが、そんなキリのいい数字を忘れるはずがない。そもそもイルミは家族にだけ優しいので、毎年キルアのプレゼントを買うのにつき合わされている。
流星街出身ならいざ知らず、両親も家もはっきりしていてなおかつ長男なイルミには、ちゃんと誕生日があるはずなのだ。

「覚えてない、興味ないはナシね。別に祝うつもりで聞いてるんじゃないんだから」
「だから7月7日だってば」
「……うそ、じゃあ兄弟で同じなの?」

もちろん絶対無いとは言えないが、にわかには信じられない。目を見張って驚く私に、イルミはいつもの淡々とした口調で答えた。

「12年前の7月7日。それが『オレ』の生まれた日だよ」

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