- ナノ -

■ ◆Spin on the chair

あなたは安楽椅子探偵、というものを知っているだろうか。
それはミステリの分野で用いられる呼称で、部屋から出ることなく、あるいは現場に赴くことなく事件を推理してしまう探偵のことだ。
しかし実際のところ、この定義の上で探偵は必ずしも安楽椅子に腰かけていなければならないというわけではない。寝転んでいてもいいし、なんならゲームをしていたっていい。要は自分で現場を調べたりせずに、人から聞いた限られた情報だけで事件を推理すれば安楽椅子探偵の大枠に含まれるだろう。だからこうした作品の中には、探偵が事件解決にそこまで心血を注いでいなかったり、あくまで推測だからと自論を述べるにとどまる話も多い。

それでは、あなたは安楽椅子泥棒と聞いて、どのようなものを思い浮かべるだろうか。字面だけ追えばまるで安楽椅子ばかりを狙う偏執狂の泥棒のようだが、ここでさっきの探偵の話を思い出してほしい。

そう、ナマエは安楽椅子泥棒。
現場に赴くことなく、お目当てのものを手に入れてしまう泥棒なのだ。


「また会ったな」

行きつけの古物商からの帰りに声をかけられて振り返ると、そこには見知った顔の男が立っていた。確か、名前はクロロ=ルシルフルと言ったか。彼とはこの前、ナマエが盗品を持ち込んだブラックマーケットで出会ったのがきっかけで、思いがけず読書の話で意気投合したのだ。
彼は見た目には普通の、いや普通以上の好青年に見える男だったが、話を聞く限り古書を目当てに裏ルートにまで出没しているらしい。売り手にしろ、買い手にしろ、あそこへたどり着くような人間は後ろ暗い事をしているのは間違いないので、ナマエは警戒心と親しみをちょうど半分ずつ抱きながら、表面上は笑顔を浮かべた。

「あぁ、クロロもここ利用してたんだね。もしかして、ノナルド=ロックス作“小説の十戒”の初版本が流れてくる噂を聞きつけて?」
「あぁ、それはさっきもう手に入れたよ」
「相変わらず早いなぁ」
「まぁな。ナマエのお目当ては?」

クロロは本が入っているらしい紙袋を掲げて見せると、こちらが手ぶらなのを見て少し首を傾げた。ナマエは少し迷ったが、まぁ別に隠し立てするようなことでもないかと思いなおす。「私は売ってきたとこなんだ」盗品を扱う店に来るような男が、その盗品を持ってくる泥棒に嫌悪感を示しはしないだろう。ナマエの予想通り、クロロはそれを聞いてもそうか、と言っただけだった。

「だったらちょうどいい。これから少し付き合ってくれないか?」
「いいけど、まだ飲むには少し早い時間じゃない?」
「酒はな。だが、コーヒーなら昼下がりにはうってつけだろう」
「わかった、いいよ」

きっと彼は、手に入れた戦利品のことを語りたくて仕方がないのだろう。コレクターは常に、珍しく貴重なアイテムだけでなく、その収集成果を自慢できる理解者をも求めているという。ナマエは基本的にお宝そのものにはさほど興味がなく、泥棒はあくまで手軽に金を稼ぐ手段としか思っていなかったが、これでも一応昔から本を読むのは好きだった。

「ナマエは主に何を専門にしてるんだ?」
「これといって特にないよ。お金になるものならなんでも」
「そうか。俺も実は古書以外にも目がなくてね。下手をすればターゲットが被るかもしれないな」
「……ん?被る?っていうことは……」

手ごろな喫茶店を探しつつの会話なので具体的な単語は出せないが、彼は同業者だったのか。それならば正直な話、ナマエにとって非常に都合がいい。「あぁ。この店で良いか?」クロロはなんでもないような顔をして頷き、一件のレトロな喫茶店の前で立ち止まった。

「うん、なんでも」

これは俄然、やる気が出てきた。彼の本の話につき合うのも面白そうだが、同業ならばいいカモになるかもしれない。店内に入ってクロロはブレンドコーヒーを、ナマエはコーヒーフロートを注文した。少しクロロが呆れたような顔をしていたが、この際そんなことはどうでもいい。注文したものがテーブルに運ばれてくるなり、ナマエはそれにしても嬉しいなぁ、と自分から話題を切り出した。

「クロロが同業者だなんて思わなかったよ」
「出入りするところを考えれば、そう驚くことでもないと思うが」
「だって、見た目がいかにも好青年って感じなんだもん」
「それを言うならナマエだって、とてもそんな風には見えない」

クロロはそう言って柔らかな笑みを浮かべると、カップに口をつける。やっぱり、その姿はどこからどう見ても爽やかな青年にしか見えなかった。ワイシャツ越しに窺える身体は鍛えているようではあるものの、それでも細身で武闘派というよりは頭脳派なのかもしれない。
それならばそれで、ナマエも”猫被りモード”のスイッチを入れる。なんせ彼とは二回目の出会いだし、多少印象が変わってもそこまで怪しまれるほどでもないだろう。頭脳派の人間相手には、馬鹿な振りをするに限るのだ。そういう意味で、ナマエのコーヒーフロートは、子供っぽくてなかなかよい選択だった。

「でもクロロと仕事被るのとか嫌だなぁ。せっかくこうして仲良くなれたんだし」
「仲良く、か。そのわりには、声をかけたときに警戒されていたように感じたが」
「まぁそりゃ私も後ろ暗い事してるからね。まったく警戒しないってわけにはいかないよ」
「同業ならいいのか」
「うん、親近感ってやつ?」

ナマエはちょうどアイスが溶け始めた部分を器用にストローで吸い、肩をすくめて見せた。確かに親近感は湧いている。しかしそれと利用するしないの話は別だ。「ね、最近狙ってるものってある?私はダン=ヴァイン作の“ハンティントン傑作集”が気になってるんだよね」ごく普通の世間話を装って、まずは条件1を満たすように水を向ける。結果的に難易度がどれほどになるにしろ、ナマエの念能力を発動するためには絶対に条件1は外せない。

――“面倒くさがりな泥棒猫(スィーフキャット)”。

心の中で呟くと、陰で覆った黒猫がテーブルの下に具現化する。
これこそが、ナマエを安楽椅子泥棒たらしめている素晴らしい念能力だ。
目的達成の難易度はeasy、normal、hardの3段階に分かれており、それに伴い制限時間内にクリアする条件も3つの項目を必要とする。easyなら1つ、normalなら2つというような塩梅だ。この難易度については自分の経験から判断しなければならないのが唯一の難点だったが、条件を満たせばナマエは労せずして相手の行動の結果や得た物をそっくりそのまま頂戴することができるのである。
この念能力は面倒くさがりな性格のくせに無欲ではない、というどうしようもない性格のナマエにぴったりの、良く言えば他人の物を盗む泥棒らしい念能力だった。普通の泥棒がお宝を盗むのならば、ナマエはその労力ごと頂こうという話だ。

「そうだな、俺も“ハンティントン傑作集”のことは気になって調べていた。ナマエも興味を持っていたとは嬉しいな。やっぱり気が合うのか」
「でもクロロが狙ってるなら譲るよ。もう計画とか立ててるんでしょ?サヘルタの国文学研究資料館ってセキュリティー厳しいって聞くしさ」
「まぁ、まったく手がないわけでもないだろう」
「お、その言い方は既にあらかた固まってるね?今後の参考までに教えてよ。ああいう機械系のセキュリティー解くのって私苦手なんだよね」

条件1は相手の行動の目的か計画のどちらかを聞くこと。これは難易度easyの最低条件であり、それ以上のnormal、hardに挑むにあたっても必ず必要となる条件だ。ナマエのこれまでの感覚上、難易度設定は得られるものの価値に大きく依存する。価値とはつまり物の金額やそれを得るために必要な労力。ナマエが最も払いたくない2つのものであり、今回のようなお目当てが稀本である場合だと難易度がhardであることは間違いない。
そしてもしも、この難易度の判断ミスや時間切れでの条件不足が起こると、ペナルティーとしてナマエは相手が行った結果、手に入れようとしていた結果を自力で手に入れなければならなくなる。それをしないと恐ろしいことに、何をやっても上手くいかない、という不幸状態が続いてしまうのだ。

「残念だが、俺もそういう機械系は詳しくないんだ。そういうのが得意な仲間がいてね」
「あ、クロロってグループで活動してたんだ?」
「あぁ」
「へぇ、いいなぁ」

ちっ、と内心で舌打ちし、ナマエはアイスクリームをコーヒーの中に全部沈めた。もしかすると本当に機械系は仲間に丸投げなのかもしれないが、具体的な計画については話してくれなかった。しかし、ここで諦めるようなナマエではない。そもそも難易度hardの時点で、満たすべき条件は3つある。そしてその条件というのは1つ目をクリアしてから30分以内に全てこなせばよく、順番自体は問われない。1が駄目なら後回しだ。先に2からやってしまえばいい。

「私も仲間で活動っていうの、考えたことあるんだけどさ。連絡をこまめにとるのとか、きっちり日付を決めて約束ってのがなーんか面倒になっちゃって」

条件2は相手に自分が“面倒くさがりであるエピソード”を話し、呆れさせること。“面倒くさがりな泥棒猫(スィーフキャット)”をかける対象者には、いかにナマエが面倒くさがりであるか“理解”してもらわなければならないのだ。

「実は一回、組んだ相手もいたんだ。そのときは二手に分かれたんだけど、行った博物館のセキュリティーが難しくってさ、途中で全部面倒になってバックレたの」
「それは酷いな」
「うん。もちろん後で無茶苦茶怒られたよ。せめて帰るなら連絡しろって言われたんだけど、もうその連絡すること自体が面倒くさくって」
「呆れた話だ」

この条件2は意外と難しい。というのも、エピソード自体は嘘でもいいのだが、あまりなエピソードだと相手が呆れを通り越してナマエの人間性にドン引きしてしまうからだ。しかしクロロは苦笑しただけで、特にナマエの行動を咎めたり軽蔑するような雰囲気はない。よし、これでおそらく条件2はクリアだ。このクリア判断自体もナマエの経験と感覚に依るものなので、本当に我ながら不自由な念を作ったものだと思う。気に入ってはいるが、実際、使いこなせるようになるまでかなり失敗もしてきた。

「でもさ、そうは言うけど仕方なくない?セキュリティーはおなじみのRSA方式だったんだけど、解読の桁数が400を超えててさ。しかも3分に1回、暗号が書き換えられるから手持ちのPCじゃとてもじゃないけど処理速度が追い付かなくて」
「なるほど、確かにそれは厳しいな」
「ね、そうでしょ?私も後でその組んだ相手に仕方ないじゃん、って言ったんだけど、向こうは仕方なくない!の一点張りでさ。クロロはどう思う?仕方ないじゃんね?」
「そうだな、それは確かに仕方ないかもしれない」

条件3、どんな文脈でもいいので相手に“仕方ない”というフレーズを言わせる。“面倒くさがりな泥棒猫(スィーフキャット)”に“理解”を示してもらった次は、“受け入れてもらう”というわけだ。
しかし我ながらうまい話の運びをしたおかげで、随分とあっさりクリアしてしまった。こみあげてくる嬉しさを押し殺して、さて、と改めて条件1をクリアするべく頭を働かせる。今回こそ順番が前後してしまったものの、本来条件1が1番簡単なはずである。
たとえば、ナマエが過去にクリアしたeasyには食事をしている相手から“満腹感を奪う”というケースがあったが、そのときはただ「なんでそんなにいっぱいの量たべるの?」と聞けばよかっただけである。計画を聞くのは難しくても、目的だったら案外簡単に聞けたりするものだ。

ナマエはもうすっかり“ハンティントン傑作集”を手に入れた気分で、グラスの中を最後まで空にした。“面倒くさがりな泥棒猫(スィーフキャット)”も具現化しており、条件2と3は達成した。となれば後は1の条件がそろった瞬間、ナマエの念は発動する。クロロが仕事に取り掛かるのがいつになるかは知らないが、彼の手に“ハンティントン傑作集”が渡った瞬間、それは彼の目の前から忽然と消え失せ、ナマエのところに転送されてくるのである。クロロが行動したという記憶自体は消えないため、狐につままれたような気持ちにはなるだろうが、まさか少し話をしただけのナマエに手柄を掻っ攫われたとは思うまい。

ナマエは上機嫌で、組んだ手の上に顎を置いた。

「そういや、“小説の十戒”を探したり“ハンティントン傑作集”を狙うなんて、クロロはミステリ好きなの?」
「そうだな、色んな種類の本を読むがミステリはわりと好きなほうだ」
「だったら仕事は半分趣味だね。お金のためっていうよりは……?」
「あぁ」

違う。そこは頷くんじゃなくて趣味のため、って言ってほしいのだ。それで盗む目的が趣味である、というふうに条件が満たせる。惜しいなあと思いつつ、ナマエはまた考える。猫が消えていないのでまだ時間はあるようだが、早くしないと30分なんてあっという間に経ってしまう。

「いいなぁ。私はなんだかんだで仕事はお金のためだもん。クロロはインタビューされてもかっこよく答えられるね。ほら、“あなたは何のためにお仕事をされているのですか?”」

手でマイクを形作って、ふざけた感じでクロロに答えを促す。我ながら苦しい。苦しいが他に何も思いつかない。“面倒くさがりな泥棒猫(スィーフキャット)”は相手の言葉を引き出すのが条件の能力であるため、相手がクロロみたいに寡黙な人間だと非常にやりづらいのだ。けれどもナマエが渾身のフリをしたにも関わらず、クロロは急に真面目な顔つきになった。

「何のため、か……改めて問われると答えがたいな」
「え?」
「動機の言語化か……あまり好きじゃないしな。しかし案外……いや、やはりと言うべきか。自分を掴む鍵はそこにあるか……」
「は?」

なんだ、どうした、なにを言ってるんだ?
突然、自分の世界に入りだした目の前の男に、ナマエは当然のように置いてけぼりを食らってしまう。別にそんな真剣な雰囲気の質問ではなかっただろう。そもそも答えはこれまでのやりとりでほとんど出ていたはずだ。なぜそこで急に悩む?そんな真面目に答えなくていい!

しかしせっかくここまで“猫を被って”頑張ったのだ。今更、もう!なんでよ!と逆上して台無しにしてしまうのは惜しい。なんとか軌道を修正せねばと焦ったナマエは、注意をひきつけるようにぽん、と手を打った。

「そ、そんなに難しく考えなくてもいいんじゃないかな。えーと、ほら、クロロって本好きなんでしょ?読書繋がりで私に声をかけてくれたくらいなんだし」
「まぁ、ナマエが古書に詳しかった、というのは理由の一つではあるな」
「う、うん、それは私に声をかけた理由で、そうじゃなくて仕事のほう……」
「だが実際、ナマエ程度の詳しさならば他にも同じ趣味の人間は探せばいると思う」
「は、はぁ……」

ダメだ、この人。ちっとも話を聞いてくれない。というか、完全に自分の世界から帰ってきていない。困惑するナマエを放置して、クロロは先ほどまでの寡黙さが嘘みたいにぺらぺらと饒舌に話し出した。

「ブラックマーケットでナマエを一目見て、何か惹かれるものがあったんだ。話をして趣味が合うとわかったのは、時系列的には後の話になる。だから、読書繋がりでナマエに声をかけたというのは少々語弊があるな。
……だが、それでは目を惹かれた理由が曖昧なままだ。動機の言語化はやはり難しい、なぜ、俺はナマエに興味を抱いたんだろうな?」
「知らないよ!!!」

思わず素の自分で突っ込んでしまったが、クロロは全く意に介した様子はない。実はずっとこの問題が気になっていたんです、と言わんばかりに、まだまだ動機の掘り下げをやめる気がないようだ。

「ブラックマーケットで出会って以来、お前のことが頭から離れなかった。最初は何かの念をかけられたのかと思ったが、特に不審なオーラは見当たらなかったしな。シャルに尋ねてみても“とりあえず口説き落とせばわかる”の一点張りで埒が明かないから、今日はナマエを待ち伏せしていたんだ」
「はい?」
「だから、ナマエに声をかけた理由は本の話がしたかったからじゃない。ナマエを口説こうと思ったんだ」

クロロがそういった瞬間、ナマエの足元で“面倒くさがりな泥棒猫(スィーフキャット)”がにゃあ、と鳴いた。これは条件が揃ったか時間切れかの合図だが、前者である可能性は極めて低い。
ナマエは“ハンティントン傑作集”を盗る動機を聞きたかった。それなのに、クロロはナマエに声をかけた動機を答えた。判定は時間切れ。この場合ナマエはペナルティーとして、クロロがやろうとしていたことを自力でやらねばならなくなるのだが……。

「待って。今、クロロなんて言った?」
「ナマエを口説こうとした」
「は?」
「だから、ナマエを口説こうとしたと言っている。ナマエの好きそうな本の話題で、喫茶店に誘って」
「そ、その場合、私はどうすれば……」

自分自身を口説くなど不可能。となればこの行動は“相手を口説こうとした”と抽象化するしかないだろう。つまり、ナマエが何をやっても上手くいかない不幸状態から解放されるためには――

「クロロを、口説く……?」
「何を言っているんだ。口説くのは俺だ」
「あぁ、もうちょっと黙って」

猫を被る余裕なんてない。とんでもないことになってしまった。動揺のあまり、飲み終えたグラスに手が当たって、派手な音を立てて転がしてしまう。
ああ、もう、本当にうまくいかない。

「あのね、クロロ、落ち着いて聞いてほしいの」
「俺はずっと落ち着いているが」
「いいから聞いて。これから私があなたを口説くけど、それは本心じゃない。でも、落ちてほしい」
「……難しい注文だな。さっぱり意味がわからない」
「お願いだからもう考えるのはやめて!」

これがもしも“ハンティントン傑作集”を盗る行動に関しての発動失敗だったなら、ナマエはここまで困りはしなかった。というのも、ナマエはただ面倒くさがりなだけで、無能なわけでない。だからこそ、ここまで泥棒としてそれなりにやってこれた部分もあるし、そもそもこの念能力の発動条件自体が面倒くさがりにはなかなかの手間である。それでもナマエが安楽椅子泥棒に拘っているのは、ひとえに趣味だからだ。結局本が好きなのも、とりわけミステリが好きなのもナマエ自身のことで、昔読んだ安楽椅子探偵の物語に憧れてこういう念を作ったに過ぎない。

「とにかく!私はあなたを口説かなきゃならなくなったから、覚悟しておいて!」
「……ふむ、つまり相互に口説き合うというわけか。面白い」
「面白くないって!!」

とうとう席から立ち上がってしまったナマエは、安楽椅子泥棒失格だ。そしてまたもやその弾みで、テーブルの上のメニュー表をばらばらと床に落としてしまう。

「ああ、もう!」

ナマエはこんな男に関わるんじゃなかった、と後悔したが、実際、この後悔はまだまだ序の口でしかない。
クロロ=ルシルフルがそこらのちんけな同業者などではなく、あの幻影旅団の団長であると知った時こそが、ナマエの“何をやっても上手くいかない人生”の真の幕開けなのだから――。


MARKER MAKER様に提出
※念能力のideaは
uさんから頂いております


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