■ 46.事故
「で、電話出たほうが「出なくていい
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!」
運転中には無理だろうと気を遣ってみると、思いのほか強く叱られアニスは首をすくめる。一体何が起こっているんだろう。
鳴り続ける携帯に不安はますます煽られ、兄は珍しく舌打ちをする。
混雑を避け、なるべく市街地から離れようとしているらしかったが「頼むから伏せてて
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」また怒られた。
「ねぇ、ちょっ、前!!」
伏せろと言われたのだが、全く状況が掴めないというのも怖い話。山道急カーブを猛スピードで曲がりきろうとした瞬間、対向の車が目の前にまで迫って、アニスは思わず悲鳴を上げた。
「わぁああ!!」
思わずぎゅっ、と目をつぶれば、ぐいんと体が引っ張られる感覚がして激しい衝撃音。
恐る恐る目を開ければ乗っていた車は見事に大破し、アニスはヒソカに抱えられた状況でガードレール外の崖に宙づりの状態だった。
「ひっ……」
「大丈夫、ボクのバンジーガムはこの程度じゃちぎれ無いから
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」
いくよ、と声をかけられ今度はゴムの反動で車道へと戻る。自分達が乗っていた車は酷く大破していたが相手も相当だろう。人死にが出たのではないかと震えていたら「はぁ、やっと止まってくれた」聞いたことのある声がしてアニスはびっくりしてしまった。
「イ、イルミさん!」
確かに良く見れば相手の車はかなりの高級車。となるとアレに乗っていたのは彼ということになるが口ぶりからしてわざと当てたのだろう。
彼ならあのくらいの事故で怪我など負うわけなかったが、一体そうまでしてなぜ追いかけてくる必要があるのか。
兄はというとものの見事にしかめつらになった。
「や、久しぶり、アニス」
「危ないじゃないかイルミ
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」
「お前が逃げなきゃこんなことしない。ほんと、先回りしておいてよかったよ」
「お兄ちゃんが逃げてたのって、イルミさんから!?なんで?まさか暗殺依頼来てるの?」
もしそうなら大変だ、とアニスが青くなっていると、後ろで黒煙があがる中イルミは涼しい顔で首をふる。
「違うよ、オレが用あるのはアニスの方」
それはそれでアニスはすうっと血の気が引くのを感じた。
「な、なんで……誰が……」
一応ゾルディックを差し向けられるほどには恨まれるようなことはしていないつもりなのに。
「心配しないで、ボクが絶対にアニスのこと守るからね
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」
庇うように兄が前に出るが、アニスは余計に混乱するばかりである。自分のせいで戦闘が起こるのも避けたいし、かといって死ぬのも怖い。
すっかり固まってしまったアニスに対し、イルミは一歩一歩こちらに近づいてきた。
「アニス、」
「は、はい……!」ついつい癖で返事をしてしまうが今は一応敵なのだ。しかしそれにしても流石ゾルディック。プライベートで多少知り合いでも、依頼が来たらお構いなしなのか。
けれどもイルミは針を取り出すわけでもなく、ましてや不穏なオーラを出すわけでもなく、至極淡々とこう言った。
「オレと結婚してよ」
「…………は、い?」
唐突すぎる申し出に間抜けな声が洩れたが相変わらず目の前のイルミの表情は変わらない。
自分の聞き間違い?それとも冗談?だけどあの真顔で?
目の前で兄のオーラが膨れ上がるのを感じ、何か、何か言わなきゃ……と焦ったアニスはとりあえず勢いよく頭を下げた。
「ご、ごめんなさい!無理です!」
ガソリンが漏れて引火したのか、車がボンッ、と爆発した。
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