■ 28.妹の様子
二人が出かけたあと、よっぽど自分もパーティーについていこうかと思った。
けれども話を聞く限りそんな危なそうな仕事でもなかったし、何より干渉しすぎて嫌われるのも避けたい。
アニスにとっては好きな相手と二人きりになれるチャンスなのだ。イルミの方だって流石に仕事中にアニスに変なことはしないだろう。
そう思ってもやもやしつつも、ヒソカはアニスの家で二人の帰りを待っていた。
「遅かったね
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」
そして日付が変わるという辺りでようやく車の音。玄関まで迎えに出ればそこにイルミの姿はなくアニスだけ。「おかえり
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」彼女は小さく頷くと返事もせずに廊下の奥へと消える。別に照れているわけでも煩わしく思っているわけでも無さそうだった。
「アニス……
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?」
彼女に何かあったのは一目瞭然。まさか仕事で失敗でもしたのか?
でもそれならばそれでイルミが何か文句を言いそうなもの。せめて乱暴に寝室のドアが閉められたのならば理由も問えようが、控え目に、それでいて固く閉ざされたドアの前でヒソカは立ち尽くすしかなかった。
「アニス……何かあったのかい
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?」
返って来ない返事に不安ばかりが募る。仕方ない、アニスから聞き出せないのなら……。
静かに外へ出て携帯を取り出す。もちろんかける相手は先程までアニスと一緒にいたはずのイルミ。
「もしもし?」
電話に出たイルミの声はいつもと何も変わらなくて、そのことに何故か苛立った。
「あのさ、アニスと何かあった
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?」
「オレは何もしてないけど」
「帰ってきてから様子がおかしいんだよね
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」
「……ま、落ちこんでるんじゃない?」
「何に
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?」落ちこんでいるのは言われなくてもわかっているのだ。こっちはその原因が知りたくてこうやってイルミに電話をかけて聞いている。
思わず声に苛立ちを含ませれば、電話の向こうの彼は逆に開き直ったようだった。
「オレがアニスを振ったから」
「告白されたの
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?」
「そ。別に仕方ないだろ。
だいたいお前だって、オレに何度も手を出すなって言ってたじゃないか」
「それは…」そうだけど。
確かにイルミがアニスの気持ちを受け止めなかったとしても、それは彼が悪いわけではない。続ける言葉を失ってヒソカは黙り込んだ。黙り込んだ隙にイルミはじゃ、と電話を切った。
「これで、よかったのかもしれないね……
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」
遅かれ早かれこうなっていた。アニスはまだ若いし、別に弄ばれたわけでもなんでもない。
傷の浅いうちに済んでよかったのだ。もっと別にいい男だっていくらでもいるだろう。
とにかく今日はそっとしておこう。そして彼女が自分で言わない限りは、何も知らないフリをしていよう。
道化の真似は今までだって何度もやってきた。
そして道化はただ彼女に笑っていて欲しいだけなのだ。
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