■ 23.回り回って
「あのさ、ギブアンドテイク。この意味わかる?」
翌朝、何故かベッドで寝ていた私はそのことを疑問に思うまもなく非常に辛辣な言葉を叩きつけられた。「…わかる、わかるけど……」いくらなんでも厳しすぎやしないか。
「イルミ、正気かい?アニスは病み上がりなんだよ
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」
「お前の口から正気か、なんて言葉聞きたくないね。
だいたい毒は病気じゃないよ」
「それはイルミにとって、だろ
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」
正直、この二人は前からの知り合いなようだが、会う度に口論しているような気がする。それがデフォルトなのか、喧嘩するほど仲がいいというべきなのか、良く分からないが巻き込まないで欲しい。
とにかく私の切なる願いはもう少し寝ていたい、それだけだった。
「色々面倒かけられたしさ、付き合ってくれてもよくない?」
「駄目
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」
「ヒソカには聞いてない」
イルミはつん、とすました様子でヒソカを睨むと、その大きな瞳でこちらを見た。「嫌だって、言わないよね?」
ちなみにこの付き合って、というのは別に告白されているわけではない。文字通り、ただの付き添い。彼の仕事のお手伝いだ。それも私なんかに暗殺が務まるはずもないから、イルミとパーティーに潜入するだけ。
体調さえ万全だったら、渋る理由は全くもってなかっただろう。
「でもこんな状態だと、また迷惑かけそうだし……」
「酒の席だし、吐いても説明はつく」
「吐いてまで私が行かなきゃならないものなの…?」
私だって本音を言えばちょっとでもイルミと一緒にいたい。しかも彼から誘ってくれたなんて願ってもないチャンス。
だけどこれは仕事なのだ。軽い気持ちで参加してそれでもし何か失態なんて犯したら、イルミを危険に晒すことにもなるしゾルディックの名前にも傷がつく。
こういう時、素直に喜ぶのではなく、色んなことを考えてしまう自分の生真面目な性格を恨んだ。
「イルミなら適当に向こうで女を捕まえればいいだろう
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?もしくは女の執事とか
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」
「そういう女はベタベタしてくるし、いざ仕事って時は撒かなきゃいけないから面倒。
執事は確かに優秀だけど、固すぎて怪しいんだよね。明らかにオレに気をつかいまくりで不自然だよ」
おそらくそれは気をつかっているのではなく怯えているのも含まれると思うが……。
ゾルディックの屋敷に行った際に見た執事達は、確かに素晴らしく統率が取れていて気がきいていた。
けれどもイルミに対する時はただ忠実なだけでなく、どことなく緊張の色も伺える。
弟たちもイルミのことを優しくない、と口をそろえていたし彼にはやはり怖い一面があるのだろう。
「もし来ないって言うんなら」「……わかった、行く」
「ちょっと、アニス
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」
驚き、それからすぐに顔をしかめるヒソカに対して
イルミはあーよかった、と相変わらず抑揚のない声で言う。「アニスってハニートラップとかやったことあるんでしょ。この前ドレス買ったし、パーティーも慣れてるよね」
「え……あ……」
慣れてる奴と仕事した方がやりやすい、と言われてそういえば前にそんな嘘をついたな、と思い出す。あの時ヒソカに買ってもらったドレスは、着ないままにクローゼットに仕舞われていた。
「じゃ、今日の夜また迎えに来るからよろしくね」
「え……う、うん」
男を騙すのは出来たとしても、パーティーになんて行ったことがない。
どうしよう、と横目でヒソカを伺えば、腕組みをして怒ったような呆れたような表情をしていた。
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