■ 14.代役
「イルミも素直じゃないねぇ…というか、気づいてないのかな
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」
いくら経っても帰ってこないエレナに、イルミがしびれを切らすのも時間の問題だった。
だが自分では様子を見に行けない。見たら絶対に声をかけて、また嫌味の一つでも言ってしまうだろう。
この件を知るのは弟ミルキとゴトーだが、二人ではエレナに顔が割れているためこっそりと言うわけにもいかない。
そうなると後はもちろん消去法で、胡散臭い自称奇術師に白羽の矢が立った。
─様子をみてくればいいのかい
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?
─そ。ホントに何やってんだろ。いい加減諦めればいいのに。
─イルミが迎えに行ってあげれば
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?
─なんでオレが。
イルミは一瞬ムッとした雰囲気をまとったが、それを言うならなんでボクが、だ。
確かにイルミから話は聞いて知っているけれど、半年前に結婚したというこの奥さんにヒソカは一度たりとも会わせてもらったことがない。
それというのもイルミが必要なことと弟の自慢と愚痴しか話さないからで、結婚した事実自体知ったのがわりと最近だったからだ。
─ま、ちょっとくらい怖い目に合わせてやってもいいよ。帰りたくなるように仕向けて。
─難しい注文だねぇ
─手を出したら殺すから
─はいはい
あのイルミが半年も手元に置いてたんだ。
いくら母さんが〜なんて言い訳しようと、彼女のことを気に入っているのは間違いない。
ただ問題はイルミ自身が自分の感情に無自覚なことと、それを悟ってあげられるほど奥さんが大人じゃないこと。
あれでイルミもまた大人げないところがあるし、性格の不一致というよりすれ違いと言った方が正しいだろう。まったく世話の焼ける…。
ちなみに奥さん、エレナの方は本当に離婚が解消されているなんて知らないらしくて、イルミには言わなかったけどもう新しい男がいたっておかしくない。
そうなると修羅場だなぁ、なんて考えて、そうだと面白いのになぁと舌なめずりした。
だがそんなイルミが聞いたら血相変えそうな事態を思い描きつつ、彼女が宿泊しているはずのホテルに向かっていると、突然どこからともなく歌声が聞こえてくる。
その声は非常に澄み切っていて、音楽に特別興味のないヒソカでも少し気になったくらいだ。かすかな音を頼りにその方向へ進んでいくとホテルのすぐ傍の駅前に小さな広場があり、声の主はそこで歌っているらしかった。
「…まさかね
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」声質はいいと聞いていたけれど。
オーディションに受からないから、まさかストリートから目指すつもりなのか?
これは念のため確認せねばならないと、集まっている人をかき分け前に進んだ。
「…なるほど
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」
結局、歌っていたのは10代後半くらいの少女が一人。小さなラジカセとマイクと幸せそうな笑顔だけで歌っていた。
そして彼女の歌は、なぜだかずっと聞いていたくなるような不思議な魅力を持っていた。
周りで聞いている者の表情はみんな明るい。
容姿も事前に聞いていたものと一致するし、これはイルミにとって大誤算だろう。
「うーん、この分だと放っておくと近いうちにスカウトされそうだねぇ…
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」
さて。
仮に彼女に才能があっても潰すと言っていたキミだけど。
キミはこんなに幸せそうな彼女の表情を見たことあるのかい?
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