■ 9.奇術師の勘
試合は当然ウルの圧勝。審判の合図とほぼ同時に決した勝負のおかげでウルは晴れて200階クラスの闘士へと成り上がる。
ヒソカとの試合は1週間後。それまでに何としてでも戦いの感覚を取り戻しておきたかった。
「やぁ
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」
「…なんなんですか。私、修業中なんですけど」
「見ちゃダメかい
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?」
「別に構いませんが」
修業と言ったって一人で錬と纏をやるくらいのもの。強化系は修業に関して正解なんてないし、派手なものだと周囲に甚大な被害が出てしまうからだ。
結局、天空闘技場近くの森の中で精神統一していることが、ウルの今できる最善だった。
「結構いいオーラしてるよね、キミ
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」
「…」
「この前は笑って悪かったよ
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蜘蛛を聞き込みで探してるのにびっくりしただけなんだ
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」
「…」
見ててもいいが、話しかけられるのはわりと迷惑だな。
精神統一になりゃしなかったが、謝っている人間を無視するのも気が引ける。
ウルはちらりと横目でヒソカを見た。
「別に怒ってませんよ」
「そう。それは嬉しいなぁ
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」
ヒソカは木の枝に器用に腰掛けると、そのまま何処からともなく取り出したトランプをくるくると指先で弄び始めた。
ヒソカと戦うことになってから、もちろん私だって彼のことを調べている。攻撃でもされるのかと一瞬身構えたが、彼はただ遊んでいるだけのようだった。
「……そういや、ヒソカさんも殺しの仕事をしてるんですか?」
200階以上は賞金が発生しないから、何かほかに仕事をしているのだろう。殺し屋が友達だとか言っていたし、好戦的な雰囲気から十分に考えられる。
特に気になったわけではなかったが、無言の気まずさに耐えかねて口を開いた。
本当にこの人は何しに来たんだか。
「うーん、まぁそんな感じかな
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でもキミみたいに家業ってわけじゃないから
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」
「家業でもないのに、人殺しなんて物好きですね」
「キミも家業が嫌な子なのかい
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?」
「……嫌、ではないですけど」
当たり前みたいに育ってきたから、今更人殺しに抵抗なんてない。それどころか小さい時からずっとイルミのお嫁さんになりたかったのだから、家業が嫌なわけでもなかった。
ヒソカの発したキミ『も』という言葉に引っかからないでもなかったが、普通は暗殺一家に産まれたことを嫌がっても不思議ではないのだろう。
ウルの歯切れの悪い答えに、ヒソカはにやにやと笑った。
「そうだったね、ウルは結婚が嫌で家出してきたんだった
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相手がよっぽど無理なのかい
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?」
「いえ、私には勿体無いくらいですが……」
良く考えたら、なんで私はこんなにも自分の事をペラペラ喋っているんだろう。確かに嘘をついたり誤魔化したりするのは苦手だが、あまり家庭のことは話さないに越したことはない。
けれども家出して以来人とまともに会話していなかったし、誰かにこの胸の鬱屈した想いを聞いて欲しかったりもした。
「他に好きな人がいるんです。だからいくら破格の条件でも結婚したくないんです」
「でもキミ、ゾルディックなんて普通は皆が行きたがるんじゃないかい
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?」
「そりゃそうですけど…
え?私ゾルディックって言いました?」
纏を解いてぽかんとヒソカのほうを見る。
彼は肩を揺らして笑っていて、すぐに引っ掛けられたのだとわかった。
「ヒソカさん、酷いです」
「強化系の子はやっぱり可愛いねぇ
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」
「強化ってなんで知ってるんですか…あ、」
これも引っ掛けか。
あぁ、もうこういうのは苦手なんだけどな。
何故か良く分からない系統ごとの性格を説明され、挙句の果てにキミとボクは相性がいいよ
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だなんて。
操作系と相性がいいのはどの系統なのかな、なんてふと頭に浮かんでウルは悲しくなった。
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