■ クラピカp.21
お題『本よりも好きになってた』
情報を収集するのに、ネットは非常に有効な手段だ。だが古い文献には古い文献にしかない情報もある。
私は図書館の誰も訪れないような一角で、好みの本を探すのが好きだった。
と、いうのはもはや過去の理由で。
今は言葉を交わしたこともない彼女が借りた本を、追いかけるように借りている。
活字は二の次。
※
お題『これだから頭のいい人は』
「この好意が恋愛のそれか私にはわからない」
そう言われてショックだった。
「私はクラピカのこと好きだよ」
「…それはその、友人としてではなくか?」
「うん」
「どうしてそう言い切れるんだ、お前と言うやつは…」
でも、耳まで真っ赤になったのは私のことを意識してくれてるんだよね。
これだから頭のいい人は。
※
お題『ほかのものならいまはいらない』
ヨークシンでの一件後、私の当面の目標は同胞の瞳を集めることになった。
だが蜘蛛への復讐も忘れたわけではない。
これが終わらない限り、私は幸せになってはいけないのだ。
だから…
気づけば目で追ってしまう彼女に背を向けて。
好きです、と伝える代わりに自分を欺いた。
ほかのものならいまはいらない。
※
お題『緑色の血』
人でなしの血は緑色だ。
今はもう嘘だと知っているけど、幼い頃は本気で信じていた。
だけど本当に緑色だったらよかったのに、と思わざるを得ない。
旅団員を殺したとき、彼から流れた血が緑だったら。
「私の血も緑色かもしれないな」
いっそその方が救われる。
※
お題『君に告ぐ』
待っててくれとは言わない。
私の復讐がいつ終わるかもわからないし、その時私が無事かどうかもわからない。
君と一緒にいられないかもしれない。君にたくさん迷惑をかけるかもしれない。
それでも伝えるだけは伝えたかったんだ。
こんな私でも人並みに恋だってするのだよ。
ナナコ、私は君が好きだ。
きっと最初で最後の恋だろう。
※
お題『たまには』
たまにはデートでもしないと退屈だろうと思って、色々下調べしてから彼女を誘った。
「え、ほんと?」こんなことくらいで喜んでくれるなら、もっと誘えばよかったな。
「たまにはクラピカも男の子らしいことするんだね」
悪気はないのだろうが、今のは精神的にくるものがあった。
私は男だ。
※
お題『見えないもの』
「見えないものって、信じる?」
「非科学的なものはあまり信じていないな」
ナナコの質問に、私はいつも通り答えた。
「そう…じゃあ、」何故か悲しそうに微笑む彼女に、思わず見とれる。「好きって言っても、駄目だね」「それは…」
見えてないのは自分だった。私は彼女の手を握る。
「非科学的だが、信じよう」
※
お題『重すぎる』
蜘蛛のこと、同胞の瞳のこと。
私一人では重すぎる問題だが、かと言って誰かとこの重荷を共有できるわけもない。
これは私自身の問題なのだ。
「確かに私はクラピカの荷物を代わりには持ってあげられない。だけど、」
─重すぎる荷物を背負ったクラピカを、支えてあげることは出切るよ。
考え方一つだな、と苦笑した。
君に少し救われた。
※
お題『いつの日か』
そんな約束をしたって、守れるかどうかわからないのに。
それでも私は固く交わした。またいつの日か会いましょう、と。
「元気でね、無理しないでね」
「ナナコこそ」
この別れが一時的なものだと思いたい。
次に会った時は君に想いを伝えるから。
※
お題『繊細』
神経質と言われると腹が立つが、繊細と言われれば少しマシな気がする。
物は言いようだなんてよく言ったものだ。
「今度からは神経質と言わず、繊細と言うようにして欲しい」
「そういう細かいことにこだわるのが駄目なのよ」
「…」
駄目ということはないだろう。駄目ということは。
※
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