- ナノ -

■ クラピカp.21

お題『本よりも好きになってた』

情報を収集するのに、ネットは非常に有効な手段だ。だが古い文献には古い文献にしかない情報もある。

私は図書館の誰も訪れないような一角で、好みの本を探すのが好きだった。

と、いうのはもはや過去の理由で。

今は言葉を交わしたこともない彼女が借りた本を、追いかけるように借りている。
活字は二の次。



お題『これだから頭のいい人は』


「この好意が恋愛のそれか私にはわからない」

そう言われてショックだった。

「私はクラピカのこと好きだよ」
「…それはその、友人としてではなくか?」
「うん」
「どうしてそう言い切れるんだ、お前と言うやつは…」

でも、耳まで真っ赤になったのは私のことを意識してくれてるんだよね。

これだから頭のいい人は。




お題『ほかのものならいまはいらない』

ヨークシンでの一件後、私の当面の目標は同胞の瞳を集めることになった。
だが蜘蛛への復讐も忘れたわけではない。
これが終わらない限り、私は幸せになってはいけないのだ。

だから…

気づけば目で追ってしまう彼女に背を向けて。
好きです、と伝える代わりに自分を欺いた。

ほかのものならいまはいらない。




お題『緑色の血』

人でなしの血は緑色だ。
今はもう嘘だと知っているけど、幼い頃は本気で信じていた。

だけど本当に緑色だったらよかったのに、と思わざるを得ない。
旅団員を殺したとき、彼から流れた血が緑だったら。

「私の血も緑色かもしれないな」

いっそその方が救われる。



お題『君に告ぐ』

待っててくれとは言わない。
私の復讐がいつ終わるかもわからないし、その時私が無事かどうかもわからない。
君と一緒にいられないかもしれない。君にたくさん迷惑をかけるかもしれない。

それでも伝えるだけは伝えたかったんだ。
こんな私でも人並みに恋だってするのだよ。

ナナコ、私は君が好きだ。
きっと最初で最後の恋だろう。



お題『たまには』

たまにはデートでもしないと退屈だろうと思って、色々下調べしてから彼女を誘った。

「え、ほんと?」こんなことくらいで喜んでくれるなら、もっと誘えばよかったな。

「たまにはクラピカも男の子らしいことするんだね」

悪気はないのだろうが、今のは精神的にくるものがあった。
私は男だ。



お題『見えないもの』

「見えないものって、信じる?」
「非科学的なものはあまり信じていないな」

ナナコの質問に、私はいつも通り答えた。

「そう…じゃあ、」何故か悲しそうに微笑む彼女に、思わず見とれる。「好きって言っても、駄目だね」「それは…」

見えてないのは自分だった。私は彼女の手を握る。

「非科学的だが、信じよう」



お題『重すぎる』

蜘蛛のこと、同胞の瞳のこと。

私一人では重すぎる問題だが、かと言って誰かとこの重荷を共有できるわけもない。
これは私自身の問題なのだ。

「確かに私はクラピカの荷物を代わりには持ってあげられない。だけど、」

─重すぎる荷物を背負ったクラピカを、支えてあげることは出切るよ。

考え方一つだな、と苦笑した。
君に少し救われた。



お題『いつの日か』

そんな約束をしたって、守れるかどうかわからないのに。
それでも私は固く交わした。またいつの日か会いましょう、と。

「元気でね、無理しないでね」
「ナナコこそ」

この別れが一時的なものだと思いたい。
次に会った時は君に想いを伝えるから。



お題『繊細』

神経質と言われると腹が立つが、繊細と言われれば少しマシな気がする。
物は言いようだなんてよく言ったものだ。

「今度からは神経質と言わず、繊細と言うようにして欲しい」
「そういう細かいことにこだわるのが駄目なのよ」
「…」

駄目ということはないだろう。駄目ということは。




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