■ SSまとめC
お題『彼女の憂鬱』
いくらSって言っても程がある。
「またフェイにいじめられたの?」「もう別れようかな」
「はは、ナナコ殺されるよ」「だよねー」
シャルの言う通り、だってあれでも彼なりに私のことが大好きみたいだから。
「いっそMになりたいよ」「今日も大変そうだね」
憂鬱になってきた。
※
お題『再会』
できることなら会いたくなかった。だってもう、次は生きて帰れないと思ったから。
「お前よほどツイてないらしいね」
目の前の男は私とは対照的に嬉しそう。細い目がきゅ、とさらに細くなった。
「ま、ワタシはツイてるね」
もしかするとこの再会は仕組まれたものだったかもしれない。
※
お題『攻撃は最大の防御なり』
「いい加減にするね!」
防御が苦手な私のために、フェイが訓練につきあってくれた…のだったが。
「なんでお前反撃してくるか」「いや、ついつい癖で」
攻撃は最大の防御って言うじゃんか、と言ったら耳慣れぬ言葉が聞こえてきた。
『クソが…』翻訳するとおそらくこんな感じ。
もちろん私は一目散に逃げた。
※
お題『time after time』
「なんでお前死なないか?」「だってそういう念なんだもん」
もちろん不死身というわけではない。ただ、死ぬのに一定の条件がいるだけだ。
そしてそれが満たされない内は私は何度だって生を繰り返す。
「ちょうどいいね、いい玩具見つかたよ」痛みがないわけではないのが辛いなあ。
繰り返される拷問に私は自然、意識を飛ばした。
※
お題『コーヒーと角砂糖と』
コーヒーを飲んでいたら、フェイが気味の悪いものでも見るような目でこちらを見てきた。
「なに?」「…砂糖、何個目か?」
「10個くらいかな」
熱々のコーヒーでも、溶かしきれずざらざらと底に溜まる。私は甘いものが嫌いだった。
「自分への罰なんだよ。そういう気分の時ってない?」
私がそういうと彼は黙って私のコーヒーを捨てた。「ないね」
※
お題『八つ当たりですか?』
いきなり殴られた。それも後ろから。びっくりして振り返るとフェイがいて、邪魔ね、とだけ言われた。
「フェイ、仕方ないだろ。たまには留守番しろって」
「わかたよ、しつこいね」
なんだかよくわからないが彼は不機嫌らしい。
「…何見てるか」「ご、ごめん」
八つ当たりですか?八つ当たりですよね。
※
お題『楽しみにとっていたアレが冷蔵庫から忽然とその姿を消した。犯人は誰だ!』
「今なら怒らないね」
冷蔵庫にあった杏仁豆腐。あれはワタシのものだった。
デザートなんて似合わないから、出来るだけ奥の方に隠したつもりだったのに。
「団長でしょ」
「やっぱりプリンのほうが旨いな」「…」
この怒りはどこへぶつければいい?
※
お題『奪い取るまで』
心がどこにあるかなんて知らない。
頭だろうが心臓だろうがそんなことはワタシには関係なかった。
「全部奪い取るまで。それだけのことよ」
攫って監禁してしまえばもう自分の物。
難しいことは好きじゃないね。
※
お題『この想い引き裂いて』
好きになんてならなければよかった。
だがいくらそんな後悔をしても、今更気持ちは変えられなくて。
「嫌いにさせてよ」「かてに嫌いになればいいね」
たとえ味方として会うことは絶対になくても、せめた敵としては会いたくなかった。
どうして惚れてしまったんだろう。
「さっさと殺して」この想い引き裂いて。
※
お題『狩人試験』
シャルに誘われたけれど断った。手合せは好きだが、人に試されるのは好きでない。だいたい資格なんてものにはまったく興味がなかった。
「えー、便利なのに」「一人持てれば十分ね」
じゃあブラックリストハンターになろうかな、なんてわけのわからないことを言うシャルに呆れて、ワタシは寝たふりをすることにした。
※
お題『ありがとう』
お礼の一つも言えないの?と言われたから返って言う気をなくしてしまった。
「ハ、ありがたいとも思ってないね」
本当は感謝している。少し、いやちょっと。だけどたった5文字の言葉が言えなかったから、自分の国の言葉で言ってみた。
「え、なんて?」もちろん伝わるわけもないけれど。
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