- ナノ -

■ SSまとめI

お題『寂しい』

いつもベタベタしてきて少し鬱陶しいくらいに思っていた。

だけど実際長期の仕事が入って離れてみると、なんだか物足りない。
今頃ナナコは何をしているんだろう。

この感情が『寂しい』というものだと、この時オレはまだ知らなかった。



お題『甘えたい』

オレは長男だから、今まで甘えられる側だった。だけどナナコに出会ってからは人に甘えるということを覚えた。

「ねぇ」「どうしたの?」「…」

だからと言って素直に甘えたいと言えるほど器用ではない。そんな時彼女は察してくれて、オレをぎゅっと抱きしめてくれるのだ。

「甘えたいのね」こんな姿を見せるのは君にだけ。



お題『彩り』

オレは今まで真っ暗な世界で生きてきた。たまに世界に色がつくことがあっても、それは真っ赤な鮮血の色。だけど…「イルミ、」

君に出会ってから、たくさんの色を見た。彩りにあふれた世界は眩しすぎて、オレなんかがいていいのかと思ってしまう。

「いいんだよ」

君の笑顔を免罪符代わりに、オレは歩き出すことに決めた。



お題『キス』

中学生じゃあるまいしキスぐらいで。
頭ではそう思っているのに、いざ彼女を目の前にすると心臓の音が聞こえてしまいそうなほどドキドキした。

「…いい?」「うん」

仕事でどうでもいい女にするのとはまた違う。
目を閉じて触れた唇の感触に我慢が効きそうにない。

「これがオレのファーストキスかもしれない」
本当の、心のこもったキス。



お題『未来』

未来の話をするのはあまり好きじゃない。だってそんなことは所詮取らぬ狸の皮算用だ。
だけど彼女となら少し未来を夢想してみたくもなる。

「新婚旅行はどこに行こう?」
「イルミとならどこでもいいよ」

旅行なんてちっとも好きじゃなかったけど、彼女との旅行なら計画を立てるのも楽しい。
未来予想図はもうすでに頭の中にできていた。




お題『さらって』

「ここから連れ出して」

ターゲットの屋敷にいた女に、オレはあろうことか一目ぼれしてしまった。
仕事を終えたばかりのオレに、彼女は怯えることもせず懇願する。

「私をさらって」彼女にどんな事情があるのかは知らない。

だけど利害が一致しているのは確かで、オレは彼女を抱きかかえて屋敷を出た。


お題『惚れた弱み』

「ごめん、もうそれよりこっちの方が欲しくなっちゃった」

前々から欲しいと彼女が言っていた限定品のアクセサリーを、なんとか苦労してミルキに競り落とさせたのに、彼女はもう興味ないのと言う。

「ごめんね」「…いいよ。で、今度はこれが欲しいの?」

正直腹が立ったのは最初のうちだけ。今はもうこんな展開に慣れてしまっている。

「ありがとう、イルミ!」にっこりと笑う彼女に溜息をついた。
惚れた弱みだ仕方ない。



お題『涙』

「…イルミ、泣いてるの?」

彼女にそう言われてハッとした。そういや、なんだか頬が冷たいなあと思っていたら濡れている。
オレは自分が泣けたということに驚いていた。

「泣いてくれただけで…嬉しいよ」

ぽとり、と落ちた涙は血だまりの中に溶ける。
泣いているオレとは対照的に、彼女は最期まで微笑んでいた。



お題『羨ましい』

いいね、家業が暗殺って。

他人から羨ましがられたのなんて初めてかもしれない。

「私も暗殺一家に生まれたかった」
「知らないから言えるんだよ」

馬鹿馬鹿しすぎて腹も立たなかったが、彼女はだって…と口を尖らせた。

「イルミのお嫁さんになるなら、暗殺できないと」「…」

今から頑張れば?オレはまだ待っててあげるけど。



お題『Eカップだよね?』

Eもないだろ、と知りもしないヒソカが馬鹿にした。
だからあるよ、と私が訂正しようとしたらそれより早くイルミの訂正が入る。

「あるよ、見て触ったオレが言うんだから間違いない」

ナナコのために言ったのに、なんで殴るの?Eカップだよね?
頬を押さえたイルミは不服そうだったが、私は恥ずかしくて死にそうだった。



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