- ナノ -

■ キルアp.17

お題『夢だけの世界』


憧れは俺に全てを捨てさせた。
その日は偶然、親父も兄貴も留守だったというのもある。
家を出てしまうことは想像より遥かに簡単だった。

外の世界は素晴らしい。一番欲しかった友達も得た。
だけど…「キル」

やめろ、ゴンはそんな呼び方をしない。
夢だけの世界だったと冷たい独房で思った。




お題『お姉ちゃんと一緒』

キルアは唯一のお父さん似。そのせいか昔から他の兄弟と共通点を見つけると酷く喜んだ。

「お姉ちゃん、一緒!」

それだけならまだ可愛い。
だけど私がこのうちで唯一の女だということも問題だった。

「お姉ちゃん、胸ない、一緒!」

悪意は無いと信じるよ?

「イル兄、今日のキルの訓練、私がするね」




お題『お菓子よりも』

甘いものは至福だ。豚くんみたいになるのは嫌だけど、ついつい食べ過ぎてしまう。
だけど最近はあまりお菓子を買っていなかった。

「ナナコ、これ…」
「わぁ、覚えててくれたの?」

誕生日プレゼントを買うためにお金を貯めてた。

「ありがとう!」

お菓子よりもお前の喜ぶ顔が見たかったんだ。



お題『もう弟と言わせない』

「いい加減にしろよ」

ナナコを壁に押さえつけると、彼女はそこで初めて怯えた表情を見せた。

「いつまでもガキ扱いしてんじゃねーよ」
「キル…ア?」

まだ少し背の高い彼女に合わせるように背伸びして、無理矢理に唇を奪った。これでもう。

「弟だなんて言わせーから」

言えねーだろ?



お題『反抗期』

反抗期って普通家族にするものじゃないのかな。
何故かわからないが、最近キルアが私に冷たい。

「あんま、くっつくなよ」「なんで?」
「鬱陶しいんだよ」

お母さんじゃないのに、とても悲しいです。
でも私が遊びに行くとちょっぴり嬉しそうな顔をするキルアがとても可愛い。

素直じゃないのは元からか。



お題『俺だって男だよ?』

「お風呂入ろっか」

その一言に、思わず飲んでいたコーラを吹き出す。

「っ!バカか!何言ってんだよ!」

流石に12にもなって女と入れるわけねーだろ。
だけど、ナナコはきょとんと首を傾げただけだった。

「入らないの?」「うっせーな!」

俺だって男だよ?入るってことは覚悟しとけよ。



お題『甘い』

うちには女の兄弟がいないから、少女漫画を読んだのは初めてだった。

「うわぁ、こんなのよく言えるな。甘ぇ」

キラキラした男が吐く甘ったるい台詞は読んでるこっちが恥ずかしくなる。

「でもキルアもたまに言うよね」
「は、オレが?」
「ゾル家の皆捕まえて売るとか、考え方が甘いよ」

うるさいな。意味がちげーよ。



お題『ファーストキスはぶどう味』

ファーストキスはレモン味。

そういやそんな話を聞いたことがある。
俺はレモン味の棒キャンディーを舐めながら、じゃあ今しかないな、と思った。

「ナナコ」「なに、ん!」

唇を重ねると口内に広がる甘い味。でもこれはぶどうだ。

「お前も飴食べてたのかよ」「うん」

ぶどう味も悪くない。
もう一度口付けて、今度は飴玉を奪った。



お題『チョコロボ君事件』

前に一度、世界中のお菓子やさんからチョコロボ君が消えたことがある。
もちろんそのことはニュースでも取り上げられるくらい異常な事態で、オレも落胆したのだったが案外犯人は近くにいた。

「キル、天空闘技場から無事に帰ってきたんだね」

偉いよ、と何十年分のチョコロボ君の山。
初めて兄貴を持って良かったと思った。





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