- ナノ -

■ SSまとめB

お題『愛妻家』

その単語は自分と対極にあるだろうな、と思っていた。
だってまず結婚自体想像できなかったし、ましてや妻を大事にするなんて柄じゃない。

「出かける時は行き先言えと言たはずね」
「うわー愛妻家」「だから違うね!」

愛妻家とかそんなのじゃなくて、過保護っていう方が正しい。
ナナコの頭をくしゃ、と撫でてそう思った。



お題『語り尽くした話の先に』

拷問についてここまで話が合った相手は初めてだ。

見かけによらず趣味の悪い彼女はクスクス笑うと、試してみない?と言った。

「今から狩り行くか?」「嫌?」
「ワタシも興味あるね」

語り尽くした後は実践だ。
新しい道具を早く試してみたくてうずうずする。




お題『猟奇的な彼氏』

スプラッターを目の前で見せられて、気分が悪くならないわけがない。私がせり上がってくる吐き気を懸命にこらえていたら、プレゼントね、と男の生首が転がってきた。

「部屋に飾るといいよ」「嫌がらせか!」

心外だ、と顔を歪めた彼は本気でそう言ってるみたいだから反応に困る。
猟奇的な彼氏を持つとプレゼントにもひやひやするものだ。



お題『お菓子』

甘いものは嫌いね。
牽制するようにそう言ったら、クッキーを持ってきたナナコの目にみるみる涙が溜まっていった。

「せっかく作ったのに…」

仕方が無いからしょんぼりと肩を落とす彼女を引き止め、皿の上から1枚取る。

「次は砂糖減らすといいよ」

だから泣きやめ。



お題『とんだ災難』

「好きです!」

こいつはバカか?と耳を疑った。
なぜ今このタイミングで言ったのか、全くわからない。
不意を突かれて驚いたせいで、敵の攻撃をくらってしまった。

「フェイ!大丈夫!?」「お前のせいね」

まったく、とんだ災難だ。

「しかり責任とてもらうよ?」

ワタシに惚れるなんてお前も災難な奴ね。



お題『ここにいなさい』

すぐに手合せという名の喧嘩ばっかりするから、フィンとフェイを引き離した。

「ここにいなさい」叱りつけると、反抗的な目でこちらを睨んでくる。

「ハ、お前に言われなくてもここにいるね」

そう言ったのに、ちょっと目を離すとまたアジトの壁が壊れる音がした。

「もう!ここにいなさいって言ったのに!」



お題『守ってね』

「守ってね」と言うと「なんでワタシが」と返された。
だけどそう言いつつも、フェイタンのスピードはいつもより遅い。
私に合わせてくれているのだとわかって、とても嬉しくなった。

「ありがとう」
「ハ、何もしてないね」

わかってるよ。素直じゃないな。



お題『ご主人様』

今日一日下僕になる。
それが昨日の宴会で決まった私の罰ゲームだった。

「しかし、よりによってフェイの言うこと聞くなんて、私生きて帰れるかなあ」
「フェイじゃないね、ご主人様言うがいいよ」
「はいはい、ご主人様」
「はい、は一回ね」

それにしても、フェイがこんな王道展開を好きだったなんて。



お題『北風と太陽』

「この勝負はフェアじゃない」

童話ごときに何を怒っているのかと思えば、ナナコはいたって真剣だった。

「もし、逆の勝負だったらどうなのよ、服を着せるだったら太陽に勝ち目ないじゃん」
「そうでもないよ、ワタシの念、熱くするけど服着るね」
「なるほど…」

どうやら納得したらしい。またホームは静かになった。



お題『愛するが故』

痛めつけても可哀想だとは思わないが、ワタシに気に入られたという意味でならこいつは可哀想だとも思う。

「憎くてやってるわけじゃないね」
「…っあ!」

血を流し、虫の息になる彼女の姿に、思わず笑みが浮かぶ。
そう、これは全部愛するが故。



お題『まさか恋に落ちるとは』

なんでこいつがこんなに怒ってるのかわからない。
怪我をして血まみれでホームに帰ったら、ナナコにぶっ飛ばされた。

「もっと自分を大切にしなさいよ!」
「何言てるか」

そんなこと、今まで誰にも言われたことがなかった。
だから初めは鼻で笑い飛ばしたのだったが…

まさかあれをきっかけに恋に落ちるとは。この時は全く気づいてなかった。



お題『最近なんか視線を感じて警戒していたら背後からフォークが飛んできた。犯人は誰だ!」

「お前か」「は?」

フォークの飛んできた角度からして、こいつなのは間違いない。
それなのに彼女はしらを切った。

「そんなことするわけないじゃん」
「でもお前しかいないね」
「証拠あんの?」
「…」

その日からワタシがナナコを付け回すようになったのも無理はない。

「やーい、ストーカー!」「違うね!」



お題『傘』

「フェイタンの傘ってどこに売ってるの」「は?」

急にどうした?と思ったら彼女はじーっとこちらを探るように見てくる。

「お手製?」「秘密ね」
「雨の日さすの?でも火薬が湿気ちゃうよね」
「だから秘密ね」

団員同士でも教えたくないことはある。

「させる傘がないなら入れてあげるよ」
「...雨か」

させない、ということにしておこう。




[ prev / next ]