- ナノ -

■ SSまとめE

お題『大丈夫、オレ強いから』

「イルミ危ないよ、一人じゃ無理だって」
「ハハ、これくらいどうってことないよ」オレ強いし。

ぶん、と慣れない片手剣を振り回したらばたばたと人が倒れた。

「だからそれ、味方だってば!」
「大丈夫、オレ強いから」
「迷惑なのよ!」

ほんとに自分で殺った方が早いのに、とイライラする。こんなゲームはやめだ、やめ。




お題『旅行』

そう言われると、仕事では遠出するものの旅行になんて行ったことがない。
長く休みが取れないのもあるし、行く相手も、行きたい場所もなかったからだ。

「行こうよ、イルミ」「えー」

でもナナコとなら行ってもいいかもしれない。

「新婚旅行ならね」



お題『見知らぬ男』

彼女が浮気しないかどうか、オレは針を使って見た目を変えて実験してみた。

「ねぇ君、可愛いね」声をかけた瞬間、彼女の表情は凍りつく。あれ?ちゃんと見知らぬ男に見えてると思うんだけど。

「ご、ごめんなさい!」まぁいいや、合格。

針を抜いたオレは走って逃げた彼女を追いかけた。

「ナナコ」「あ、イルミ!怖かったの!顔中針だらけの男が!」




お題『ねぇ、ねぇ』

イルミのねぇ、に私はすごく弱い。
忙しくてもねぇねぇとじゃれられるとどうしても構いたくなる。この人は天性の猫科らしい。

「ねぇ、ねぇナナコ」「なに?」
「眠いんだけど」

勝手に寝ろよ、と言いたいのを堪えて、私も布団に入る。「おやすみ」

これがやりたいんだろうな。



お題『わがまま』

わがままはどちらかといえばイルミが言う方。
それなのに女のわがままを聞くのは男の甲斐性だと、今日はやたら張り切っている。

「何かないの?」
「そうは言われても急にはね…」

あっ、そうだいいこと思いついた。

「イルミが今後もうわがまま言わないってのは」
「却下」

なんたるわがまま男。



お題『一番』

イルミのこと一番好きだよ、と言ったら間髪入れず二番は?と聞かれた。
別に細かくランキングをつけていた訳じゃないから、唐突に聞かれても困る。

「そんなの聞いてどうするの?」
「いや、二番は今のうちに消しとかないと、と思ってさ」

不動の一位でいたいらしい。
よかった、家族とか答えなくて。



お題『修行』

なんでオレが見なくちゃなんないの。

そう文句を言いつつ、きっちり見てくれるのがイルミである。
むしろ持ち前の教育熱心さに拍車がかかって、厳しすぎるくらいなのがイルミである。

そして求めるクオリティも

「ほらそこ、休憩しない。じゃあオレが針投げるから3時間交わし続けて」

とにかく高いのがイルミである。



お題『怖い夢』

なんか最近怖い夢を見ると思っていたら、どうもイルミの仕業らしい。

「仕業って酷くない?」

ただ見守ってるだけ、というのが彼の主張なのだが、枕元に彼が立っているだけでも相当疲れるのだ。

「怖すぎる」「夢じゃないよ」

夢の方が怖くなかったと伝えたら、きっと彼は怒るから言わない。



お題『盲目なんだよ』

イルミの目は大きいね。
女の子みたいだ、とちょっと羨ましそうに呟いた彼女に愛しいさがこみ上げる。

「でも盲目なんだよ」「え?」
「全然何も見えないんだ」

彼女が不思議そうに首を傾げたから、耳元で呟いてやる。

「お前しか見えないんだけど、どうしてくれるの?」「なっ…な、な!」

なぜかビンタを食らった。



お題『行ってきます!』

ナナコは表の世界の人間だ。
だから出かけるとき楽しそうに「行ってきます!」と言う。

我が家ではせいぜい執事に見送られるくらいだから最初とてもびっくりしたものだった。

「イルミ様、いってらっしゃいませ」「うん」

オレもいつか言えるといいな。
屈託の無い行き先へ出かけたい。




お題『私が好きなら殺しはやめて』

何を試されているんだろう、と思った。
だって、オレが殺しを、ゾルディックを辞めてしまうわけがない。彼女はそれをわかってて、一体オレにどうして欲しいんだろう。

「お前が好きだから殺しをするんだよ」

もちろん理由はそれだけじゃないけど、君と生きていくためにも必要なんだ。
仕事だから。



お題『いつも守ってあげてるでしょ?』

パーティーに行きたくない、と言ったらイルミは腕を組んだ。
だって普通のパーティーならいいけど、イルミは絶対途中で仕事するし。

「いつも守ってあげてるでしょ?」
「危険だから嫌とか、そんなんじゃなくて」

イルミが他の女の人と喋るのが嫌なの。
そう言ったら尚更行こうよ、と言われた。

「妬かれるのも嬉しい」




お題『しるし』

イルミは印をつけたがる。俗に言う所有印ってやつだ。
首筋などの見えるとこから、太ももなんて見えないところにまでキスの雨を降らせる。

「心配なの?」
「そうだよ、オレはいつだってナナコが心配」

だけど疑ってるわけじゃないんだ。

そう言った彼は、また首筋に顔を埋める。「印を付けると落ち着くんだ」

ぴり、と小さな痛みが走った。




お題『どこ行ってたの?』

イルミの方が早く帰ってるなんて珍しい。
少し怒っている風だったので素直に答えた。

「同窓会だけど」
「同窓会?なにそれ」
「高校の友達に会ってたの」

説明するとイルミの機嫌がさらに悪くなる。

「もう行っちゃダメ」「なんで」
「あの時好きでした、とかやるんだろ」

イルミが意外と夢見がちで驚いた。





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