- ナノ -

■ SSまとめA

お題『照れ屋な君』

クロロは歩くのが早い。まぁそもそも足の長さが違うから仕方ないのだが、私はいつも小走りで追いかける。

「手を繋いでよー」
「…お前は子供か」

呆れたように言う彼に私は拗ねた。「じゃあいい」

ぴたりと止まった彼は、こちらを見ずに手を差し出す。

「…ホームに入るまでな」

顔を覗きこんだら目をそらされた。照れてる照れてる。



お題『優しい貴方』

冷酷非道。
それが旅団に対する世間のイメージで、私も間違ってるとは思わない。だが、一面しか持たない人間などいないのだ。

「おいで」

寝起きにぎゅっ、と抱きしめてもらう。そっと頭を撫でてくれる優しい貴方が好きだ。
皆に貴方が優しいことを知って欲しいけれど、やっぱりこの一面は独り占めしたい。




お題『黄金』

「成金趣味は頂けないな…」

忍び込んだ宝物庫は床も壁も一面金ピカに輝いていた。確かに素晴らしく価値はあるのだろうだが、やはり美しさに欠ける。

「うわぁ、ここなら団長の夢叶いそうじゃん」「夢?」
「子供の時言ってたよね、黄金で出来た自分の像立てるって」
「……」

若気の至りだ、忘れてくれ。




お題『幸せのカテゴリー』

幸せの定義とはなんだろう。読書を終えたクロロはその余韻に浸る。
そこへナナコがひょっこり顔を出した。

「プリン食べよー」
「それも幸せだな」「え?」

幸せは定義する物じゃなくて、分類するものか。幸せの範疇が広がれば広がるほど幸せを感じる機会が多くなる。

「お前と一緒ならさらにだな」




お題『一杯のコーヒーと』

相席いいですか?

そう声をかけられて、二時間ぶりに本から顔をあげた。「どうぞ」

目の前に座った彼女はケーキだけを単品で頼む。コーヒーだけを頼んでいたオレと合わせて、まるでセットみたいだった。

一杯のコーヒーとケーキと俺と彼女。なかなか絵になる、と満足して、また会えたらいいなと柄にもなく思った。



お題『縁側での一時』

ジャポンっていいな、そう言ってごろりと縁側に横になったクロロは陽の光を浴びて目を閉じた。

「そう?私んちはこれが当たり前だからなー」

夏場にはここでスイカを食べるんだよ、と言うといいな、とまた言われた。

「だったらまた来なよ、夏に」

遠距離恋愛は寂しいから、ずっとここにいなよ。
そう言えたら良かった午後一時。



お題『雨のち晴れ』

雨の日は外に出ないに限る。特にナナコと喧嘩してしまって気まずい日には。
読書に耽溺するふりをして、彼女とのことから目を背けていた。

「…クロロ」
「…」
「雨、上がったよ」

散歩にでも行かない?と女の方から言われて、いつまでもへそを曲げているわけにもいかない。

「晴れたな」雨はいつか上がるのだ。
ごめん、の言葉はいらなかった。



お題『浮気』

絶対いつかやると思ってた。だから覚悟してたはずなのに、いざ現実になると涙がこぼれた。

「悪かった…」

そういって謝ったって、きっとまた繰り返すのでしょう。
だけど私は別れるとは言わなかった。

きっとあなたはこんな私を馬鹿な女だと笑うのでしょう。



お題『可愛い君が』

他の団員に懐くのが許せない。
いや、そもそも俺自身が大切な仲間に認めて欲しくて紹介したのだが、あまりに仲良くされると返って腹立たしい。

「今日はマチ達と出かけてくるね」「駄目だ」
「えーなんで?」

不服そうな顔をしたって駄目だ。
可愛い君が俺以外に懐くのは許せない。




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