- ナノ -

■ SSまとめA

お題『恋は病』

「お前見てたらイライラするね」

唐突にそんなことを言われて腹が立たない訳がない。
ムッとした私に彼は自分の胸を指して動悸がすると言った。

「病気なんじゃないの」
「ハ、風邪すらひかないね」
「馬鹿は風邪ひかないから」

隣で聞いてるシャルの口角が不自然に上がる。

「馬鹿につける薬もないし」

ふきだした。




お題『明日も明後日も』

「暇ぁー」

団長が前のお宝を愛で飽きないから、次の仕事がない。仕事がない盗賊団はただの暇人で、私はフェイに悪絡みするしかなかった。

「勝負だ!」「いい加減にするね」

旅団一速いと言われるフェイから、物を奪って逃げ切るゲーム。

「明日も明後日もこれか」

そうぼやいた彼も楽しんでいることを、私はちゃんと知っている。




お題『嫌いじゃないよ』

「私のこと好き?」

女ってどうしてこうも面倒な生き物なんだろう。
こういうのはシカトすることにして、お気に入りのナイフを磨いた。

「ねー」「言わなきゃわからないか?」

愛を囁くなんて甘ったるいこと、出来るわけがない。
だけどナナコはわかんないよ、とじゃれてきた。

「…嫌いじゃないよ」

これがワタシの精一杯ね。



お題『奇跡』

奇跡なんて起こってたまるか。
いつもはそう思っていたけれど、いざ切迫した状態に出くわすと信じるしかない。

「きと、助かるね」
「もう無理だよ…」

今までありがとう、と笑った彼女はワタシの好きな血の色にまみれていた。

「出会えたこと自体が奇跡だったんだよ」だったらまた奇跡が起こったっていいじゃないか。

「今度は信じる、だから」

死ぬな。




お題『三つ巴の攻防』

「ナナコは蜘蛛の人間ね」
「これはオレとナナコのビジネスなの。黙っててくれる?」
「休暇中だってば」

フェイが蜘蛛の仕事で呼びに来たら、偶然イルミも仕事のヘルプで私のところにいた。
だけど今は貴重な休みだ。全員参加じゃないなら蜘蛛もパス。

「ワタシと来るね」「オレだよ」「どっちも行かない」

皆が皆譲る気ない。




お題『可愛い』

「猫…」

ホームへ帰る途中、捨て猫を見かけた。それだけなら放っておくのだが、なんとなくこの猫、ナナコに似ている。

「可愛いとこもあるね」いつもは突っかかってくるけど、こうやってじゃらすとすぐふにゃっとなるところとか。

「わー!フェイが猫持ってるー!フェイ可愛い!」「ワタシか」

この猫とお前を重ねてたなんて言えない。



お題『結婚することになりました』

なので、寿退社します。
私がそう告げると、フェイに思いっきりぶっ飛ばされた。

「痛いなー」
「けこんしても、蜘蛛は抜けさせないね」
「そういうの先に言っといてよ」

夫婦のルールは最初に決めるべきだ。

「このDV夫」
「ハ、お前は頑丈だから大丈夫ね」

先が思いやられる。



お題『狂ってる』

痛めつけるのは好きだが、死体には興味がない。なので、拷問し終わった後の残骸は、全てナナコに渡すことにしている。

「今日も芸術的な死体ね」嬉しそうに笑うこいつみたいなやつをネクロフィリアと言うのだったか。

「狂ってるね」「お互い様でしょ」

だからこそ、居心地がいい。




[ prev / next ]