■ SSまとめ@
お題『共犯者の笑み』
「どこで情報得たか、ワタシが吐かせるね」
この時を待っていた。
盗みに入った先で蜘蛛を捕まえようと待ち構えていた馬鹿な女。
だが、二人きりになって白状するのはこちら側だった。
「お前に場所教えたの、わざとよ」
「知ってた」
「そか」
ならばなぜ来たのだ、と問うのは野暮だろう。彼女は血を流しながらにこりと笑った。
「会いたかった」
※
お題『神様なんていない』
「神様がきっと貴方に罰を下すわ」
息も絶えだえに目の前の女はそう言った。普段ならイラつくところだが、あまりにも馬鹿馬鹿しくて笑ってしまう。
「ハ、神なんていないね」
そんな信心深い性格ならこんなことを誰がするか。
「いるならお前が今死にかかってるのは何の罰か?」
神様なんていない。死ねばワタシのものになる、
それだけよ。
※
お題『まったく似てない兄妹』
「ナナコは愛想いいよね」
「は、って何か」
「だって兄妹なのに…」
シャルが余計なことを言うから、また兄の機嫌が悪くなる。
ここはひとつ、仲裁に入って天使アピールでもしておくか。
「シャル、珈琲煎れたよ。お兄ちゃんも怒らないの」
「ほら優しい」
目を反らした兄。
「ま、ワタシこんな腹黒違うね」バラしたら覚悟して。
※
お題『裏切り』
「蜘蛛に対する裏切りね」
旅団を抜けますと言ったら貴方は怒った。
でも私は事前に団長から許可を得ている。
それなのに今まで見たこともないような剣幕で、彼は私の腕を掴んた。
「ワタシから逃げられると思たか?」蜘蛛の掟にかこつけて、歪んだ笑みを浮かべる彼。
好きだと言ってくれればそれで済むのに。
※
お題『冷静沈着』
「フェイって、見かけほど冷静沈着じゃないよね」
当の本人に喧嘩を売ってるつもりはないのだろうが、ナナコの一言にイラつく。それでも無視しているとフィンまでもが同調してきた。
「あぁ、すぐキレるよな」
「急に漢語話し出すアレ」
「短気なんだよ」
読んでた本を閉じた。
「誰のせいでキレるか、教えてやるね」
※
お題『気まぐれな彼女』
「男は短髪」
流星街時代の話になって、なぜかワタシの髪型の話になった。
髪の長い男は駄目だと力説され、そういや最近散髪に行ってなかったなと思い出す。
別に従うつもりじゃないが確かに邪魔だし切るか。
「でもお前、ゾル家の長男は褒めてたよな」「長髪も格好いいよね」
上げかけた腰を下ろす。切る前でよかった。
それにしても…
「他の男に目移りか?いい度胸ね」
※
お題『不器用な優しさ』
今日は皆のために苦手だけど料理を作った。
食卓を綺麗にしていると、台所から鍋の落ちる音。
慌てて行ってみれば台無しになったスープとフェイがいた。
「酷い!」せっかく作ったのに。
だが他の皆から怒られても彼は涼しい顔。
私はかすかに残ったスープを一口飲んだ。
「げ、砂糖と塩間違ってる」零してくれてありがとう。
※
お題『本当に欲しいのは』
欲しいものは奪う。
普段からそう公言していても、思い通りにならないことだってある。集めたナイフを眺め、溜め息をついた。
「ちょと、出てくるね」
最初は品揃えのいい店だとしか思ってなかったのに、今は別の目的でここに来る。
「いらっしゃい、今日は何をお探しですか?」
本当に欲しい物を選べずに、今日もワタシはナイフを買った。
※
お題『風邪引き彼女』
風邪を引いて新たな発見があった。今日はフェイが優しい。寝込む私の隣で読書している彼の横顔をちらりと盗み見た。
「なんか用か」「あ、いや…」
もっとだらしないとか詰られるかと思ってたのに、こうして見守るように居てくれるんだ。
「アイス食うか」「え」なんなの、今日優しすぎない?
「一生風邪引いてたい」
「馬鹿か」
※
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