- ナノ -

■ SSまとめ@

お題『共犯者の笑み』


「どこで情報得たか、ワタシが吐かせるね」

この時を待っていた。
盗みに入った先で蜘蛛を捕まえようと待ち構えていた馬鹿な女。

だが、二人きりになって白状するのはこちら側だった。

「お前に場所教えたの、わざとよ」
「知ってた」
「そか」

ならばなぜ来たのだ、と問うのは野暮だろう。彼女は血を流しながらにこりと笑った。
「会いたかった」




お題『神様なんていない』

「神様がきっと貴方に罰を下すわ」

息も絶えだえに目の前の女はそう言った。普段ならイラつくところだが、あまりにも馬鹿馬鹿しくて笑ってしまう。

「ハ、神なんていないね」
そんな信心深い性格ならこんなことを誰がするか。

「いるならお前が今死にかかってるのは何の罰か?」

神様なんていない。死ねばワタシのものになる、
それだけよ。




お題『まったく似てない兄妹』

「ナナコは愛想いいよね」
「は、って何か」
「だって兄妹なのに…」

シャルが余計なことを言うから、また兄の機嫌が悪くなる。
ここはひとつ、仲裁に入って天使アピールでもしておくか。

「シャル、珈琲煎れたよ。お兄ちゃんも怒らないの」
「ほら優しい」

目を反らした兄。

「ま、ワタシこんな腹黒違うね」バラしたら覚悟して。




お題『裏切り』

「蜘蛛に対する裏切りね」

旅団を抜けますと言ったら貴方は怒った。
でも私は事前に団長から許可を得ている。
それなのに今まで見たこともないような剣幕で、彼は私の腕を掴んた。

「ワタシから逃げられると思たか?」蜘蛛の掟にかこつけて、歪んだ笑みを浮かべる彼。

好きだと言ってくれればそれで済むのに。




お題『冷静沈着』

「フェイって、見かけほど冷静沈着じゃないよね」

当の本人に喧嘩を売ってるつもりはないのだろうが、ナナコの一言にイラつく。それでも無視しているとフィンまでもが同調してきた。

「あぁ、すぐキレるよな」
「急に漢語話し出すアレ」
「短気なんだよ」

読んでた本を閉じた。

「誰のせいでキレるか、教えてやるね」




お題『気まぐれな彼女』

「男は短髪」

流星街時代の話になって、なぜかワタシの髪型の話になった。
髪の長い男は駄目だと力説され、そういや最近散髪に行ってなかったなと思い出す。
別に従うつもりじゃないが確かに邪魔だし切るか。

「でもお前、ゾル家の長男は褒めてたよな」「長髪も格好いいよね」

上げかけた腰を下ろす。切る前でよかった。
それにしても…

「他の男に目移りか?いい度胸ね」



お題『不器用な優しさ』

今日は皆のために苦手だけど料理を作った。

食卓を綺麗にしていると、台所から鍋の落ちる音。
慌てて行ってみれば台無しになったスープとフェイがいた。

「酷い!」せっかく作ったのに。

だが他の皆から怒られても彼は涼しい顔。
私はかすかに残ったスープを一口飲んだ。

「げ、砂糖と塩間違ってる」零してくれてありがとう。



お題『本当に欲しいのは』

欲しいものは奪う。
普段からそう公言していても、思い通りにならないことだってある。集めたナイフを眺め、溜め息をついた。

「ちょと、出てくるね」

最初は品揃えのいい店だとしか思ってなかったのに、今は別の目的でここに来る。

「いらっしゃい、今日は何をお探しですか?」

本当に欲しい物を選べずに、今日もワタシはナイフを買った。




お題『風邪引き彼女』

風邪を引いて新たな発見があった。今日はフェイが優しい。寝込む私の隣で読書している彼の横顔をちらりと盗み見た。

「なんか用か」「あ、いや…」

もっとだらしないとか詰られるかと思ってたのに、こうして見守るように居てくれるんだ。

「アイス食うか」「え」なんなの、今日優しすぎない?

「一生風邪引いてたい」
「馬鹿か」



[ prev / next ]