■ SSまとめ@
お題『そうだったっけ、覚えてないや』
この家はオレが守っていくと決めた。弟たちのことも皆、オレが守ると決めた。
それは長男だからという理由だけでなく、そうすることが当たり前なのだと本気で思っていたんだ。
「アルカは物じゃない!家族だ!」キルはどうして泣いてるの?
家族か…
そうだったっけ、覚えてないや。
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お題『自分だけ知っていればいい』
仲がいいね、と言われると面映ゆい。
幼馴染だから当たり前だろ、と返すけど、ナナコは誰の目から見てもオレにべったりだった。
「イル兄のどこがいいんだよ」
構ってもらえなかったキルアがふて腐れたようにそう言うけど、秘密は自分だけが知っていればいい。
昔キミの頭に埋めた、オレの気持ちは。
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お題『優先順位』
優柔不断は嫌い。優先順位をつけさえすれば迷うことなく動けるのにナナコはそうしない。
しかも君は頼まれたら断れない性格だからいつも忙しそうだ。
珍しくオレの仕事が休みなのに出かけるの?
そう言ったら困ったような顔をした君。
わかった、オレが決めてあげるよ。
オレを一番に優先して。
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お題『ねえ、待って』
いつも言いたいことは何でも言うタイプだったのに、こんな時に限って言葉が何も出てこない。
「私、結婚することになったんだ」
苦笑するキミ。聞いてないよ。
隣にいるのが当たり前だと思ってた。
今更だって言われるかもしれない。もう手遅れかもしれない。
だけどオレはナナコの腕を掴んだ。
「ねえ、待って」
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お題『吊り橋効果』
「恐怖による心臓の拍動を、恋愛によるそれと勘違いして恋に落ちることもあるらしいよ」
きっかけはヒソカの一言だった。
それならオレにだってできるかもしれない。それなら君にふりむいてもらえるかも。
オレはその日すぐに君と会う約束を取り付けた。
好きになってよ、今夜とびきりのスリルを届けるから。
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お題『追ってくる車のタイヤを打つこと30分』
一体どういう念なんだ、具現化系か?
オレはもうかれこれ30分近く追ってくる車を破壊しようと試みている。足止めにタイヤを狙っても駄目。投げた針がすり抜けてしまうのだ。
「ミル、訓練は終わり。オレの負けだよ」ミルも操作系なのにどうやってるんだろ。
「へへ、最新鋭の立体映像なんだ。すげーだろ」
「許さない」
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お題『二重人格』
気まぐれも大概にしろ。あまりにころころ態度が変わるから腹が立って、二重人格だろと言ってみた。
「本当の二重人格はね、年齢や性別も違う人格なんだよ。イルミは私の人格が男でも愛してくれる?」
不意打ちの質問。怒ってたのも忘れて素直に頷くと、彼女はにっこりと笑った。
「へぇ、私は女のイルミとか無理」
このやろう。
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お題『束縛』
「束縛してる?オレが?」
束縛の激しい男は嫌われるよ、と言ったら彼は本気で驚いていた。
「参ったな、まだまだ序の口なんだけど」
携帯見るわ、男と喋ると怒るわ、今でも大概なのにさらに上があるのか…
「んー嫌われるのは困るな。ね、首輪あげるから嫌いにならないでよ」
だからそれが駄目だって言ってるのに。
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お題『変態』
一緒に入ろうと浴室の扉を開けたら、石鹸が飛んできた。
「何入ってきてんの変態!」
「なんで?別にお互い裸なんて」「変態!」
シャワーの水をかけられ、無理矢理に締め出される。
「濡れたままだと風邪引くんだけど」嘘だ。
だけどしばらくそこに突っ立ってたらやがて控えめに扉が開いた。
やったね。
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