- ナノ -

■ 17.小休止 どうしていつも俺頼みなの


「次の狙いが決まった」

短く、そう告げられる。
団長から俺にだけ先に連絡が来るときは、大抵厄介な仕事だった。
下調べがかなり必要で、情報次第で決行するか検討したりもする。
まだ決定事項ではないからこそ、団員全員には伝えないのだ。

「今度は何を盗るの?」

俺はめんどくさいなぁと思いつつも、実は結構ワクワクしている。
団長が興味を示し、盗むに値すると思ったお宝。
一体どれ程の価値があるんだろう。

電話越しの団長の声は心なしか明るかった。

「それがな、わからないんだ」

「…へ?わからないってどういうことなのさ?」

決まった、と言ったくせに、わからないとは何だ。
意味がわからない。
だけど団長は至って真剣な様子で説明する。

「マクマーレン家を知っているか?」

「ああ、あの、毒と薬の老舗の」

「そうだ」

知っているも何も、そんなの裏の世界ではかなり有名だ。
シャルは今更何を言い出すのだろうと、ちょっと不安になる。

「マクマーレン家には秘密の宝があるらしい」

「秘密の宝?なにそれ?」

「知らん。それをお前に調べてほしいんだ」


…でたよ。こういうの。
やっぱり厄介な話じゃないか。

シャルは大きくため息をついて、了解と返事する。

「わかったよ、調べればいいんでしょ」

「あぁ、頼んだぞ」

全く、うちの団長は人使いが荒くて困る。
俺だって暇じゃないのに、探し物となるとすぐ俺に命令すればいいと思ってるんだから。

「ねぇまさかとは思うけどさ、秘密って言葉に惹かれたんじゃないよね?」

「………別に、そういうわけじゃない。この前手にいれた古書の中に、マクマーレン家に関する面白い記述があってだな…」

「はいはい」

分かりやすい人だなぁ…
呆れながらも思わず一人で、笑みをもらす。

「まぁ、何か分かったら教えてくれ」

「大したことなくても、がっかりしないでよ?」

じゃあ、また。と言って電話を切る。
とりあえず、今やってるのは後回しだな。

ふぁあ、と大きな欠伸をした後に、気合いをいれるため、ぺちぺちと頬を叩く。

さてと、それじゃあ早速仕事にとりかかりますか。

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