■ 13.どうしてキミが気になるの
彼女は本当に不思議な子だった。
ヒソカは、泣いているレイを抱く腕に力を込める。
こんなに弱そうなのに殺せないし、ボクと一緒であんなに嫌そうな顔したくせにボクのために泣いている。
最初はあのイルミでさえ壊せないキミなんて面白い玩具ぐらいにしか思ってなかった。
青い果実というには、残念ながら少し物足りなかったし。
でも現に今こうして、ヒソカは彼女に興味を持っている。
壊せるか、壊せないかじゃない。
一人の人間として興味があるのだ。
生来の性格で気まぐれで嘘つきだけどこれはたぶん嘘じゃない。
レイ、キミのことがもっと知りたい。
***
「なにやってるの」
冷たい中に怒りを含んだ声に、背筋をゾクゾクとした快感が走る。
3番目にたどり着いたのはイルミだ。
彼はどんな道だったか知らないけれど、暗殺者らしく返り血一滴ついていない。
イルミは、彼女がボクの腕の中にいることが気に入らないらしく、相変わらず表情には出さないけれどオーラでわかる。
レイはイルミの声を聞くと、ばっ、と体を離した。
「わっ!?イル…じゃなくてギタさん!」
「ねぇ、なにやってるの?もしかしてヒソカと一緒だった?」
ボクから彼女が離れてしまった。残念。
バンジーガムでとらえてもいいんだけど、今はまだイルミとヤりたくないからやめておこう。
それにしてもわかりやすすぎるくらいに、イルミにしてはやたら彼女に執着している。
「えと…はい、ヒソカさんと一緒でした」
「ふーん」
気のない返事だが、内心穏やかでないに違いなかった。
彼はただのターゲットだといつまで言うつもりなんだろう。自覚していないようならボクが貰ってしまうよ。
そんなことを思いながらにやにやしていると、彼が睨んできた。
それから、レイの腕を引き自分に近づける。
「修行だって言ったよね?どうせヒソカに助けてもらったんだろ?」
「…はい、ごめんなさい」
「お仕置きだね」
イルミは短くそう言ってレイを引きずった。
その顔は結構真剣に怒っているようで、ボクにもちょっとわからなくなる。
イルミ、キミはレイのことをどう思っているんだい?
***
むかつく。
トリックタワーはさっさと攻略した方だ。
なのに、着いたらもうヒソカがいて、おまけに泣いてるレイを抱き締めている。
ねぇ、何なの?
オレは苛立ってすぐ二人のところに行った。
「なにやってるの」
声をかけるとレイはばっ、と体を離し、驚いた顔でオレを見る。
何、勝手に泣いてんの?
ずっと、ヒソカと一緒だったんだ?
オレが訊ねると、彼女は認める。
修行だって言ったよね?
そんな顔しないでよ。オレが悪いの?
素直に謝るレイに、オレは怒りのやり場を見いだせない。
とりあえずお仕置きだって言って、ヒソカから離した。
どうせその顔は新しい玩具でも見つけたって顔だろ。
オレの邪魔をしたいだけで、弱いレイになんか興味ないくせに。
にやにやしてる顔を睨み付けてやるが、ヒソカはもっとにやにやしただけだ。
はぁ…前にも言ったはずなんだけど。
オレのターゲットに手を出さないでよ。
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