- ナノ -

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まず、聞いた内容はこちらです。

【フウゲツ王子の空間移動能力は、儀式でついた念獣ではなく彼女自身の念能力である】

もしかしたら皆は知ってたかもしれないけれど、私は今まで普通に念獣だと思っていたので改めて自分なりに【念獣 or 念能力】の根拠になりそうな事柄をまとめてみることにしました。


まず、元々【念獣】だと思っていたので、大前提な話も含め、そう思っていた理由を簡単に箇条書きします。

@壺中卵の儀で王子全員に念獣がついた。なお、この念獣も宿主の人となりに影響を受けた能力や形態を持つ
A念能力の存在を知っており、念能力者であったのは王子達の中でも上位2名のベンジャミンとカミーラだけ
Bフウゲツの空間移動能力は船内で初めてできた”わたしの魔法”である。
C第三王子チョウライの念獣のように、念獣は必ずしも生物の形をとらない
Dウショウヒの虫射球は”簡易念能力者判別装置”として使える
E壺中卵の儀で念に対する素養が高められたとしても、第四王子ツェリードニヒ級の天才でも、念能力を会得するためには修行が必要だった
F扉は具現化か具現化寄りの特質系能力で、難易度、希少度共に高い

まず、@は当たり前の話ですね。そういう前提で話が進みましたので、少なくとも王子1人につき1体は念獣が憑いているということです。
Aより、上位王子達ですらごく一部しか念能力の存在を知らないため、下位王子であるカチョウが事前に念の存在を知っており、さらに念能力者であった可能性は低い。これはBで初めて目の前に具現化された扉を見たフウゲツのリアクションからも窺えます。

この@〜B(Cはおまけ。”獣”なの?というツッコミ予防)の事柄より、作中で第一、第二王子達以外の周りに出てくる念は、儀式でついた【念獣】であると考えられます。
これはまぁ素直な思考なので、素直すぎるということ以外、さほど反対意見もないかな、と。

残るDEFについては【Aだから念獣である】という裏付けというよりも【Aでないから念能力ではない】という批判的な視点による根拠になります。

ABより、フウゲツが最初から念能力者でなかった可能性が限りなく高いので、あの扉が彼女自身の念能力であった場合、彼女は船中で初めて念を会得したことになります。

念能力後発組には天才ツェリ様の前例Eがありますが、彼でも一応修行はしていますしテータという指導者もいて……もしフウゲツが念の存在を知らないまま独自に編み出せたのだとしたらちょっと待って天才過ぎないか?今までの努力はなんだったんっスか、師範代!?となります。(まぁこの辺はメタ的な都合とか、能力の性質F、状況もあるので後の【念能力である】という項目でも逆の視点から触れようと思います。)

そして一番私が引っかかっているのは最新話でのDウショウヒの虫射球による判別です。
彼の独白で「耳元で羽音がしたのに無反応でいられる人間は皆無と言っていい」とあるので、おそらく彼の虫射球は念能力者にはバレバレですぐに解除されてしまうのでしょう。どの段階でフウゲツにこれがつけられたのかははっきりしていませんが、もしもフウゲツが念能力を会得しているのなら、この虫射球の存在に気が付かないはずがありません。

彼女は初心者なので、気づいていてもどう対処すればいいのかわからないという可能性がありますが、一度は扉を使ってカチョウに会っています。他の人間を信用できなかったとしてもフウゲツはカチョウになら自身に”何かが付けられた”と相談するでしょうし、カチョウに伝わればカチョウがセンリツに状況を伝えるはずです。おそらくフウゲツの命に関わることなのですから、センリツに相談すべきか迷ったとしてもこればかりは頼らざるを得ない。

よって、この虫射球を放置している、という点からフウゲツは念能力者ではないんじゃないかと考えました。
しかし虫射球の能力の解釈にはまだ幅があるため、こちらも後半【扉は念能力である】という視点においても触れたいと思っています。

以上、@〜Fが【扉が念獣である】と考えた理由になります。


△▼

それではここからは逆に【扉は念能力である】という視点で根拠になりそうなものを挙げていきます。

G扉が【念獣】だと作中で明言されていない
H他の王子の念獣とは違い、フウゲツの願望”カーちんに会いたい”が如実に反映されている
I念能力者ではない王子達には自身の念獣が見えていない
J”帰りの扉はカーちん”しか開けられないという制約めいたルール


Gはまぁいいでしょう。揚げ足取りのようなものですが、実際に明言されていない以上、念獣ではない可能性は残っている。

今回挙げた4つの中で、最も重要だと思われるのはIです。私も元は【念獣】だと思っていたので「なぜ念能力説が生まれたのか→その説の根拠は正しいのか」の順で考えてみたのですが、他の項目はともかくIだけは否定材料が思いつきませんでした。HJに関してはね、儀式の念獣もその人のバックグラウンドが反映されるというのがあるから、姉妹がやってた旅行ごっこが反映されているだけだと言えなくもない。

でもIについては、なぜこれを見落としていたんだろうというくらい、確かに【念能力】である根拠になりそうなんです。
チョウライやツェリ様が自身の念獣について見えるか?とか姿かたちを問うシーンはあったし、タイソンに至っては念獣が見えないのをいいことに、護衛は妖精とか天使とか適当なこと言って誤魔化してましたよね。

つまり念能力者でなければ、念獣は見えない。扉を見ることができて、さらにそれを遣えるフウゲツは既に【念能力者】ということじゃないでしょうか。

それでは【フウゲツが念能力に目覚めた】という前提で、前半部分で指摘した、

Dウショウヒの虫射球は”簡易念能力者判別装置”として使える
E壺中卵の儀で念に対する素養が高められたとしても、第四王子ツェリードニヒ級の天才でも、念能力を会得するためには修行が必要だった
F扉は具現化か具現化寄りの特質系能力で、難易度、希少度共に高い

についてもう一度考えてみたいと思います。

まずは簡単なEFから。
フウゲツが念能力者ならば、ツェリ様以上の天才肌ということになってしまいますが、これまで念というのは精神面に大きく左右されるものとして原作で描かれています。
日常生活中では何の修行も無しにこのスピード会得はあり得ませんが、命の危険に晒されている極限状況下、なおかつ”カーちんに会いたい””カーちんと逃げたい”という明確な願望があるということがこのスピード会得に繋がった、と考えることはできます。ツェリ様は天才ですけど、余裕というか、さほど思い詰めているわけではありませんしね。

またフウゲツの”扉”が特質系だとすると、修行よりも本人の生まれ持ったセンスに大きく依存する傾向があるのではないかと思います。ネオンも特質系の占い能力でしたが、彼女も念のことをあまりよくわかっていないし、修行したわけでもなさそうなのに使えてしまっている。特質系は念能力の中でも習得方法がイレギュラーだと考えてよさそうです。
また空間移動のチートさも、”カーちんでなければ帰りの扉を開けられない”という、使い勝手の悪さで相殺されているので、能力の強さ的にも妥当な感じがしました。

さてそれでは問題のDウショウヒの虫射球についてなんですが……これはもうちょい彼の能力を説明してほしいなってところです。

前回の感想で、私は虫射球が今現在もフウゲツについているのではないかと思っていましたが、もし彼女が念能力者ならば念のことがわからないなりにもそんな悠長にはしていられないはず。
しかし半径20mから離れると強制解除される”殺人を無罪にする方法”と虫射球がセットの能力で、虫射球のほうも強制解除されたと考えればどうでしょうか。

虫射球については、「直接ターゲットから取り除かれた場合、そのターゲットには二度と効かない」と説明がありましたが、効果範囲外による強制解除の場合は再度念をかけることができるという風にも受け取れます。
フウゲツが今回脱走したことで虫射球が外れたとしても、意図的に取り除かれたのでないならまだチャンスはある。取り除いていないのなら【フウゲツは非念能力者】で、他の護衛にも気づかれていないようだ、と考えてウショウヒがラッキーと表現した可能性があります。

しかしですね、怖いことに【フウゲツが念能力者】という仮定を元に考えると、今の状況は全て彼女の手のひらの上では?という風にも取れるんです。

まず、独断での脱走。ミザイにも”カチョウが共謀罪に問われる可能性があると考えられないとはやっぱり子供だな……”と呆れられたあの脱走に関しても、

・自身の能力の確認&予行演習
・かけられた念(虫射球)の効果範囲を探る

の2点の理由があったのかもしれない。

なんてったってフウゲツはまだ念を覚えたてです。念による移動がどの程度の距離行えるのかは確認しなければなりませんし、かといっていきなり遠すぎるところを指定して、カチョウと離れ離れになるわけにはいかない。彼女の脱走は初めから見つかる前提で行われたのではないでしょうか。
船の第一層は王族とV5の要人、第二層は各界の著名人がいるフロアで、下手をすれば利権絡みによって秘密裏に殺されてしまう可能性が高い。かといってあまりにも権力の関係ない下層となれば、今度は王族である身分が使えず、少女であるフウゲツの身にはあまりにも危険。となると第三層が一番グレードの高い一般渡航者区域であり、警察や医務室があるという点でも治安が良いと考え、彼女は第三層に移動したのではないでしょうか。

しかしここでもう一つまだ疑問が残ります。それは【予行演習なんてしてないで、早く船から脱出すればいいのではないか】ということです。
カチョウとフウゲツが揃えば、船からの脱出も可能です。移動に一日一回の制約があるとしても、こんな大規模脱走をする前だったなら、一日くらいカチョウの部屋に匿ってもらってやり過ごし、そこから二人で脱出することも可能だったんじゃないでしょうか。

けれどもフウゲツはその方法を取らなかった。それは彼女が考えなしの無鉄砲だったからではなく、虫射球の存在があったから、と考えればどうでしょう。
彼女には自分のつけられた念の効果範囲がわからない。もし、カチョウと一緒に脱出した先にも虫射球がついてきたら、せっかく船から出られたとしてもアウトです。虫射球を何とかしない限りは脱出に踏み切れない。

そこで、この虫射球がどこまでついてくるかを試すために彼女はまず、一番怪しい自分の護衛達から距離を取ることにしたのではないでしょうか。
最悪、移動先で虫射球が外れなかったとしても、第三層にはハンター協会員がいます。フウゲツはハンターのことをさほど信用していないかもしれませんが、少なくともカチョウに協力してくれているセンリツはハンター。ハンター協会の人間ならば念を知っているでしょうし、虫射球が付きっぱなしだった場合、ハンター協会の人の人柄を見て、助けを求めることも可能です。
また、第三層の人間ならば下位王子のフウゲツでも権力を振るいやすいし、黙秘もできる。つまり、彼女のプランとしては

【1】第三層の距離で虫射球が外れる
 →虫射球の解除方法ゲット(脱出への下準備)&あわよくば権力を振るってカチョウを第三層まで呼び出し、第一層にいるはずの暗殺者から二人で距離を取る。事情説明や手続きで時間を稼ぎ、24時間経過後にまだカチョウが側にいればその場で二人で脱出

【2】第三層の距離で虫射球が外れない
 →このまま脱出するには危険性が高い。虫射球の解除に協力してくれそうな人を探す

という感じだったんじゃないでしょうか。
今回はたまたま虫射球が外れたから、【1】のプランでミザイさんに塩対応だったのかな、と。

またセンリツに虫射球取ってもらったらいいじゃん、と思わなくもないんですが、何もわからない以上無理に取ることで発動……という可能性も否めないし、協会員がいっぱいいる層で詳しい人を探したほうが安全といえば安全。そもそもフウゲツはこの脱走計画を明かさなかったことからもまだセンリツを信用しているようには思えません。

また「優しいカーちん、いつも私の望みを優先してくれる」というモノローグですが、この解釈についても私は初め【行きの扉がフウゲツ指定であること=昔のごっこ遊びの時からフウゲツの行きたい場所の設定で遊んでくれていた】、【カチョウとしてはフウゲツだけで船外に逃げられるからそうして欲しいのに、二人一緒じゃなきゃ嫌だ!!とフウゲツが押し通して今は二人脱出の計画を進めている】という風に受け取っていたんですが、もしかするとフウゲツにはまだ明かされていない他の目的があって、そのためにさっさと逃げることをせず第三層にまでやってきたんじゃないかと思えてきました。

だってこの子、最初に受けた大人しくて内気な印象と全然違うんですもん。継承戦について、脱出以外のなにか強い目的と意思があったとしても今なら納得してしまう……。そしてその無茶な計画につき合ってくれるカーちん……あれこれゴンキルアの関係性だ。


さて話は脱線してしまいましたが、【扉が念能力である】の根拠としてはI念能力者ではない王子達には自身の念獣が見えていない、という描写を挙げたいと思います。

公平性、というか自分の中で検証するために【念獣】【念能力】という両方の視点で一度考えてみたんですが、うーん、これだと私の結論的には【扉は念能力】って感じですね。

私は前提となる考察の発想が苦手で(というか、特に自分の意見もこだわりもない)人の考察をどうなんだろうって検証するほうが好きなのですが、もし何かこの説ってどう思います?みたいな話があればまた是非是非聞いてみたいです。
長文失礼しました〜!

2018/09/25 16:50
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