- ナノ -

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・休載について
→ああ……初手から勢いそがれるが、これは言い返しづらい。
しかし週刊誌だから過剰に休んでいるようにも思えるが、実際他にも休載作家というのは山のようにいるし、休んでいるぶんだけの内容の濃さ、クオリティは保証されているので単純に文句をつけて良いかというと甚だ疑問である。
しかも連載当初から本誌で追いかけ、当然毎週あるものとして読み始めたのに休載が多いなら”裏切られた”と感じるのはもっともであるが、今現在の状況からして後期参入組は休載を理解したうえで読むのが当然ではないだろうか。

というか休載どうこう言う奴は大抵、読んでないし待ってない。待ってない外野が他人の仕事ぶりに口を出すのは一体何様のつもりなのか。集〇社と読者が良いって言ってるんだから関係ないだろ。週刊誌に在籍しているのも、先生の御意思なのかはわかったものではない。内容的には月間の青年誌でも妥当だし、先生は掲載雑誌に拘るようなタイプではなく自分の理想を漫画で表現することに重きおいているタイプだと考えられるので、週刊の少年誌にいるのは他の看板作品の有無や経済効果を考えた”大人の事情”だと思われる。
よって、何もわからないファンでもない外野は黙っていろ、の一言に尽きる。

・絵が雑。下書きみたい。
→下書きみたいじゃなくって下書きなんだよ!!
 おそらくお前が見たのは、蟻編なんだろ?確かにあれはびっくりするよ。でも、他のちゃんとした絵のときもなかったわけじゃないだろ?なんでその何回かだけで判断して鬼の首をとったように指摘するんだ?おまえだって体調悪い時はパフォーマンスが低下するだろ?お前の体調不良の時の仕事ぶりだけをあげつらって無能だと言い続けてやろうか??
そもそもあれは編集部が判断してGoサインを出してんだよ。読者のほうも、たとえ下書きでも先生の話が読めるならそれでいいんだよ。どうせKCも買うし、そっちは修正されるんだからな。

先生の絵について好みがあるのは仕方がないが、画力に関して問題は一切ないことをここに証言する。どうせお前はレベルEを読んでないんだろうな。そもそも先生の魅力は絵だけではなく、表情による繊細な心情描写やコマ割りといった”画面”で把握するものである。お前が見ているのは点と線だけで、ファンが見ているのは面だということを覚えておけ。

・ゴンさん(笑)インフレにがっかり
→確かに公式グッズにおけるいじりや、クソコラ画像は認めよう。
しかしあの部分だけを切り取ってしか見たことのない未読の人間が、馬鹿にするのは恥知らずではないだろうか。
ゴンさんのビジュアルは衝撃的である。見た目からしていかついし、筋骨隆々の身体など強さを前面に押し出しているように見える。
しかし私はあれを単なるネタであるとは思わない。ネタ切れでとち狂った?やっつけ仕事?一体何を見ているのか……あぁ、そういや未読だったんですね。

あれはゴンという13歳の少年が信じていた兄貴分の死を知らされて絶望し、罪悪感に苛まれ、復讐に身を焦がした姿なのである。
お前たちはどうせ主人公サイドの復讐は美しいものであると決めつけているのだろう。それが既に驕りなんだよ。復讐は誰が!どの立場でやろうと!美しいだけで済まされるはずがない。ゴンさんの姿は我々に”主人公(読者)”は常に善であるという思い上がりを気づかせる姿であるとも思っている。

蟻編ははじめ、王にしろピトーにしろ全員心を持たない、怪物のように描かれていた。しかし後半に進むにつれ、コムギを想う王、王を想う護衛軍、イカルゴ、メレオロン、ブロウーダ、コルト&レイナ兄妹……とより人間らしく、人間の善性をもって描かれ始め、善悪がきっちりとわけられるものではないことを感情的に理解させられる。
もはや復讐に燃えたゴンさんが格好良く、美しく描かれて、どこまでも悪であるピトーをやっつけるという構図はここでは相応しくないのだ。そんなお決まりの勧善懲悪爽快バトル漫画が見たいならよそへ行け。冨樫作品は立場を変えた視点による、残酷なほどまでのリアリティーが魅力である。幽白だってそうだろ。仙水は人間に絶望した。いつまで人間であり、主人公であるお前らが”善”だって根拠もなく思い続けてるんだよ。

あれはネタでもインフレでもなんでもない。復讐と絶望と怒りが美しいものであるわけがないし、インフレというにはゴンは対価を払いすぎている。ピトーの瞬殺はだるくなったから早く片付けたのではなく”表現”なのだと思う。あれほど脅威に描かれていたピトーがぼろ雑巾のようになるほどゴンの絶望は深く、さらに瞬殺することで、この力があの時自分にあればカイトは死ななかったのではないかという後悔をさらに濃くするエッセンスなのだ。
私もゴンさんのネタは好きだしコラ画像も好きだが、ここまで考えたうえで確かに表面的にはおもしろおかしいものだと受け入れている。他のハンタファンだって、ネタにはするものの本気で先生の手抜きやはっちゃけだと思っていないだろう。実際あのシーンを読んでみれば笑えるところなどひとつもないとすぐにわかる。
だから未読の、ファンでもない奴に心からおもちゃにされるのは面白くないと思ってしまう。
結論、お前を殺すよここで今。

・メルエムを核で(笑)だるくなりすぎでしょ
→ゴンさんのところでも触れたが、勧善懲悪爽快バトル漫画が見たいならよそへ行け。
私は蟻編を善悪の価値観を揺らがせるための話だと考えている。だからこそハンター協会の、いわゆる”人間サイドの善”であるネテロ会長があれほど醜悪な姿で死んだのだと思っている。
もちろん、会長がしたことは人間のために必要な行動だ。しかしタイマンを受け入れてくれたメルエムに対する武人の行動としてはどうだろうか。それも戦って負けたあとでの自爆だ。人類を守るという事情があるとはいえ、卑怯であると言われれば否定できないし、バトル漫画としてはアリなのか?と物議を醸す終幕であったといえる。

しかしこれをまた単に、やっつけ仕事、インフレ、ちゃぶ台返しと称するのは浅慮ではないだろうか。
蟻編では人間の悪が浮き彫りになる。しかしそこで我々に絶望を与えるだけでは終わらず、人間は善性も持った生き物であるということを人間と融合したキメラアントたちが教えてくれる。
今まで念能力バトルやってんだぜ。会長は最強だったんだぜ。それを踏まえた上で、すべてを覆す科学の力。あの世界ですら誰かを殺すのに念能力など必要ないということだ。いっそ見事なまでの”ハンター世界”に対する皮肉だろう。

しかし、爽快バトルではない後味の悪い結末にがっかりさせるだけでないのが先生のすごいところだ。
現実には念能力はないが、薔薇に匹敵する核兵器というものがある。現実にはメルエムはいないが、我々は国の事情や経済、宗教あらゆる理由でいつだってメルエムの立場にもネテロの立場にもなりえる。我々は漫画を読んでいたのに、突然現実の恐怖を突き付けられるのだ。そして”自らの考える正義”のためならば人間は他者を蹂躙できる蟻となんら変わらない生き物である、それどころか進化の分だけより残酷な生き物であるということを知る。

「呪われてるのはお願いをするほうだ」
続く選挙編でも同様のテーマが扱われている。悪いのはナニカや兵器ではなく、それを使用する人間次第ということだ。しかし人間は”自分から見た正義”で行動するし正義のもとに行動している人間は、自分が正しいと思っているからこそどこまでも冷酷に攻撃的になれる。我らがイルミさんも家のために正しいと思っているからこそ、あそこまで強引な行動を迷いなくとれるのだろう。はい、好き。

さて、話はそれたがこうした”正義”と”正義の使い方”を考えたうえで、それでももし薔薇による終幕が茶番だというのなら仕方がない。それは価値観の相違だし、これを押し付ければ私だって”正義の使い方”を間違えていることになる。

けれどもひとつ言いたいのは、安易な気持ちで他人の好きなものをdisるのはやめておいたほうがいいということだ。
もっとも、品性は金では買えないらしいので、一部の人間には一生かかっても理解できない話かもしれないが。

2018/06/03 14:34
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