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あと八十七本...「ホテル」




おかしい。絶対におかしい。私の目はおかしくなってしまった。




結局あの後は、いまいち今回の出来事を理解できていない真田を丸井に押し付けて帰ってきてしまった。もちろん2人とも私の事を引き留めようとしていたが、部活に盛大に遅刻している事を教えてやれば、それ以上かける言葉がないようだった。まぁ、丸井が適当に説明しているだろうと思う。そして丸井からの着信とメールがウザい。総無視だ。そんな感じで全て終わった事に安心しつつも若干心配になりながら自宅に帰り、自分の部屋で朝を迎えたのだが何もなかった。あの女の子の言った通り真田に憑りつくことを止め、私への嫉妬心もとりあえず収まったようだ。これでいつもの日常に戻れる、もうテニス部には関わらない、丸井を着拒しよう、と決意新たに学校に向かう、向かっていた…。



あのビジネスホテルの窓から手を振っているおじさんは何だ? 



ビジネスホテル自体はかなりの階数がありとても大きい。だがそのおじさんは2階の窓からこちらに向かって笑顔で手を振っているのでとてもよく見える。とても目立つ。もちろん知らない人だ。100歩譲って知らないおじさんが目の前を通った通行人に手を振って寂しさを紛らわせているとする。そこまではいい。まだいい。だけどその首に回っているロープは何だ…? なんでそんなに顔面蒼白で、見えている穴という穴からいろんな物を垂れ流していてそんな笑顔でいられる…? あぁ、気持ち悪い……吐く。私は急いで駅構内のトイレに駆け込んだ。



おかしい。何だこれ。おかしい。いつもの日常に戻ると思っていたのに。おかしい。今まで何も見えていなかったのに。おかしい。最近は確かに何故か見えていたけど学校にいる時だけだし、部屋には学校の幽霊がついて来て見えただけだし。おかしい。おかしい。おかしい。おかしい。







あれ? いつもの日常ってなんだっけ?







あぁ、まだ気持ち悪い………。








頭の中でちらつく先ほどの光景。なんで見えた? わからない。考える事を放棄したい。いや、いっそ放棄してしまおう。幻覚だ。最近変な事ばかり起こっていたからとうとう幻覚まで見てしまったんだ。よし、忘れよう。あれは幻覚なんだ。考えるだけ無駄だ。よし違う事を考えよう。そうだ先ほど決意した丸井の着拒設定を今やろう。まさか着拒されるとは思わないだろう。私に意味不明なメールを送り続けた罰だ。







そうして私は考える事を放棄して、丸井を着拒してやった。











キャラがいない
(2013/10/20)



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