「マスター、どうして私にはキャンディくれないの」
私が悪い子だから?
そう言ってふてくされる私の頭を、マスターは優しく撫でてくれた。
「何を言ってる。お前はキャンディという歳でもないだろう」
私は知っていた。ビスケットルームの子どもたちにあのキャンディを配るとき、決まってマスターは子どもたちに向かっていい子だ、と言っていることを。
「だって」
その言葉を聞く度、胸のあたりがちくりと痛んだ。私だっていい子にしてるのにと思った。マスターの言うことは何だって素直に聞いたし、何より誰よりもマスターを慕っているという自負が私にはあった。
それでもマスターは、一度だって"いいこ"だけがもらえるキャンディを私にくれようとはしなかった。
「マスター、私のこと嫌い?」
私のそんな心境を知ってか知らずかマスターがふっと笑った。
「嫌いならとっくに実験に使ってる」
その言葉が本気なのか、それともマスターなりの冗談なのかはよくわからなかった。
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