今日は特別な日だった。
だから早起きをして、いつもより少し身綺麗にして、施設内のみんなにも今日は何の仕事もしなくて良いと伝えた。
その代わり、大広間で宴会の準備をしておくようにと指示を出した。
***自身も普段は滅多にしないが腕を振るってご馳走を作ったり、ケーキを焼いたり、それをビスケットルームに持って行ったりもした。
「ねえ、シーザー」
それなのに、当の主役はいつまで待っても起き出して来なかった。
仕方ないので***が寝室を覗くと、もう昼前だというのに寝台の上でシーザーはいびきをかいていて、まだ夢の中にいるようだった。
「起きてよシーザー、もうお昼になっちゃうよ」
***がシーザーの両頬をつねると、さすがに痛みを感じたのかその目が開いた。
「おお、***」
「おおじゃないでしょ。何時だと思ってるの」
「何を朝から怒ってる」
「別に怒ってはないけど、とにかく早く着替えてよ。みんな待ってるんだから」
まだ眠そうなシーザーを寝台から引きずり下ろしてさっさと寝間着を脱がせた。
それからいつもの服といつものローブを着せてやると、ようやく目が覚めてきたようだった。
「ところで何が待ってるって?」
「いろんなことよ」
部屋に据え付けられた水場で顔を洗ったシーザーがソファに腰掛けると、***はその後ろに回った。
それから寝癖のついた長い髪にブラシをかけ綺麗にしてやった。
「さっぱりわからねえな」
「いいの別に。行けばわかるから」
立ち上がったシーザーの衣服の皺を払いてやる。やっと、マスターと呼ばれみんなに慕われるいつもの姿になった。
「じゃあ行こ」
「ああ、ちょっと待て」
「何?何か忘れ物?」
「今日がどんな日だったか思い出したぞ」
「それで?」
腕を、掴まれた。
「ちょっとシーザー」
それからソファに押し倒され、組み敷かれる格好になった。
「…もう朝からこんなこと出来るような若さじゃないでしょう」
「見くびるなよ小娘が」
馬乗りになったシーザーがそう言って笑った。
「俺に何か言うことがあるだろう、***」
「…お誕生日おめでとう」
その言葉の後に、満足げな顔をしたシーザーの唇が頬に落ちてきた。
みんなには悪いが、大広間に行くのにもう少し時間が掛かりそうだった。
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