「ねえシーザー、今日は何か爆発する予定はないの」
赤らんだ顔をして研究室に入って来た***がそう言った。
「あるか、そんな予定」
良く見るとその手にはグラスを持っていて、中では赤い液体が揺れている。
***にとっては酒を飲むのに朝も夜も関係ないらしかった。
「なんだつまらない」
「つまらないとはなんだ」
「わたし退屈なの」
だってこの島何にもないんだもの、と言いながら、***はグラスの中身を飲み干した。
この女はあまり酒に強くなかった。
そのくせ、やたら飲みたがる。そうして質の悪い酔い方をするので、それがシーザーにとって厄介だった。
今も、そうだ。
こちらの忙しさなど***には無関係とでも言うように絡んで来ている。
「ならドレスローザに帰ればいい。船は出してやるぞ」
「いやに決まってるでしょ。帰ったら四六時中ジョーカーの相手をしなくちゃならないんだから。それにあの国、変に賑やかでうるさいし」
何もなければ退屈で、何もかもあればうるさいと言う。
とんだ我が儘者をジョーカーは寄越したものだとシーザーは思った。
「ねえシーザー」
「今度は何だ」
持っていたグラスをその辺の机に置いた***が近付いて来て、それからその顔を出来る限りシーザーに寄せて口を開いた。
「しましょうよ」
「…何をするって?」
「やだもう、私の口から言わせるつもりなの?」
わざとらしくそう言ってみせた***に、シーザーは溜め息を吐いて返した。
「俺は忙しいんだ。お前と遊んでる暇はない」
「つれないのね、マスター。みんなには優しいのに」
冗談めかしてそう言った***が、今度はふう、と息を吐いた。
「私なんだか眠くなって来ちゃった。シーザーも相手してくれないしもう寝ようかしら」
「そうしろ」
「襲いに来てもいいのよ」
「誰が行くか」
「待ってるから。貴方が私の布団に潜り込んで来てくれるの」
さっさと行け、という意味でシーザーは手を払った。
それを***は笑い、じゃあまた後でね、と研究室を出て行った。
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