【放課後の話の少し前】
多村充+高林壱太
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午後一時半の屋上は風もあり、日陰で涼むにはちょうどいい日だった。
お気に入りのイヤホンでお気に入りの音楽を聞いているのは、絶賛授業サボリ中の多村充だ。体育なんかやってらんないと昼休みからずっと居るのだ。そして今は自販機に向かい姿が見えないがもう一人、多村と仲良くサボっている奴がいる。
「何だかんだ言っても、夏は暑いよねー」
間抜けな声とともに現れたのは、高林壱太だった。両手には紙パックのジュースを持っている。
「おせーよ!バナナオレ買うのにどんだけ時間かかってるんだよ!」
「イチゴオレにするかミルクココアにするか迷ったの!許してー」
冷えたバナナオレを渡す。紙パックに水滴がついており、夏のこの時期にはありがたいものだ。
「最近暇だよねー」
「んだな」
「女の子とも遊んでないしー」
「んだな」
他愛もない会話。お互いに紙パックのジュースを飲みながら、夏の空という表現がぴったり合う空を眺める。青い空に白い雲はよく映える。
「隣のクラスの仲野祐輝って知ってる?」
「は?知ってるけど」
「なんかねー面白い話を女子から聞いたんだ」
にししっと飲み終わったミルクココアのパックをそこら辺に置く。その顔はイタズラを思いつた時の、または楽しいものを見つけた時の顔だった。
「ねぇ充。楽しくてキモチいーことすっぺ」
その顔を見て充は心の中で勝人に向けて合掌をした。